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死神の物語  作者: 笠井
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第四十四話 死神は歩き、走り、捕まえ、また走る。

 社長室より・・・


 伊織の弁当をノルンと仲良く、おいしく頂き、とっとと寝たからか、体調は回復し、例のごとく社長室に向かい、今日の仕事の確認をした。


「ほら、これが今日の仕事だ。」


 遠野さんはいつものニヤケ顔でいつものように用紙を手渡した。俺は黙ってそれを読むと、


『1:3番ゲート地域にいる死霊の始末。

2:4番ゲート地域の調査。』


 と、書かれていた。


「1は分かりましたけど2の調査って何ですか?」


 用紙を見た俺は思ったことを聞いてみると、


「どっかのお偉いさんがそこに施設を建てたいから、ある程度、広い平地と精霊が集まりやすい場所を探して適当なとこにコレを突き刺せと言ってたな。」


 そう言って遠野さんは長さ50㎝の棒状の物体を見せた。


「何すか?それ?」


「ある種の結界装置だ。コレを突き刺したら直径約5kmは誰にも認知されなくなるらしい。」


 遠野さんはため息をつきながら言った。


「5kmって、どんな施設だよ・・・ていうか、んなデカイ建物造って何すんだよ?」


 俺がそう言うと、


「まったくだ、そんなもの建てるヒマがあるなら治安の維持の一つや二つに手を貸してほしいものだ。」


 遠野さんはため息つく、どうやらお偉いがたに呆れているようだ。


「まあ、そういうわけだ。これくらい1人で行けるだろ?とっとと行って、適当なところに刺してこい。」


 と、遠野さんは言ったあと、俺はゲートに向かった。










 4番ゲート地域より・・・


「で、来てみたわけですが。」


 俺は3番ゲート地域の死霊を速攻で倒したあと、4番ゲート地域を見渡していた。


「この辺りは平地が多いな。だけど、精霊がいそうな場所ではないな。」


 精霊は簡単に言えば、自然のエネルギー体だ。なのでこんな平々凡々な平地にいるわけがない。


「まあ、穴ほれば案外見つかるかもな。」


 と、独り言を言いながら精霊がいそうな場所を探す。










 1時間後・・・


「はい、行けば行くほど平地オンリーで〜す。」


 あれから縦横無尽に歩いたり、走ったり、跳んだり、穴ほったりしたが精霊が好みそうな物件はなかった。


「はあ、こうなったらテキトーなところに刺して、バカには見えない精霊ですと言ってやろうか?」


 そんなバカなことを考えていると、


 トコトコトコトコ。


「ん?」


 柔らかそうな鼻と顔と足しかなく全身黄色を白で薄めたような色の謎の生命体を発見した。


「もしかして・・・アレ、精霊?」


 俺は謎の生命体に疑問を持った。こんな平地のど真ん中に精霊がいるとは思わなかったからだ。というか魔力がノルンと比べて低すぎるし。

俺がそんなことを考えている間に謎の生命体はどんどん先に進む。


「よ、よ〜し、とりあえず行ってみよう。」


 俺は謎の生命体のあとを追ってみることにした。










「で、のこのこ着いていったわけなんだが・・・」


 俺は謎の生命体のあとを追い、奇妙なクレーターのある場所についてしまった。よく見てみると、なにかの陣のようなものにも見えなくもないクレーターだが、魔力らしきものはなかった。

そして謎の生命体はどうなったかというと、


 もっそ、もっそ、もっそ、もっそ、もっそ、もっそ、もっそ、もっそ、ドンドコドンドコドンドコドン


 無言で太鼓らしきものを叩き、小さい身体を動かし、大きな鼻を天に突き上げている。

というか、20匹くらい増えていた。


「な、なにコレ?なんかの儀式?」


 俺は謎の生命体の謎の儀式に若干頭が混乱した。


「もういいや、この辺りにしよう。この辺りに棒突き刺して、ノルンの寝顔を見ながら寝よう。うん、そうしよう。」


 俺は来た道をUターンして、あの場所の近くもなく遠くもない場所まで歩き、棒を取り出し、


 パシッ。


 持ってかれた。


「おい待て!フィフスエッジ展開!」


 ドン!ドン!ドン!


 俺は銃を創り(麻酔弾)謎の生命体に向けて撃ったが、謎の生命体は華麗に避けた。


「上等だ、くそったれ。次は当てる!!」


 ドン!ドン!ドン!


 俺はまた銃を撃つ。今度は絶対射撃付きでだ。銃弾は軌道を変え、謎の生命体に当たる。


 カン!カン!カン!


 しかし、謎の生命体は身体を捻り棒に銃弾を当てて防いだ。正直、無駄に美しかった。


「へえ〜。銃は効かないんだ〜」


 俺はそう口にしたあと、


「ぶっ飛ばす!!」


 目的も忘れて、走りだした。










 25分後・・・


 パシッ!


