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死神の物語  作者: 笠井
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第九話 死神の日常

 俺は死霊の軍団を蹴散らしたあと、生存者である黒夢の女の子の方に向かった。


「お〜い。大丈夫か?」

 俺は気楽に話し掛けた。


「ハイ、おかげで助かりました。」


 女の子はお辞儀をした。


(うん、礼儀正しい。)


 俺はとりあえず状況を確認した。


「えっと、まあ、言いにくいかも知れないけど、生存者はあんただけ?」


 俺の質問にたいして、その答えは、


「ハイ、仲間はあの軍団にやられてしまい、生き残りは私だけです。」


 重苦しい感じで答えた。


「そうか。まあ、あんな軍団できたらねぇ。」


 あれだけの数でやけに連携もとれてたし無理もない話だった。


「でも、まさかあのエッジが助けにきたなんて予想外でした。」


 女の子は嬉しそうに言った。


「え〜と。俺って、そんなに有名?」


 俺の質問に、


「当たり前です!エッジっていえば、半年で色夢になり、誰よりも多くの死霊を倒した天才の一人じゃないですか。」


 女の子は興奮気味に言った。

 そう、確かに俺はあの事件以来、戦い方を学び、半年で色夢になり、二人の天才の片割れになっていた。


「俺は天才じゃないんだけど・・・」


「いえ!あれだけの死霊の攻撃を余裕で躱して、あれだけの死霊を秒殺しといて、天才じゃないなんて言わないでください!」


 目の前の女の子は興奮気味に言った。


「まあ、死霊の攻撃を避けれたのは、偶然の産物を使ってるだけなんだが。」


 そう、俺は天才ではない。実際、今、剣を渡されてこの子と戦ったら多分負けるだろう。


「偶然の産物ってなんですか?」


 女の子は質問した。


「まあ、三ヶ月前に確信したことなんだけど。俺さ、一瞬だけど、攻撃を予知みたいなのが見えるんだ。」


 俺はそう答えた。すると女の子は、


「未来予知が出来るのですか?」


 こう言ったので、


「そこまで凄いものじゃないよ。見えるといっても、あと1秒後の攻撃だけだし。まだ俺はコレを使いこなせないんだ。」


 俺はそう答えた。


「それってどんなふうに見えるのですか?」


 女の子はまた質問した。


「そうだなぁ。風が自分の身体を貫く感じかな?俺はそれを『流れ読み(ながれよみ)』と名付けているけど。」


 コレがあるから俺は生き残ることができた。コレ抜きでこの子と戦ったら、多分負けるだろう。


「そうなんですか。」


 女の子は納得のいかないような顔だった。


「そうそう。だから俺は天才じゃないことがわかった?」


 俺がそう言うと、女の子は必死になって、


「でも、あなたは天才です!だいたいの人はそんな力があればすぐに力に溺れるのに、あなたは溺れてないじゃないですか!自信を持ってください!」


 なんか励まされた。


「あ、ありがとう。」


 とりあえず礼を言った。それからすぐに、


「おい、神崎。なに女の子と楽しく話してんだ?」


 不機嫌そうな声が聞こえた。俺は振り向いて、


「あ、悪い。お前のこと忘れてた。」



 俺より目つきの悪い天才に謝った。


「忘れてた!?さっきまで一緒に任務こなしてたのに!?誰かが襲われたとか言って、後始末押し付けたのに!?」


 天才は不満をぶちまけた。


「悪い、悪い。後で蕎麦奢るからさ、ルカ。」


「また蕎麦!?それお前が食いたいだけだろーが!」


 ルカと呼ばれた天才は、叫んだ。すると女の子は、


「あ、あの〜、エッジさん。この人がもう一人の天才の・・・」


 と、質問してきたので、俺は親切に、


「ああ、アイツが俺と同期の天才で、『鬼人きじん』と呼ばれるルカだよ。」


 その質問に答えた。

アイツが『鬼人』と呼ばれる訳の一つは、格好だった。まず、全身が黒い鎧で包まれている。次に、髪形が前は普通だが、後ろは逆立っているからだ。顔は俺より何倍もいいので『鬼人』という物騒な異名を持っていても、モテる。


