098
楓は、屋上に行き扉を開けると、緋依絽はいた。
「緋依絽ちゃん」
こんな姿を見せたくなかったから、追い出そうと思ったけど楓さんだったから、何も言えず黙っていると近づいてくるのが分かった。
「・・・」
緋依絽が、座ってる横に並んで座った。
「楓さん、私・・・」
しばらく無言だったが、緋依絽は話し始めた。
「うん」
「伊織ちゃんのこと、全然分かってなかったかも。どうしよ」
そういって、楓の方を向くと止まっていた涙がまたあふれてこぼれそうになっていた。
「彼らが何を話してたかは分からないけど。彼女は緋依絽ちゃんのこと姉のように慕ってたじゃない。」
「・・・」
「自分を責めてばかりじゃ駄目よ。伊織ちゃんが自分の意思でそうしたんだったら。それは、みんなのことを想ってだと思うの。」
「みんなの?」
「でも、それは彼女にとってまだ早すぎた。一人で抱えきるには。」
「うん」
「じゃぁ、これからいっぱい彼女を支えてきましょう。まだ、彼女が潰れたわけじゃない。救う道はあるはず。そうでしょ?」
「私にも出来ることある?」
「あるよ。緋依絽ちゃんにしか出来ないことも、沢山」
「ありがと」
「どういたしまして(笑)」
「みんなのところに戻りづらいな(苦笑)」
涙は止まったようだが、自分の姿をさらしてしまったことに恥ずかしさで顔が真っ赤だった。
「大丈夫よ。何か言われたら、私が言ってやるから(笑)」
大分落ち着いたから、戻ることにした。
紘達のところには、無理だと思ったから大樹達の部屋に連れていった。
部屋の扉と叩くと中から返事が返ってきたから、扉を開けた。
「楓さん?」
「あら、私が来ちゃダメかしら?(笑)」
「そんなことあるわけないじゃないっすか(笑)どうぞ」
「ありがと。ほら、入るよ?」
「う、うん」
さっきのこともあって、入りづらかった。
「・・・」
すると、大樹はにやりと・・・それには、緋依絽は気がついていなかった。
「大樹?」
楓は、何か企んでるなぁと思ったら。
「ぎゃあっ」
「なんて声出してるの(苦笑)」
「だって、急に。」
「素直に入ってくれないからだよ(苦笑)」
「お、降ろして」
「だーめ(笑)」
大樹は、ソファまでお姫様だっこして連れてった。
緋依絽は顔が真っ赤だった。
「どうぞ。」
良騎が、コーヒーを出してくれた。
休憩しようとしてたみたい。
「あ、ありがと」
「どういたしまして。」
「楓さんも」
「あら、私にも?ありがと」
「俺だって、これぐらいはしますよ(笑)」
4人で、談笑していた。
しばらくすると
「さっきは、ごめんなさい。」
緋依絽は素直に謝ったのだが・・・
「なんのこと?」
「えっ?」
「ん?」
「ううん。ありがと」
最後は声が小さかった(苦笑)
でも、二人には十分伝わった。
良騎に頭を撫でられた。
「もう~子供じゃないからっ」
「はははっ。緋依絽ちゃんはそれぐらい元気がなきゃ。やっと笑った。」




