第三十七話 死神は後輩と仕事をするpart2
社長室より・・・
「おい・・・神崎・・・今日の仕事休むか?」
「社長、あんたそれを言ったら、空から鬼が降ってきますよ。」
俺は遠野さんのあまりにも有り得ないことを口走ったので、そうツッコミをいれたら、
「鬼どもは空から降ってくるほど暇じゃない。お前、鏡見たか!?血まみれじゃないか!?エイレンシアの抵抗か!?そこまで必死だったのか!?」
遠野さんは珍しく叫んだ。
「いや・・・ちょっと・・・ミイラ取りがミイラになったというか・・・」
「エイレンシアが!?お前、何された!?」
俺は内容を言えば、
「俺がいなくてよかったな。その場にいたら、エイレンシアもろとも解体してた。」
遠野さんは少し顔色が悪くなった。自分を抑えているのだろう。
「まあ、仕事はやりますよ。ちゃんと魔術かけましたから。」
「いや、魔術も流した血は戻せないんだが・・・まあ、いいか。今度はこれだ。」
遠野さんは紙を渡す。
俺はそれを読むと。
『1番ゲート地域に例のフードを被った死霊を確認。それを排除しろ。』
と、書かれていた。
「1番ゲート地域にあのフードが?なんで?」
1番ゲート地域は死神になるための試験をやる場所でもあり、あまり強い死霊が居着く場所ではない。しかし、
(クレアはあいつらのことを・・・)
『残念ね。下っ端との戦いが無ければ、また私を傷付けられたのに。』
と、言っていた。なら、
(あいつらに会えば、クレアに・・・)
会えるかもしれない。そう思った。
「いっとくが、お前と一緒にミリアも同行させる。無理すんなよ。お前とクレアがやり合ったら冗談抜きでやばいんだ。今回は会ってもお茶だけで我慢しろ。」
「いや、なんでデート感覚?」
遠野さんの発言について聞いてみると、
「いや、血を血で洗うバトルもいいが、和やかにデートするのもそれはそれで面白いと思ってね。」
いつものニヤケ顔で言った。
1番ゲート地域より・・・
「と、言うわけで。私たちは1番ゲート地域にいる謎のフードを倒しにきました。」
「先輩・・・誰に言ってんですか?」
「お前にだけど?」
「先輩の猫には言わないんですか?」
「もう言ってあるぞ。なあ、ノルン。」
「うん。悠志が血まみれの外套をクリーニングに出した時に聞いた。」
「血ィ!?先輩、どうしたんですか!?」
「聞くな。あれは俺の罪だ。」
俺達は1番ゲート地域についてすぐにそんな会話をした。それにしても懐かしい。あの時と同じく木々が生い茂ってる。俺はここで死神の試験をやり、リッチと無謀にも戦って、勝利し、死神になった。
「こ、交通班の局長さんって、すごいんですね。」
「俺もエイレンシアが人の血を見て喜ぶ性質だとは思わなかったぞ。いやあんな壊れた笑顔だったし、演技かも。」
と、願いたいが、
「違う。あの女は悠志の血を飲んだって嬉しそうだった。」
ノルンがそう言った。
「ノルン?エイレンシアに会ったのか?」
あの短時間になぜノルンに会いに行ったことに疑問を持った。そしてノルンはコクンと頷き、
「あの女は、私に『ゆ〜君と血を飲みあいっこしたよ。』って言ってた。今度、私にもして。」
と、ノルンは俺に抱き着いた。
「せ、先輩!?ち、ちっちゃい女の子が好きなんですか!?」
ミリアはめちゃくちゃ驚き、2、3歩下がった。
「ミリア、んなわけあるか。ノルンは可愛いからこうしてるだけで、道を歩いている小学生を見ても興奮しね〜よ。」
俺がそう言えば、
「そ、そうですか。でも血を飲みあうなんて先輩もすごいですね。」
「いや、飲まされただけだから、そりゃ、エイレンシアの血ってどんなのかなと思ってしまったが、あれは場の雰囲気にのまれただけだ次は大丈夫だ。」
「次!?先輩!?次もやるんですか!?」
「え!?やばいなまだのまれてんのか?」
「やだ。飲みたいなら私のを飲んで。」
そんなバカみたいな会話がしばらく続いた。
20分後・・・
