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死神の物語  作者: 笠井
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第三十六話 死神は罰を受ける。

 社長室より・・・


 俺は死霊狩りを15分で終わらせ、遠野さんに報告した。その時の反応が、


「神崎・・・どうした?やけに早いな。それになんか殺気でてるし。」


 やや驚いていた。


「というわけで、死霊は15分で仕留めました。以上!じゃ、俺はエイレンシアをボコボコにしに行くので。」


 と、口早に言って、回れ右したら、


「オイ、待て。」


 呼び止められた。


「何ですか?俺はこの溢れる感情をエイレンシアにぶつけなきゃいけないんです。」


「ミリアの次はエイレンシアか?どうせなら伊織あたりをイジめてほしいよ。」


 遠野さんは呆れながら言った。が、俺は、


「なんで伊織?」


 なぜ伊織をイジめる必要があるのか分からなかった。


「何故?そのほうがやり甲斐あるし面白いからだ。」


 遠野さんはいつものニヤケ顔で言った。


「伊織をイジめる理由がないですよ?」


 伊織は俺に害をなすなんてことは全く無い。


「伊織が害が無いって言うなら、エイレンシアも害はないだろ?」


 と、遠野さんは言った。


「エイレンシアは今日、死霊共にミリアをイジめたことを走りながら公表したからボコボコにするんです。」


 と、俺が言えば、


「くくくっ!!ああ、なるほど!そういうことか!」


 大笑いされた。










 交通班・研究所前より・・・


 俺は社長室から出たあと、音速越えたんじゃないかな?っと思うくらい早く研究所に着き、


「すいませ〜ん。エイレンシアいますか?」


 と、近くにいた研究員に話し掛けると、


「自室に引きこもってます。」


 と、言ったのですぐに行ってみると、


「なにこれ?」


 鉄のバリケードで扉は塞がれていた。


「いやいやいやいや!!なにこれ!?引きこもりのレベルじゃないだろ!?」


 どっちかっていうと、軽く篭城レベルだ。


「たくっ。一体なんだってこんなことに・・・ん?」


 よく見てみると、バリケードに貼り紙が貼ってあったので見てみると、


『ゆ〜君が正気に戻るまでここを出ません。』


 と、書かれてた。


「引きこもってたら確認できないだろ・・・」


 俺はそう愚痴り、ため息をつく。そして、


「ファーストエッジ・・・展開。」


 双剣を創り、少し振り回して体を慣らす。そして息を吸い、


「エイレンシアに告げる〜。とっとと出てこ〜い。話しがあるんだけど〜」


 と、部屋に引きこもってるエイレンシアに言ったら、


「今はムリ〜。今、ゆ〜君に会うとダメな気がする〜。なんかイジめられる気がする〜」


(ちっ、バレている。)


 エイレンシアの出張に俺は舌打ちした。


「んじゃ、しょうがない・・・」


 俺は後ろを振り向き、


「強行突破だ!!」


 ザン!!


 バリケードをぶった斬り中に侵入する。その瞬間、


 ブン。


(『流れ読み』が発動した?)


 頭から真一文字に攻撃されることを感知し、


 ブン!


 何かが振り下ろされ、


 ガキン!!


 それを防ぎ、そして、


「エイレンシアのやつ・・・必死だね〜」


「主はあれで感がいいからな1時間で私の剣を完成させ、逃げていったぞ。」


 前に見た槍のように柄がながい剣を持った屍が立ち塞がった。


「剣って造るのに1時間でできないだろ・・・」


 伊織に聞いた話だと最低1週間かかるらしい。


「元は完成していたが、仕事が多く、時間がなかったのでほったらかしだったのだが、お前の噂がでた瞬間、主は何を思ったか泣きながら走り回り、お前のことを叫んだら、死霊にも広まったことに気付き、今度は自分が餌食になると感じ、速攻で完成させたわけだ。」


 ま、私はそれで感謝してるがね。っと付け加えた屍は剣を構え。


「主の命令だ。お前を追い払えとのことだ。剣の試し切りがてら、私と戦え。」


 と、言った瞬間、


 ヒュン!ガキン!


「のわっ!ヤル気満々かよ!!」


 突き出された剣を双剣で防ぎ、距離をとる。


「いいぜ。目的が手段にすり替わってる感が否めないが・・・」


 俺は双剣を握りしめ、


「お前に破壊を押し付ける!!」


 屍に切り掛かった。










 1時間後・・・


「思うんだよね。何でこんなことをしてしまったか。」


「それは若さゆえの過ちとしか言いようがないだろう。」


 屍はため息(機械のくせに)まじりに言った。


「そう言えば、お前の一カ所に高速で連続突きするやつどうやってんだ?」


 俺はあの『流れ読み』を使っても防げないあの突きについて聞いてみた。


「アレか・・・アレは『必刺ひっし』という技で私を造った科学者が『戦いの際、どうやれば敵を確実に殺せるか』を考えた結果、突きこそが最強と言ったので追求したらこうなったわけだ。しかし、それを聞いてどうする?まさか出来るとでも?」


