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作者: タマネギ

夏が始まった。

蝉の音は今朝も

聞こえている。

微睡みの最中。


遠い国、遠い島。

白い浜、確かに、

行ったことのある

時は幻になり。


側にいたなら、

その髪に触れ、

その唇に沈み、

どこまでも深い。


背負ってゆく

重き十字架は、

首筋に光り、

見覚えがあり。


愛しい木の実は

朽ちることなく、

そこに息づいて、

ふくよかになり。


房の膨らみは

この世の綺麗を

無限に集めている。

命の夢を見せて。


笑っているようで、

泣いているようで、

拙く息が溢れる。

窪みは静かな白い浜。


ここから舟を

漕ぎ出せたなら、

遠くまで波間を

突き進んでゆけて。


荒れた海になっても、

少しも恐ろしくなく。

白い浜からの海は

ほとんどが優しい海。


穏やかで滑らかで、

一生懸命進もうと

するのなら

二人で幸せの島へ。


感じられる島へ、

辿り着ける海に

なっているという。

だから、できるなら。


もっとその髪に

触れていたい。

もっとその唇に

沈んでいたいから。


もう少し、もう少し、

もう少し、側に。

背負いきれない

悲しみは下ろして。


足元に目をやれば、

流れ着いた木の実。

下ろせただろうか。

手に取れば一人。


微睡みの水面に、

顔を出したようで、

誰もいない部屋は、

誰もいない島。

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