「ハイ。もうこの話はオシマイ。早く仕事モードに切り替わりましょう。」
俺が手を叩きそう言うと、
「うん。」
「ハイ。」
お行儀のいい2人は頷いた。
「で、先輩。いまさらですけど、なんで先輩の猫がここに?」
ミリアは手をあげてノルンについて聞いた。
「フード相手じゃ、お前1人じゃ無理だろ?ホントは伊織に頼みたいが、もしクレアにあったときに割り込んできたらやだし、ルカは仕事だし、バカップルには近付きたくないし、坂塚さんは奥さんとキャッキャ、ウフフだし、だからノルン。」
俺がそう言うと、ノルンはミリアの前に立ち、
「よろしくお願いします。」
ふかぶかとお辞儀をした。うん可愛いらしい。
「こ、こちらこそどうも。」
ミリアもお辞儀をした。すると、
「おい、見つけたぞ。」
目標のフードが来た。
「数は2人ですね。両方魔力を隠してます。」
「前回と、同じか・・・」
俺はまえもって制限を外しているので速攻でケリをつけれる。
「ミリア、ノルン。俺は左をやるから右をやれ。」
「わかった。」
ノルンはすぐに頷いたが、
「先輩・・・両方サクッとやってくれないんですか?」
ミリアは不満げだった。
「めんどくさがるんじゃありません。強くなりたいんでしょ。」
と、言ってみると、
「先輩、お母さんですか?まあ、分かりましたけど。」
と、渋々、賛成した。
「よし、じゃあ、ファーストカード・・・解放。」
カードを握り潰し、刀を出し、
「いくぞ!!」
フードに向かって駆け出した。
ミリア視点・・・
「いくぞ!!」
先輩はそう言ってすぐにフードの死霊に駆け出し、
「うらあ!!」
ブン!ガキン!
左のフードの死霊に切り掛かるが防がれた。しかし
「竜刃!!」
ドカン!!
斬撃を飛ばしフードの死霊を吹き飛ばした。私はそれを見て、
「すごい・・・」
そう思った。多分、死霊でも最上級にあたり色夢(先輩たちの知り合いは除く)でさえ倒すのが苦労するリッチに相当するフードの死霊を軽く吹き飛ばした。と、
ペシン。
「きゃっ!」
何かに叩かれ、周りを見渡すと、
「呆けてない。敵は目の前。」
先輩の猫が睨んだ。可愛らしいがちょっと怖い。
「わ、分かりました。」
私は慌てて鎌をだした。その瞬間。
ブン!
「くっ!!」
大きな手が振り下ろされるが、左に避ける。
「○%☆&=」
フードの死霊は意味不明な言語で喋った。なので、
「ちゃんとした、人間の理解できる言葉で喋ってください。」
と、言ってみると、
「@<♪・++++」
首を傾げた。理解できていないらしい。
「まあ、いいです。あなたは私が・・・いや私たちが。」
大きく息を吸い、
「排除します!!」
ブン!
鎌を振り下ろした。
神崎 悠志視点・・・
カン!カン!カン!カン!カン!カン!ガン!キン!ガキン!ドン!ブン!ブン!カン!カン!カン!キン!ガキン!ドン!ガン!キン!ガキン!
俺はフードと5分くらい切り合っていた。
「せらっ!!」
「++!!」
ガキン!
刀と爪がぶつかり合う。戦ってみたら前のやつと比べると少し強かった。だが、
「はっ!関係ないな!!竜閃!!」
ビュン!!
「%○)(」
スピード重視の斬撃を飛ばす。が、難無くかわす。
「フィフスエッジ・・・解放。弾丸変換・・・神弾。」
言い忘れたが、神弾というのは坂塚さんが開発した。対リッチ用の弾丸である。この世界において、銃はあまり重要とされていない。その理由は威力の低さ。今の時代、銃はたくさんあるが、霊に対して効くかといえば、効かないとしかいえない。大体、弾に魔力を込めれる量が少ないのだ。スペクターやリビングには効果はある。だが、リッチにはまるで通用しない。それに、死神はほとんど、魔術士や戦士ばかりだし、銃を使う人はあまりいない。坂塚さんはなんとか業者の人たちに頼んで、一緒に考えて作ったらしい。
そして俺は二丁拳銃を創り、
ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!
