第四話 死者は志望する
結構、長くなっちゃいました。
目が覚めると、そこには今まで見ていた空ではなく、知らない天井だった。
(何処?というよりなんで寝かされてるんだ?)
そう思った矢先に、
「なんだ、もう起きたのか、お前。」
と、不意に声が聞こえた。俺はその先を見ると、
「三途の川に落ちる奴なんて初めて見るし、助かった奴も初めて見たぞ。」
男が立っていた。
「え〜と、助けてくれてありがとうございます。」
俺はとりあえず礼を言った。
そして、俺はその男を見た。見たところ年は俺と同じくらいだ(顔は俺より良いが)。男は学校の制服らしきものを着ていた。そして、第一印象は、
(なんか、殺人鬼ってああいう感じなんだな。)
その雰囲気はとても鋭く、自分は全てを殺す存在だ。て感じの雰囲気で俺は殺人鬼だろうと決め付けていた。(殺人鬼に会ったことなんか一回しかないが)
そう思ってると、
「しかし、何だってあんなところにいたんだ?あそこは危険地帯だってのに・・・」
男はそう質問した。
なので俺は、
「いや〜それが殺されてばかりなんで知らなかったんですよ。」
笑って答えた。すると男は、
「当たり前だ。死んでから間もないのに全て分かってたら不気味だよ。」
苦笑して答えた。
「しかし変だな?死んだら特定の位置に送られるんだが、何だってよりによって危険地帯に送られるんだ?」
男は考えて始めた、なので俺は、
「誰かミスしたんじゃないですか?」
そう答えると、
「確かに交通班はミスが多いが、死者送りは自動だからミスはありえないぞ。」
「そうなんですか?」
「当たり前だ。死者は一日に何千人も来るんだぞ。いちいち手動でやってたら、転生が追い付かなくなる。」
男はさも疲れたように言った。
そりゃそうだと俺も思った。だけど俺は、
「まあ、そういうこともあるでしょう。そんなことより、此処は何処ですか?そして、あなたは誰ですか?」
不具合なら、いつでもある事だから話を変えた。
「と、自己紹介が遅れたな。俺は遠野 一夜此処、死神詰め所『黄泉』の社長をしている。ところで、お前の名前とここに来た過程を教えてくれ。」
と、ここのトップ、一夜は自己紹介をした。
とりあえず、俺も自己紹介をした。
「俺は、神崎 悠志。ただ普通に生きてきたのに謎の少女に殺された普通の一般人Aです。」
それから俺は、殺された状況から三途の川の水深を測ると誓い、三時間歩き続け、三途の川に落ちたことを話すと、
「ククっ、どこが普通の一般人Aだよ。普通の人間は殺された相手に復讐を誓うかもしれないが・・・三途の川の水深を測るなんて考えねぇよ。
ハハハ、久しぶりに大笑いをしたぜ。」
と、大笑いしていた。
「う〜ん、そんなに笑えますかね〜?」
と、尋ねたら、
「そりゃ笑うさ、ここ二百年生きてきたが、俺ら以外にそんなアクションした奴は見たことない。」
なんか自分も変人の類だと言ってるようだ。
「へぇー、じゃあ遠野さんはどんなことを?」
おもしろそうなので、その変人ぶりを知りたかった。
「俺か?俺は閻魔にケンカを売ったよ。」
なんかすげぇ罰当たりなことしてるというか、
無謀な発言をしていた。
「そ、そうなんですか〜(汗)(判決に不満があったのか?)で、勝敗の方は?」
「ん?ああ、実はさぁ、最後に立っていたのは俺だけどさ、決着決まる前に鬼どもに止められてさ、勝敗がうやむやなんだ。ああ、もう一回、殺しあいたかった・・・」
と噛み締めるように言った。と、不意に遠野さんは、
「ところでさ・・・お前、腰に差しているナイフは何だ?」
と、ナイフに目を向けた。
「ああ?コレですか?ほらさっき言ったでしょ?ナイフで刺されたって、コレがそのナイフです。」
と、答えたら、遠野さんはありえないって顔をして、
「ばかな、死んだ人間の服は自分のものだから送られるが、他人のナイフなんて、死後を理解した魔術師でない限り絶対に送られない。」
そう驚きながら答えた。
「じゃあ、アイツは魔術師だっていうんですか?」
そんなファンタジーなことがあるわけがない。
「だから、死後を理解した魔術師なんて現世では存在しないんだよ!」
遠野さんは苛立って言った。
「現世にはいないって・・・まさか・・・」
んなことはありえないだろうと思ったが、遠野さんは、
「ああそうだよ。こんなことが出来るのは・・・この世界の魔術師・・・つまり、俺達、死神だけだ。」
俺の疑問を裏切るように言い放った・・・
「全く、厄介な奴に殺されたな。」
遠野さんは、犯人が誰なのか知っているような口ぶりだった。
「遠野さん、俺を殺した奴のことを知っているんですか!?」
