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死神の物語  作者: 笠井
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第四十七話 死神は倒れ、鬼人は剣を振るう。

 引き金を引いた瞬間、死霊は傾き、


 バタン。


 倒れた。そして、俺は、


「はあ、はあ、はあ、はあ、はあ、はあ、はあ〜〜〜〜」


 バタン。


 俺も倒れた。疲れた。身体が痛い。瞼が重い。なので、


「寝よう「寝んな、ボケ。」ガツン!・・・〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」


 寝ようとしたらルカに蹴られた。しかも傷口に向けて、しかもえぐるように蹴られた。


「寝かせてくれ〜〜〜〜寝かせてくれよ〜〜〜〜」


「傷治さずに寝んじゃねーよ!!死ぬぞ!?」


 俺の懇願はルカにはまるで効かなかった。


「んな魔力ね〜よ〜〜ルカ〜〜〜治して〜〜〜」


 

 俺の魔力の残量はもうゼロだ。なので治癒魔術をかけても、






 しかし、何もおこらなった。






 と、なってしまう。


「ちっ!軟弱なヤツ。つーか、俺は魔術なんか使えねーよ。」


 ルカは舌打ちをし、そっぽ向いてしまった。忘れていたがルカは色夢では珍しく魔術が使えなかった。


「じゃあ、アレだ。やくそうとか、何とかの水とか、せいすいとかなんかないの?」


「んなもんねーよ!!ホラよ!エイレンシアからもらった薬だ!!飲んだら傷は治るが副作用でひどい頭痛がくるやつだ。」


 と言って、俺はルカに渡された。


「うわっ、こんなのしかねえの?お前、もうちょっと良いモノ入れとけよ。」


 俺はルカを非難すると、


「なにも持ってないテメーが言うな。」


 と、返され、


「さて、ルカ。この後のことだが・・・」


「ケッ!!都合が悪いとすぐ話題を変えやがる。」


「まあ、そう言うな。そして、大変な事態だ。助けてくれ。」


「動けねえんだろ?テメー脆いからな。」


「うん、動けない。だからヘルプミー」


「なにが悲しくて野郎を背負わなきゃいけねんだよ。」


「あ〜〜、そんなこと言うな〜〜〜、頼むから〜〜、蕎麦おごるから〜〜」


「だからそれ、お前が食いたいだけだろ!?・・・・あ〜〜〜〜〜〜!!つーか、あの死霊どうなった!『イレイザー』で死ななかったやつが弾丸一発で死ぬはずがないだろ!?」


 ルカは死霊のほうに目を向ける。すると、






 ポタッ、ポタッ、ポタッ、ポタッ、パタタタ。






 水滴が落ちる音がする。






 ズルッ、ズルッ、ズルッ、ズルッ、ズルッ、






 なにかを引きずる音がする。






「ヒィ・・・・ヒィ・・・・ヒ・・・・ヒャ・・・」






 荒い息遣いと狂った笑い声が聞こえる。


「チッ、やっぱり生きてやがった。」


 そう言って、ルカは双剣を取り出し、構えだす。しかし、


「いい、ルカ。あいつはもう死ぬ。」


 俺はルカを止める。


「はあ!?何言ってんだテメー!?今にもコッチに来てるぞ!!」


「そ、そうじゃ!!明らかにやる気満々じゃ!!」


 ルカや大地の精霊は俺の言動に意味が分からず叫ぶ。


「ク・・・ヒヒ・・・・ヒヒヒヒヒャハハハハハハハハハアァ!!!!」


 ダン!!


 そうしてる間に死霊は走りだし、刃を振り下ろす。





 ドパアァ!!






「な!?」


「は?」


「・・・・・」


 ルカや大地の精霊は驚き、俺は黙って見ていた。


「クヒャ。」


 パシャ!


 死霊の身体から血が溢れてくる。


「オイ、あいつに何したんだ?」


 と、ルカは俺に聞いてきた。


「言ったろ?あれで終わりだって、残り少ない魔力を振り絞って撃った弾にちょっとした細工をしたんだ。」


 あの弾は体内に入ったあと、特殊な薬品を流して体内から壊す細工をしている。ついでに言うと、この弾はエイレンシアと坂塚さんが発案したものだ。さらに言うとこの弾はまだ試作段階で、人型の死霊にしか効かない。


「つーかよー、お前、薬品には詳しくねえだろーが。何で弾の薬品まで創れんだよ?」


 ルカは不機嫌そうな顔で俺に言った。なので俺は、


「ああ、それね。二丁拳銃の特性は『絶対命中』のほかに、『弾丸変更』があってだな。実物さえ見れれば勝手に出来上がるんだよ。」 と、言っておいた。イメージさえあれば大体の弾は創れる。まあ、バズーカみたいな馬鹿でかい弾は無理だけど。