フードに向けて撃つ。
「☆☆☆☆」
フードは爪で防ごうとするが、
ブシャ!
「★★」
完全には防げなかったらしい。フードにほんの少し隙ができたので、
「フォースエッジ・・・展開。」
ダブルセイバーを創り、
「アグニス!!」
炎を纏わせ投げ付ける。そしてフードに、
ドン!
直撃した。しかし、
「あっ。そういえば・・・」
俺は思い出した。こいつらに『アグニス』は、
「♪<@&」
ブン!
(頭!)
咄嗟に頭をふせ、避ける。そしてすぐにその場を離れる。
「アグニスは効かないんだったな。ああ、失敗した。お手軽に仕留めようとしたのが間違いだった。」
『アグニス』はコストが低く、それなりに威力があるため、少し頼るクセがある。
「まっ、いいか。そろそろシメだしな。」
俺は刀を創り、構える。
「??★☆○」
フードは唸り、
ゴオ!
動いた。
「はあ!」
俺は刀を振り、フードも爪を振る。
ガキィィィン!
金属音が響き渡る。
ここから、俺のシメが始まる。
「はああああああ!!」
俺は魔力を練り上げ、
「竜破!!」
ドン!
威力重視の斬撃を至近距離から飛ばす。すると、
ザザザザザザザザザザザザザザザザザザ!!
「○○○○○○!!」
フードは踏ん張るが押し流される。俺は刀を構え、
「竜羽」
ブン!
刀を振れば、斬撃は飛ぶ。今度の斬撃は、
パシュ、パシュ、パシュ、パシュ、パシュ、パシュ、パシュ、パシュ、パシュ、パシュ、パシュ、パシュ、パシュ。
百を超える、5㎝くらいの大きさの閃光が、
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!
「!!!!!!」
フードにまんべんなく降り注ぐ。
「竜羽は命中率重視。1つ1つは威力はかなり低いが、全弾当たればかなり効くぞ。」
俺はフードに『竜羽』の説明をし、刀を向ける。
「&@♪%¥!!」
フードは姿勢を低くし、俺に真っすぐ襲い掛かる。が俺は軽く避けた。
「牛みたいに突っ込んでも意味ないっての。」
と、俺はフードに言った。
「%%%%」
ブン!
フードは構わず爪を振り下ろす。俺は刀でそれを防ぎ、
ガキィィィン!
甲高い音が辺りに響き渡った。その直後、
ピキビキ。
「!!」
フードの巨大な爪にヒビが入った。顔は見えないがフードはかなり驚いているだろう。
「言い忘れたが、前に放った竜破はな。狙ってやったわけじゃないが、高速振動が発生して喰らった武器を・・・」
ピキビキバキバキ
「破壊する。」
実際は当たった瞬間、その武器に1番負担がかかる振動を与え(狙ってやったわけではないので原理は解らないが)、脆くさせるだけだ。だが、乱射、打ち合い、竜刃や竜羽などの攻撃を全て爪で防いだので若干脆くなったから壊せたのだ。
「+++!!??」
フードの意味不明な言語に付き合うのもこれで終わりだ。俺は刀を引き、
「じゃあな。名もなき、死霊A!!」
ダン!
突進した。
「○★#!・・・グッ・・・ガッ!」
フードは逃げようとするが、今までよりはるかに遅くなった。俺は疑問に思ったが気にすることなく、
「虎連爪牙!!」
ザンザンザン!!ザン!ザン!ザン!ザン!
「♪@+++アア!!」
あの時、クレアにぶつけられなかった最速の剣技で、フードの頭、腕、足、心臓、首を切り裂いた。首を切ったのなら普通は声も出せないが、
「シ・・・ニ・・・ガ・・・ミ・・・メ・・・」
フードは恨み言を理解できる言語で言った。
ミリア視点・・・
「★#○」
ブン!ブン!ブン!