「エッジさんも頑張ってください!」


 また励まされた。

「あのさ、『刃』じゃなくて名前で言ってくれない?」


 異名で呼ばれるのは、敵だけでいい。と、俺は思っているからだ。


「え、でもいいんですか?」


「何が?別に名前で読んだら死ぬって呪いはないぞ?」


 俺は不思議になった。


「いえ、なんでもありません。では・・・悠志さん・・・・は言いにくいので先輩と呼んでいいですか?」


 と、女の子は言った。


「別にいいけど・・・(悠志って名前そんなに言いにくいのかな?もしかして言いたくないとか?)」


 なんかネガティブな思考が充満してきたので考えるのをやめた。


「とりあえず、帰るぞ。報告をとっとと済ませたいんでね。」


 と、ルカは言ってきた。


「は、ハイ。」


「わかったよ。」


 とりあえず返事をした。










 「黄泉」社長室


 俺らはとりあえず社長、遠野さんのいる社長室に向かい、報告をした。


「へぇ〜。死霊が軍隊引き連れて黒夢のチームを襲ったと、面白いこともあるもんだ。」


 遠野さんは愉快そうに言った。


「いや、さすがに面白がるのは遠慮したほうがいいんじゃ?」


 被害者である女の子は先に医務室に連れてってよかったと思った。


「まあ確かに、少し悪ふざけが過ぎたかな。」


 遠野さんは反省していた。

「まあ、今日の仕事は死者のガイドだが、やるか?」


 遠野さんはそう聞いてきた。


「やりますけど、ガイドやる人いないんですか?」


 なぜかガイドの仕事をやるのは俺だけらしい。


「まあ、元々これは白夢の仕事だけどな。最近、カウンセリングの仕事が多いんだ。当分の白夢はそっちに行くな。」


 と、遠野さんは言った。


「分かりましたよ。エイレンシアに連絡いれといて下さいよ。」


 俺はため息をついて言った。社長室を出ようとすると、


「ああそうだ。ガイド終わったら伊織のところに行ってくれ。アイツ、お前が最近来ないからストレス溜めまくってるぞ。」


 遠野さんはニヤニヤしながら言ってきた。


「何その死の宣告。『行ってくれ』が、『逝ってくれ』に聞こえてきたよ。」


 俺は行かなったことを後悔した。


「頼むよ。『水月』。」

 『水月』というのは、俺のもう一つの異名だ。由来は俺が多くの武器を使うことからで、だけど他の色夢たちより上手くないので偽物の月という意味で付けられた。だけど『刃』のほうが知名度が高く、『水月』と呼ぶのは、社長である遠野さんと伊織、そして今ここにいない部長だけである。(個人的には、『水月』のほうが好きだ)


「イエッサ。社長。」


 俺はけだるく言った。












 死者のたまり場。


「はい、山田さん。あなたは1番号船に、成田さんは・・・8番号船ですね。ちょっと亀山さんそこ地獄行きですよ!!あなたじゃ足踏み入れた瞬間、黒焦げですよ!!」


 実際、慣れてきたが、ガイドというのは大変である。死んでから間もない死者たちに指示を送る。死者は老若男女と色々いる。特に老人が大変だ。ボケが進行しているのもいるし、耳の遠い人もいる。

「まあ、外人でも話しが通じるのは助かった。ジェイさんは、3番号船へ、マイケルさんもです。え?家のハッピーを連れてっていいか?害が無ければいいですよ。」


 外人と話せることが出来てよかったと俺は本気で思った。だいたいの死者を送ったあと、一息ついて、


「さて、ガイドはこれでおしまい。あとは・・・伊織のとこに行くのか・・・。」


 正直に言うと、行きたくない。下手すれば死ぬ(冗談抜きで)。


「といっても、行かないわけにもいかないしな〜。ん?誰からだ?」


 俺は覚悟を決めた矢先に携帯が鳴った。


「はい、もしもし?」


 とりあえず出てみたら、


『あ、ゆ〜君。ガイド終わった?終わったよね?さっきガイドの終了したって連絡あったし。』


(誰だ!?ガイド終わったって連絡したやつ!なんでコイツに連絡した!)


 俺は連絡したやつを血祭りにする計画を立てながら、返事をした。


「ああ、終わったよ。エイレンシア。どうしたんだ?」


『いや〜最近、私のところに来てくれなかったじゃない。だ、か、ら、コッチから呼びにきたのよ。ねぇ、遊びに来てよ〜。』


 と、言ってきたので、


「悪い。それ明日。今日、伊織のとこに行かなきゃならないんだ。」


 なんとか断った。が、


『え〜〜、伊織のとこ〜?ゆ〜君、浮気はダメなんだよ〜?』


 とんでもないこと言ってきたので、


「いや、伊織とはそんな仲じゃないし、てーか、アンタもそんな仲じゃない。」


 全力でツッコんだ。


『え?違うの?私はてっきり愛し合ってるかと。』


(いつ愛し合った!?)

 俺は疲れたので言わなかった。


「とにかく、今日は無理だから、明日だ。明日は仕事ないから、実験だろーが、デートだろーが付き合ってやる。」


 なんで俺はこんなことを言ってしまったのだろう。


『ホント!!ありがとう!!ゆ〜君!!』


 エイレンシアは嬉しそうに言った。


「ああ、じゃあ切るぞ。」


『うん!じゃあね!!』

 そして電話を切った。


「なんであんなこと言ったんだろう?今まで散々な目にあってきたのに。」


 俺はいまさら後悔した。

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