俺は驚きながら質問した。
「ああ、こんな無駄なことをする死神は一人しかいない。」
遠野さん確信して答えた。たが俺は、
「?、無駄ってどういう意味ですか?」
「じゃあ質問するが、普通、殺した相手にわざわざ魔術であの世に凶器を送るか?」
その質問に俺は、
「確かにそれは無駄ですね。」
殺した相手にわざわざ凶器を送ったって何の意味もなかった。
「だろ?アイツは自分の魔術部分の制御をメンドイからしないんだ。だから、無意識にナイフをこの世界に送る結果になった。」
遠野さんは、そう語った。
「で、誰なんですか?アイツは?」
俺はもっとも聞きたい答えを尋ねた。
「その前に、二つ質問させてくれ。」
「?、何ですか?」
「まず一つ目の質問。
お前を殺したやつは長い銀髪、白い肌、朱い目をした美少女だったか?」
「はい、していました。よく解りましたね。」
「まあ、前にも言ったように、アイツしか考えられないからな。」
遠野さんは笑って答えた。
「さて、二つ目の質問だ。お前はそいつをどうするつもりだ?」
遠野さんは自分の持っている威圧を俺に向けて言った。
「俺は・・・」
さすがにこんな重圧のなかで質問されるなんてな。
「俺はアイツに会って、復讐します。」
俺は思ったまま答えた。だが遠野さんは、
「やめておけ、んなことしたら命を溝川に捨てるようなものだ。それに、お前はそいつになんの恨みを抱えてないだろう。」
見透かしたように答えた。
(確かに、何の事情もなく殺されたのには腹立つがなんでだろうなぁ・・・なんでアイツ自身を・・・)
憎めないんだろう・・・
(でも、だからって・・・)
ただヤラレっぱなしじゃ嫌だしな。
「確かに、なんでか知らないが、アイツにたいしてどうも憎めない自分がいる。だけど。」
なら本当のことを言い続けよう。
「俺はアイツを追う。
此処で引き下がったら、俺自身が無くなる。俺が俺で在るために、俺はアイツを追い続けなければいけない。」
恨みはないが、引き下がれない!
だって俺たちは・・・
そういう存在なのだから・・・
すると遠野さんは呆れた顔で、
「はあぁ〜。お前、今言ったこと思い出せるか?」
と尋ねてきた。すると俺はなぜか、
「えっ?あれっ?」
(どうなってんだ。ついさっき言った筈なのに思い出せない。)
当惑する俺に遠野さんは、
「やはり無意識にしゃべっただけか。俺の威圧が強すぎたかな?だが・・・」
(俺が俺で在るために・・・か、なかなか面白いじゃないか。)
遠野さんは笑いながら俺を見ていた。
「いいぜ、お前を殺した女の事、話してやる。」
と、遠野さんは笑って答えた。
「女の名前は、クレア。俺を抜かせば最強の死神だ。」
「最強の死神?なんでそんなヤツが俺を殺そうとするんだ?」
俺はこのことに疑問を持った。
「確かに、アイツになにがあったか知らないがある日突然アイツは姿を消した。随分経った後にアイツは姿を現した。犯罪者としてな。」
遠野さんはこめかみを押さえて言った。
「今も、アイツの事で悩んでるんですか?」
「そりゃそうだ。なんでかしらんがアイツは人間を殺したり、悪霊をスカウトしている。」
遠野さんはうんざりしたように言った。
「テロリストなんですか?アイツは?」
俺がそう尋ねると、
「似たようなもんだが、まだ目的がはっきりしていないし、テロリストならなにか出張するが、それすらない。全く、迷惑な話だ。」
遠野さんはそう答えた。
(まず、今ある情報を整理しよう。)
どうするかはそれからだ。
(先ず、始めにアイツの名前はクレア。遠野さんを除けば最強の死神だということ。)
これは一番はっきりしている事実だ。
(次に、アイツは『黄泉』から抜けた。)
理由は不明。
(それから随分経った後、アイツは姿を現した。)
犯罪者として。
(アイツは今、人間を殺したり、悪霊どもにスカウトを行っているらしい。)
テロリスト紛いなことをしている。
(そして最後に、アイツの目的は不明。)
ついでにアイツがいる団体すら不明。
(結論は、今のままじゃアイツに復讐するどころか、追い掛けることもできない。)
状況整理は終わりだ。
後は、
「それで、アイツを追い掛けると言ったが、どうするつもりだ。いっとくが、今アイツを追い掛けようとしても、近くにいる影に殺されて終わりだぞ。」
遠野さんはそう忠告した。
そんなこと、言われなくても解っている。
普通の一般人Aが最強の死神に勝てるわけがない。だから・・・
「やることは決まっています。」
アイツを追うためには、
「俺を死神にさせて下さい。」
俺自身が最強にならないといけない。