フードの死霊は大きな爪を振り回す。確かに速いが技巧も何もない。そんな攻撃なんて避けられる。
「★★★★」
今度は腕を振り上げ、大きな爪で、私を押し潰そうとする。だけど、
「氷よ・・・」
ガキン!
「!?」
先輩の猫が防いでくれた。私はその隙に、
ブン!
鎌を薙ぐ。だけど、
「@♪/☆」
ブン!
後ろに跳んで避けられる。私も後ろに退く。
「はあ、はあ。」
息が荒くなる。私はリッチ以上の死霊と戦ったことがないためか緊張している。そこへ、
「へたくそ。」
先輩の猫に言われた。
「はあ、はあ、それは今言わないでくださいよ。」
集中できなくなる。
「悠志は軽口たたきながら戦ってた。罵倒してもあまり気にしないそぶりで、「次は上手くやるよ。」て言ってホントに実行した。」
先輩、あなた化け物ですか?言われてすぐに上手くやれるんですか?
「いつまでも休んでない。来るよ。」
先輩の猫はそう言って後ろに下がった。それからすぐに、
「☆☆☆!!」
フードの死霊が襲い掛かってきた。私は鎌を構え、
カン!キン!ガキン!ガン!キン!
打ち合った。私は鎌で受け流し、腹を薙ぎ払う。
ザクン!
「!?抜けない!?くっ!」
鎌はフードの死霊に突き刺さるが、動かせなかった。そこに、
ブン!
爪が襲い掛かる。
私は鎌を捨て、爪を避ける。フードの死霊は追撃しようとするが、
ドドドド!!
氷柱がそれを遮る。
「気合いが足りない。」
「助かりましたけど、一言多いです!!」
私は新しい鎌を出しながら叫んだ。
「叫ぶ気力があるなら戦う。」
「分かってます!じゃあちょっと力貸してください。」
私は先輩の猫に私のやりたいことを話したら、
「できるけど、動き止めなきゃ期待薄い。」
「動き、止めれますか?」
「一瞬でも動きを止めれば、30秒どんなことしても動かない。」
つまり、私次第。だけど、
「簡単です!」
自信もって言って、フードの死霊に切り掛かる。
「ハアっ!!」
ブン!
鎌を袈裟に振る。
ガキン!
フードの死霊は防いだ。しかしすぐに動き出す。これではダメだ。打ち合いではこっちが凍る。
(大丈夫!策はある!)
先輩みたいに何種類も武器は出して、多種多様な攻撃はできないが、私は鎌を何本でも出せる。それがあれば長期戦は可能だ。その間にあれを出せばいい。
「やあ!!」
ブン!ブン!ブン!
私は鎌を振るう。
「○#」
ガン!カン!ガキン!
フードの死霊は防ぐ、その間に、
「ハアッ!!」
ブン!
小さな鎌を三本だして投げ付ける。
「×&○」
フードの死霊はそれを避け、私の後ろに移動し、
ブン!
私を押し潰すように爪を振り下ろす。
ガキン!
私はそれを防ぎ、
「ハアッ!」
一本の鎌を、
ブン!
投げた。
「!?」
フードの死霊は上体を反らし避け、
「・××/♪」
ブン!
真一文字に薙ぎ払う。
私はそれを防げなかった。
ピタッ
「!!!!」
否。防ぐ必要はなかった。なぜなら死霊の動きを止めたから、
「間に合いました。」
全てはついさっき投げた鎌。その鎌がフードの死霊の影に突き刺さっていた。
「影縛り。先輩には見せる機会がなかった技。鎌に宿った魔力が影を通して5秒間だけ動きを止める。」
ホントなら私がしゃべってる間に裂かれてる。だけど、
「!?!?」
ピキパキ。
先輩の猫がフードの動きを止めてくれた。
さあ、これが最後だ。
私は二本の鎌を出し、両手で構え、
「ハアアア!!」
ブン!
振り下ろした。それだけでは貫く力がなかった。だから、
「逝きなさい・・・」
ブン。
先輩の猫の氷塊が手助けしてくれる。
氷塊は素直に私の鎌に落下し、
ザクン!!
「!!!!!!!」
フードの死霊を貫いた。そして・・・
「・・・★★★・・・・★★★★・・・」
消えて逝った。