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ソシテ魔法ワニド死ヌ  作者: 悟飯 粒
第一の市街地
9/11

アキュリアス

〜登場人物〜

岩村(いわむら)数不知(かずしらず):主人公。色々あって人類の敵と見做されている普通の人間。しかし本人にその気は一切ない。今はアルの力を借りて人類滅亡の危機に瀕している世界を旅行中。合理的に物事を判断することができる。それが僕のいいところだ。

・バーボッシュ=アーノルド:始まりの超越者。アルと呼ばれている。見た目は10才ぐらいの男の子。


〜作中用語〜

超越者(グランドセージ):科学の臨界点に到達した人間がそう呼ばれる。彼らの登場により机上の空論で終わっていた全てが実現可能になった。

・exmagic:超越者が操る魔法のような科学。見えない力で物を握りつぶしたり、空を飛んだりする。

・超科学:超越者が作り出した機械。人類からすればなぜ作動しているのかよく分からない代物。

 僕は平坦な道を魔法の力で坂道に変え、さらに摩擦係数を減らすことで勢いよく浜辺に向かって滑り落ちていく。

 戦いなんてろくなことにならないというのに、まったくなんで戦うんだ。こんなに良い場所が台無しじゃないか。機械によって空を飛び回る兵士達が放つビームが建物の壁を焼き溶かし、爆弾が周囲1キロメートルを吹き飛ばす。結構でたらめな威力の兵器を買ったようだ。あーーなんで最初の旅行でこんなことになるかな。人類みんな諦めてさっさと滅亡しようよ。


チィン!!


 僕に向かってきたレーザービームを、坂道を変形させ減速することなく空を飛んでかわした。


 「あそこに魔法を使う奴がいるぞ!報告にあがっていたやつだ!」


 あーーあっあーー。僕に注目するのはやめてくれぇ!

 僕に集中砲火されるレーザービームの全てを、坂道を変形させることでノンストップでかわし続ける。しかし爆弾が5個!


ドォオンンン!!!


 僕目掛けて飛んできたから、僕は坂道を変形させて空に飛び出し右手の袖を触り飛行する!


 「敵意はないんですぅ!許してくださーい!」


 僕は空を飛びながらひたすらに逃げる!よくないなぁ、こういうのは本当によくないなぁ。×印の道具を使おうか?


 「こんな下らない局面で絶対に使うな。」


 アルからテレパシーが飛んでくる。

 …………どうしよう。本格的に困ったな。


 「………そうだ」


 僕は右手を固く握り締めて開いた。そしてそれを思いっきり敵に向かって投げ飛ばす!


 「なんだ?何もなっ!!」


ドォオオンン!!!


 硬質化した空気が空を飛ぶ機械にぶつかり機械から火が噴いた!対象の性質を操るっていうのはこういうことが出来るのか。………なるほど?結構面白そうだぞこれ。更に僕は空気中の水蒸気を液体に変質させると、僕を追っかけ回している敵に放ち視界を奪った!そのまま近づき空を飛ぶ機械を破壊し、敵が持っていたレーザー兵器をくすねとる!

 なるほどなるほど…………確かにこれは、想像性によって色々なことが出来るな。正直水や炎を操るのなんかよりもよっぽど楽しいぞ。僕は液体にゴムの性質を与えると、思いっきり引き絞り、浜辺に向かって勢い良く飛び出した!


ズザァアアア!!!


 しかし僕は浜辺に着地と同時に衝撃を殺しきれなくて顔面から崩れ落ちた!