「グッ・・・ヒャ・・・ガハッ!!ゲハッ!!」


 ルカ達に説明している最中も死霊は血を垂れ流し、吐きだし、少しずつ死に向かっていく。


「こ、これで終わりだといいんじゃが・・・」


 大地の精霊はそう言って震え出す。


「大丈夫だって。もしダメならルカが死にかけの死霊を楽にさせるから。」


「テメー、結局他力本願かよ。」


 そんなことを言っているうちに、死霊は死に向かっている。と、同時に、


 ひた、ひた、ひた、


「ク・・・グバアッ!ゲヒャ!キヒヒ・・ヒヒ。」


 一歩、また一歩とこちらに近づいてくる。


「オイ、何かコッチに向かってるぞ。」


 ルカは双剣を構えながら言った。


「本当に大丈夫なんじゃろうな!?」


 大地の精霊は叫んだ。


「大丈夫だって。もし、ここにたどり着いたとしても・・・」


 俺は理由を説明している途中、


「ク・・・クク・・・クヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャアア!!!」


 ダン!


 地を踏み付け、俺目掛けて駆け寄り、


 ブン!


 ボロボロの刃を振るう。しかし、






 パキン






 俺を切り裂く前に刃は折れ、






 ドパッ






 血は溢れ出て、






 ボトッ






 刃を持っていた腕が落ち、






「・・・・・・ヒ・・・・・・・・・ヒッ・・・・・」






 血まみれの顔で笑みをつくり、






 パン!






 そのまま消えて無くなった。










 死霊が消えてから静寂が何分か続き、


「ふぃ〜〜〜、な、何とか危機は去ったようじゃの。」


 大地の精霊はため息をつく。その様子は寿命を5分の1くらい削ったかのような酷く疲れた顔だった。


「まあ、一安心とは言えないが、まだ死霊がくる気配はないな。」


 ルカもため息をつく。


「はあ〜〜、これから歩いて帰らないといけないのか〜〜。だるいな〜〜」


 俺もルカからもらったエイレンシアの薬を飲み込み、ため息をつく。


「言っとくが、おぶらないからな。テメーの足で歩け。」


 ルカは俺を冷たく突き放す。


「おいおい、怪我人にそれはないだろ?」


「怪我なら治ったろ。」


「あのな、今から30秒前に薬を飲んだのに、治るわけないだろ。」


「こんだけ元気があるんだ。平気だろ?」


「確かに、短い付き合いじゃが・・・何故かこやつは四肢を切られても平気だと思ってしまう。」


「いや、お前ら。俺は普通の一般人なの!化け物じゃないの!頼むから運んでくれよ。俺、マジ死にかけだからさあ〜」


 結局、俺の懇願はスルーされてしまった。ついでにだんだん頭痛がしてきて辛い。





 そんなとき、






 オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォ!!!!!!


「げっ。」


「あん?」


「ヒィ!!」


 死霊に囲まれてしまった。しかもかなりの数。


「オラオラ!!テメーらかぁ!!俺の寝床をぶっこわした野郎は!!」


「オイオイオイ!!こいつら死神だぜ!!しかも美味そうな肉まんもいるぜー!!」


「ニクニクニクニクニクニクニクニクニクニクニクニクニクニクニクニクニクニクニクニクニクニクニクニクニクニクニクニクニクニクニクニク喰う喰う喰う喰う喰う喰う喰う喰う喰う喰うううぅぅぅ!!!!」


 皆様、めちゃくちゃ殺る気まんまんだった。


「下からきたな。」


「確か、情報ではリッチクラスのやつらがうじゃうじゃ・・・」


「もう終わりじゃ、ワシの人生終わった・・・最期が喰われて死ぬなんて・・・婆さん・・・先立つ不幸を許してくれ・・・」


 大地の精霊はガタガタ震えて去り際の言葉を呟いている。


「ルカ、俺、動けないから頼んだ。」


 俺は身体が動かないのでルカに頼むことにした。


「わーったよ。見た感じ、あの死霊より強いやつはいなさそうだし・・・」






 ルカは双剣を取り出し、






「10分以内には片が付く。」






 そのまま死霊の群れに突っ込んだ。










 ルカが真っすぐ死霊の群れに走っていった。それを死霊たちは舐められていると思ったらしく、


「一人でなにイキがってやがる!!」


「死にやがれ!!」


 ズドン!


 一際大きな死霊がルカに向かって拳を振り下ろす。殴ったあたりの地面がひび割れをする。


「ぐっひゃっひゃっ!!あっけないな〜〜!!もうお・・・」


 デカイ死霊が高笑いをしはじめ、拳を上げようとするが、


 ズル。


「おせぇんだよ。デカブツ。」


 プシャ!


 デカイ死霊の大木くらいある太い腕は輪切りにされた。


「♪☆×.%/★!!!!」


 デカイ死霊は声にもならない悲鳴をあげて悶えだす。ルカは、そのデカイ死霊の、


「キメーんだよ。寝てろ!!」


 ザクン!