「とったあ!!」


 25分の追いかけっこの末、ついに謎の生命体を捕まえた。


「はあ、はあ、はあ、はあ、はあ、はあ、はあ、はあ。ど、どうだ謎の生命体・・・お、俺の・・・か、勝ちだ。」


 俺は虫の息で謎の生命体に呼びかける。すると、


「や、れやれ・・・死神の・・・くせに・・・ここ、まで、やるとは。」


 謎の生命体は初めて声を出した。


「はあ、悪いが、はあ、俺、は・・・諦、め、が、悪いんだよっゲホッゴホッ!!」


「ふ、ふん!わしが、もっと、若、ければ、貴様、なんぞに負けっ!ゲッホ!ゴッホ!」


 両者ともども死にそうだった。それから息を整え、


「で?謎の生命体。棒かえせ。」


「いやじゃ、渡したらわしらは日の光を浴びれぬのだろう?」


「さあな、もしかしたらパーティーのお誘いがくるかもよ?」


「神族がこんな辺境でパーティーなんかするか。」


「依頼人が神様じゃないかもよ?」


「死神の上には神族しかおるまい。」


「そりゃそうか。いや、地獄に行けば、あるいは・・・」


「それこそ、こんな辺境にくるわけなかろう。」


 そんなローテンションな口論をしばらく続けて、


「お前がそれを渡さないのはわかった。しかしだ。俺は早くこんなお偉いさんの道楽をとっとと終わらせて帰りたいから返しやがれ。」


 そう言うと、謎の生命体は唸りだして。


「う〜〜〜む、帰りたいのは分かったが、さっきも言ったとおりわしらの平穏な生活が脅かされるしの〜。仕方がない、お主、ちょっとばかし着いてこい。」


 と言って、謎の生命体は歩きだし、俺もその後に続いた。










 30分後・・・


 謎の生命体に連れられて向かった先は大きな崖だった。下を見れば底が見えないくらいの崖だ。


「何ここ?」


「お主の言うところのゲート地域の境目じゃ。」


 と謎の生命体はなんでもないように言った。本当なのかどうか周りを見渡したり、地図を見て確認してみると事実であることが分かった。


「で、ここに来てなにすんの?」


「この棒を崖の底に向けて投げるのじゃ。」


「いや、何もないところに棒投げたって叱られるだけだろ!」


「安心せい。この下は人間の汚いものを取り込んでしまい、死霊になりかけの精霊しかおんわ。」


 と、謎の生命体は言った。


「人間の汚いもの?何?ここに下水流してんの?そして、精霊はそんなもんついうっかり取り込むの?」


 俺がそう言うと、


「阿呆!!誰が人間の排泄物を取り込むと言った!!負の感情じゃ!負の感情!」


 謎の生命体に怒鳴られた。


「負の感情?まあ、確かにそれなら死霊になるかもな。」


 死霊は他人の想い(善悪問わず)を喰らって強くなったり、姿を変えると聞いたことがあるので、無色の精霊が濁りまくった負の感情を取り込んだら死霊になることもあるだろう。


「まあ、確かに精霊ならなんでもいいしな。もしかしたらコレを機に死霊になりかけの精霊を治すことも考えてくれそうだし。」


 もしそうなら仕事が楽になると俺は思った。


「ほれ。いくぞ。」


 謎の生命体は棒を投げ、棒の先端を蹴って崖の底に飛ばした。


「う〜ん、これで突き刺さらなかったら飛び降りなきゃいけないのかね〜?」


 羽根を使えば問題ないかもしれないが崖の底には死霊なりかけの精霊がいるらしいのであまり降りたくなかった。


「心配するな。わしの投擲術は完璧じゃ。」


 謎の生命体は自信たっぷりに言う。


「いや、投げてないだろ。そういやお前、精霊なの?」


 俺は謎の生命体に聞いてみると、


「そうじゃ。こんな平々凡々な平地にいるがな。一応、大地の精霊じゃ。」


 と、謎の生命体改め、大地の生命は言った。


「そうかい。まあ、これで仕事は終わり。帰りますか。」


 俺はゲートに向けて歩きだそうとすると、






 ピピピピピピピピピピ






「ん?」


「なんじゃ?」


 なにか高い音が聞こえた。それと同時に俺の携帯が鳴り、それに出ると、






『ゆ〜君!!早くそこから離れて!!』






 エイレンシアの叫び声が聞こえ、何事かと思い、問いただそうとすると、






「!!」







 『流れ読み』の感覚がこの辺一帯が貫かれるように感じた。俺はすぐに双剣を創り、


「クロノ・トリガー・・・発動!」


 自身を加速させ、






 ガシッ!






「むおっ!!」






 大地の精霊を掴み、






 タンッ






 全力で走る。その直後、





 ドン






 白い何かが降り注いだ。



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