 「……………痛くない」


 僕はひりつく顔を擦って過剰に振る舞う。


 「……………ふむ、ならばいい」


 そして女性も僕の発言を受けて市街地の方に視線を戻した。


 「君が魔法を使えるのは分かっていたが、私を助けにきてくれるとは驚きだ。どういう風の吹き回しだ?」

 「ここを安全に生き残る為には超越者の協力が必要だと判断したんです」

 「ふむ、なるほど…………それで、どの超越者から道具を授かったんだ?」

 「アル、アーノルドです。バーボッシュ=アーノルド」

 「…………それもちょっと驚きだな。君からは全然敵意を感じなかったから、てっきり人類側だと思っていたのだが」

 「僕からすればどうでもいいんですよ、人類がどうなろうと。僕さえ生き残ればそれで良いんです」

 「変なやつだ」

 「同じようなことをアルも言ってました。そして気に入られました」


 僕は浜辺を舐めるように見る。………昨日の男達だと思われる死体があった。正直、原型を留めないレベルでひねり殺されているから断定ができない。


 「ああ、なんか変な魔法を使ってきたんだ。私が作り出したバリアーを破壊したからちょっと驚いたが、威力が全然なくてな。普通に捻り殺した」

 「…………昨日の夜、彼らと武器商人風の男があの杖を取引しているのを見ました。彼曰く[超越者を倒せる兵器だ]と」

 「…………ふっかけられて戦争を始めるきっかけ作りに利用されたってわけか、この馬鹿どもは」


 あの武器商人からすればこの戦争の勝ち負けなどどうでも良かったのだろう。ただ戦争が始まり金さえ入ればそれで良かったってやつだ。


 「話は理解した。さっさと戦いを終わらせよう」


 そういうと女性は拳を握り締めた。次の瞬間、この市街地に押し寄せていた敵兵士達はまるで握り潰されたかのようにひしゃげ、50センチメートルぐらいの球体となって絶命した。

 …………やっぱり超越者に戦いを挑むなんて馬鹿げてるんだよなぁ。もっと賢く生きようよ。こうしてこの市街地での戦いは呆気なく終わった。



〜翌日〜


 僕は絵を完成させるためにいち早く海岸に来ていた。ビームや爆発のせいで少々形は変わっているが、なに、だからといって僕が描きたいものに変わりはない。


 「…………相変わらず線が希薄だな。もっとハッキリ描いたらどうだ」

 「印象派なんです。それが僕の感性であり性格だ」

 「ロボットみたいな奴が何を言う」


 僕は筆を止め、朝日を眺めた。


 「…………そういえばなんで僕を殺さなかったんですか?アルの仲間って訳じゃないですけど、一応匿われている身なわけでして」

 「私は人類側でもなければ滅ぼす側でもないよ。ただこの状況において人が何をしていくのかを眺めていたいだけの暇人だ」

 「それでも僕自身が何か危害を加えるかもしれないじゃないですか。一応危険思想側に身を置いているわけですから」

 「君は意味もなく誰かを傷つけるようなことはしないだろう?雰囲気を見て思った。君はとても自己中で、のんびりするのが好きな人間なんだって」

 「それは否定しません。」


 こんなご時世に旅行して絵を描いているような人間だ、否定できる要素が一切ない。


 「君のように今のこの時代に世界を渡り歩いて色々なものを観察できる人間は貴重だ。君のその感性で色々な国を、人を、景観を、状況を眺めるのを応援しよう」

 「…………変な人ですね」

 「ネジがぶっ飛んでなければ超越者になれはしない」


 僕は筆を動かし始めた。水平線が溶けていく。空と海に、その微妙な揺らぎの間に。


 「…………そうだ、なんていうんですか貴方の名前」

 「私の名前か?…………なんだと思う?」

 「わかるわけがないでしょう。人の名前なんて無限にあるんですから」

 「いいから、君が私を見てどんな名前だと思ったか言ってみてくれ」

 「えーー……………アキュリアス」

 「ふむ、ならばそうしよう。私の名前はアキュリアスだ」

 「え?いや…………え?」

 「その方が覚えやすいだろう。名前なんて所詮記号でしかない。君が私をそうだと思ったのなら、そう呼んだ方が分かりやすい」

 「そういうもんですかね」

 「そういうもんだ、私からすれば」


 こうして僕はアキュリアスさんと喋りながら絵を描き続けた。この街の名前も調べていて知っているけれど、なんというかこの街の印象がこの人ばかりになってしまったから、アキュリアスと名付けよう。僕の中ではアキュリアス。そういうことにしよう。


 僕は絵を描き終えると次の場所へ向かった。



〜一方その頃〜


 「ああ、超越者のバリアを破壊することはできたが、身体にダメージを与えることができなかった。…………そうだな、改良が必要だ。私にどうして欲しい?」


 武器商人は通話をしながら空を飛んでいた。


 「…………人手が欲しいって?分かった、テキトウな町から攫っておこう。…………それと超越者の道具?それはさすがに厳しいんじゃあないか?魔法と対峙するってのはかなりの危険が……………まぁ、そんな金額を出されたらやるがね」


 武器商人は通話を切ると、近くの町がどこにあるか探し始めた。


 「ひとまず人攫いからしますか。道具に関しては………私の姿を見た奴がいるな、そいつを殺すついでに奪うか」


 懐から銃を取り出し、彼は見つけ出した町に降りたち一発、空に向かって撃った。その弾丸は赤色の軌跡を更に描くと途中で爆発。クラスター爆弾のように広範囲に爆発をもたらした!


 「さぁ、労働力にならない奴は皆殺しだ!」


 そして10分後、一つの町が滅んだ。

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