 顔面に双剣を突き刺す。


「さて、デカブツどもは後回し。ちっこいやつから・・・」


 ルカは突き刺さった双剣を抜き取り、


「片付けるか・・・ねえ!!」


 その瞬間、ルカは俺の視界から消え、


 ザン!ザクン!ザン!ザン!ザン!ザン!ザン!ザン!ザクン!ジャク!ガシュ!グシャ!ザン!ザン!ザン!ザクン!スパ!ドス!パシュ!ザクン!ジャク!ガシュ!グシャ!グシャ!グシャ!グシャ!グシャ!グシャ!ザクン!ジャク!ジャク!ザン!ザクン!ザン!ザン!ザン!ザン!ザン!ザン!ザン!ザン!ザン!ザン!ザン!


 小柄な死霊達は1人、また1人と細切れにされる。


「あ、あいつ!あんなに強かったのか!?」


 大地の精霊はルカの姿を見て叫ぶ。まあ、リッチクラスの死霊をばったばった切り倒せば驚くだろう。


「まあ、あいつは天才だからな〜」


 俺はルカを見ながら言った。


「天才?いや、戦い方を見るかぎりそんな凄いことをしているわけには見えぬのじゃが・・・」


 大地の精霊はルカを凝視する。ルカの戦い方は獣が狩りをするように荒々しかった。切られた死霊も切ったというより食いちぎった痕みたいだし。


「ハハハ・・・まあ、技術面は見逃してくれ。アレ、武術習ってないから。」


 ルカの戦いは誰かに習っているわけではなく、自己流である。何でも、


「誰かに習うのかったるい。」


 と、武術を教える人をたいそうぶちギレさせた一言を言っていた。


「ルカの天才はな、技術じゃなくて能力なんだよ。」


「の、能力?しかし、特に変わったことなんて・・・」


 大地の精霊は分からないようだ。さっきから使っているのに、そう思っているとルカは小さい死霊を片付け終わりデカイ死霊を切り掛かりにいく。


「お、いいタイミングだ。おい、アイツをよーく見てろ。能力が分かるから。」


 俺は大地の精霊にルカと戦っているデカイ死霊を指さす。デカイ死霊はどこからか取り出した30mもある大剣を天高く振り上げ、


「死ねやああああ!!!」


 ブン!


 振り下ろす。普通ならこんなの受け止めたら潰れたトマトの出来上がりだ。


 ガキィィン!


 しかしルカは、左手に持っている剣で受け止めても。


「軽いな。そんなヘナチョコな攻撃じゃ・・・」


 潰れることもなく、


「俺は殺れねえよ!!」


 ドカン!!


 いつの間にか取り出した大剣を振り上げ、デカイ死霊を吹き飛ばす。


「な、なんじゃあれは!!?あの馬鹿デカイ剣ごと吹き飛ばした!?」


「あれがルカの能力だ。特殊な能力なわけではないがな。」


 ルカの能力は常人なんて比べものにならないくらいの身体能力。特に力に関しては全死神の頂点に立っている。鬼のような力、だからルカは『鬼人』の異名を持っている。


「しかし、いくら身体能力が高くてもこの数を10分以内で殺しきるのは・・・」


 大地の精霊は周りを見渡しながら言う。

今、死霊はまだかなりいる。今のルカのペースだと20分かかるだろう。


「というか、よくワシら狙われないのぉ。あやつらからしたらワシらはご馳走なのじゃが。」


「まあ、アレだ。デザート感覚だな。だがこれは助かる。もし捕まってみろ。アイツ、ぜってー俺らごと殺すつもりだから。」


「お主ら本当に仲間か?」


 そんな会話をしているうちに死霊たちの数は減っていく。しかしルカは、


「ああああ〜〜〜〜!!つまんねえな!!オイ!!全然たいしたことねえじゃねえか!!」


 いらついていた。よっぽど歯ごたえがなかったのだろう。


「お前らホントにリッチクラスかあ!?全然ダメだ!!数と図体だけが僕らの誇りですかあ!?」


 ルカは大剣を振り回しながら叫ぶ。こんなことを言われた死霊たちは当然のごとく、


「ザケルナ!!死ネ!!」


「舐めやがって・・・楽には殺さねえぞ!!」


「喰ってやる喰ってやる喰ってやる喰ってやる喰ってやる喰ってやる喰ってやる喰ってやる喰ってやる喰ってやる喰ってやる喰ってやる喰ってやる」


 めちゃくちゃぶちギレて、


 オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!


 全員いっせいに飛び掛かってきた。


「ちっ!!メンドくせぇ・・・」


 ルカは大剣を後ろに引き、


「な!!」


 ブン!


 大剣を振るう。その瞬間。



 ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!!!!


 空間が裂け、何百本の大剣が死霊に向かって飛びだし、


 ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!


 断末魔の叫びをあげて死霊は消えていった。



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