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小鳥はベビーシッター

作者: 真城

平日の16:00を過ぎた。今日は帰宅が遅い。コチラは一日中待ちぼうけているのに。つい、ふくれっつらになる。


朝は食パンをトーストして、紅茶と流し込む。私も少し、かじった。身支度して、出かける姿を見送る。私をハウスキーパーにしてくれたら、ホコリ取りくらいしておくのに。ちんまり「待っててね」って言われるのも、ねぇ?


私専用のナッツのからを割りながら考える。もうすぐ小学生の女の子が帰って来るから、何して遊ぼうかしら?お散歩、工作、色々楽しい。今日は使いさしの封筒に穴をあけて使ってみたらいいかも。


「ただいまー。6時間だったの。」鍵っ子の小4が帰って来た。手には通学路で摘んできた、私の大好きなハコベ。赤いランドセルを放り出して、私のカゴに手を伸ばして、ハコベを入れるために、扉を開ける。私は彼女の手に乗り、葉っぱをお味見「うん、美味しい。」。すぐにトレーナーの袖を駆け上がり肩に登る。


ああ、風を浴びても切り揃えた子供の髪はキレイ。ツヤツヤね。

私みたいな手入れのいいシロオカメインコにもまけないわ。


今日のオヤツはりんご。まな板出して、包丁出して、ザクッと切って、芯だけ取って、あら?私にもくれるのよね?上手にできた。私しかいないから、顔を覗き込んでほめてあげなきゃ。


「ピヨ。」


身を乗り出して、顔を覗く私の気持ちはこの子に届いたり、届かなかったり。

「あーっ、ツメが痛いよー。お父さんにとまり木を新しくしてもらおうか?」つま先の加減でツメが刺さったわね。ごめんなさい。爪切りは好きじゃないの、勘弁してください。


去年、この子の面倒を見ていたおばあちゃんが入院してから、共働きの両親からこの子を預かっているの。夕方、暗くならないと、この子のパパもママも帰ってこない。両親も心配、この子だって心細い時間帯よ。おばあちゃんの退院まで私がついているわ。


ペタンコに倒した私の冠羽を見ると、「りんごだよね?」私の前に皮付きリンゴをそっと差し出した。

サクッとひと口いただいて、クチバシでモグモグしていると、この子も「おいしいよね?」ニッコリとりんごを頬張る。一人っ子だもの。私も一緒にオヤツを楽しまなきゃ!


今度はまな板と包丁を片付けて、ランドセルから本を取り出す。あら、どんな本を読んでいるの?この子はおとなしくて、読書と自然が大好き。やっぱり「ドリトル先生」シリーズね。憧れはフクロウの「トート」かな?パパに「アフリカ行き」を読んでもらってから、動物好きに拍車がかかったって、ママが私に教えてくれた。


タンスを背に和室に体育座りして、この子は物語の世界に入り込む。私は肩の上で羽繕いしてお付き合い。やれやれ、パパもママも早く帰ってきてあげてー。私は羽根をフワリと膨らませて、この子の頬にピタリと身体を寄せて、お昼寝の体制をとった。





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― 新着の感想 ―
[一言] 小鳥ちゃんがかわいすぎます……! おばあちゃんの代わりにお子さんの面倒は私が見るのよ!という気概、実際におやつを一緒に楽しんだり、褒めてあげたりと、立派にシッターしてますね! 挟み込まれる「…
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