 と、屍は言った。


「え?やっぱ無理?人間の限界越えれば出来るかな〜って思ったんだけど?」


 連続は無理でも1回や2回くらいならいけるかなと最近思っていた。


「伊織・・・だったか?あの女にも言ったが、

まず初撃から0.05秒で剣を引き、刹那の瞬間に突き出すのだぞ。」


 たしかに俺にはできないと思った。


「伊織だったらそれくらい出来るんじゃないか?」


 俺と違って伊織は剣においては誰よりも強い。


「確かに引いて突くことは出来るだろう。だが、体験したお前がよく解ってるだろう?剣で防ごうとしたらすり抜けただろう?」


 たしかに双剣で防ごうとしたらすり抜けて危うく死にかけた。


「だけど0.05秒で残像が見えるくらいの突きが出来るのか?」


「それはだな、突き出す瞬間、ある機能が発動し、光の屈折で残像を見えるようにしたのだよ。そして、その瞬間、腕のギミックが動きだし、剣を引き、再び突く。これなら人間には出来ないだろう?」


 と、屍は言った。


「つまり、『必刺』っていうのは純粋な技ではなくて科学者が考えた悪知恵なわけ?」


 それを聞いた俺はたしかに科学者の必死さがうかがえた。


「まあ、そういうことだ。これを完成させるためにどれだけの時間が費やしたことか。まず腕のギミックが問題になった。どうすればすぐに引いたり出したりできるのかを研究し、強度の問題にぶつかり、次はどうやって残像を出すかの問題が発生した・・・」


 屍は科学者の汗と涙の物語を熱弁した。


「まあ、出来ないことは分かった。」


 俺は科学者の話を半分聞き流しながら答えると、


「そうか。それとお前、現実逃避もいいが、これからどうするのだ?こうなっては土下座かモルモットだぞ。」


「うっ(汗)!?」


 俺は屍の言葉を聞き、冷や汗を流した。そして、


「ゆ、ゆ〜君〜、げ、元気〜?」


 エイレンシアがびくびくしながら帰ってきた。普通ならこのままボコボコにしようとしただろう。そう、普通なら、


「エイレンシア・・・話がある。」


 俺はエイレンシアに言った。今、俺の心は罪悪感に満ちてた。


「ど、どうしたの?ゆ〜君?なんか悪さをしてお姉ちゃんに怒られる弟のような顔をして。」


 妙に具体的だったが、そんなことはどうでもいい。


「実は・・・戦ってる最中、部屋をめちゃくちゃにしてしまい・・・」


 俺は歯切れが悪いながらもなんとか言った。


「え?そ、そんなことはいいよ!屍を待機させちゃった私が悪いし〜。」


 エイレンシアはそう言った。


「これを壊してしまった。」


 そう言って俺は壊した物を見せた。するとエイレンシアは目を見開き、


「こ、コレを・・・」


 身体を震わせた。顔も若干青白い。


「ごめんなさい。」


 俺は頭を下げる。


「ゆ〜君・・・これの大切さ・・・分かってるよね。」


 エイレンシアの声が冷たく響く。


「分かってる。それはエイレンシアの目標としてる人が使ってる眼鏡でその人を越えたときに使うって。」


 俺は頭を下げたまま言った。今じゃまともに顔を見れない。

俺が壊した物は古い眼鏡だ。俺が壊す前はレンズこそ傷ひとつ無いが、それ以外はシミになってたり傷だらけだった。

この眼鏡はエイレンシアの師匠にあたる人に与えられたらしい。その人は、ここ、交通班・研究所の元局長で、エイレンシアの上司でもあった。その人はエイレンシアの2倍の破天荒さと才能により、数々の発明品と、トラブルを開発していった。エイレンシアは部下として科学者として必死に手伝い、または技を盗んでいった。余談だが、死都ミルディンや黄泉のゲートを作ったことや、各地域のゲート(各地域のゲートは最初から存在していたものらしい)の改善もその人の功績だった。ところがある日、その人はこの職場に飽きたのか、辞表を出し、退職金をたんまりふんだくり、どこかに消えたらしい。エイレンシアはその直前にその人に遭遇し、たっぷり口喧嘩をしたあと、弟子なのだから私を越えてみせろと言い、眼鏡を渡したそうだ。それからエイレンシアは後を継ぎ、そして、いつの日かその人を見つけ、打ち負かしたらその眼鏡を使うと意気込んだ。

そして、俺はその証を壊してしまった。


「うん・・・そうだよ。だから・・・壊したら・・・」


 エイレンシアはそう呟いた後、俺の腕を掴み、


「ゆ〜君に罰を与えるよ。」


 と、今までの緩んだ顔つきではなく、今にも泣きそうだが、引き締まった顔だった。


「うん。」


 そうして俺はエイレンシアに連れられた。










 屍視点・・・


 神崎が連れられて、私は一人になってしまった。


「ところで・・・私はどうすればいいのだ?」


 言ってしまえば、私も共犯なのだろう。そのことを言えばいいのか、このまま黙ってればいいのか悩んだ。


「とりあえず、罰とやらを盗み聞きしてから決めるとしよう。」


 私はそう呟き、聴覚センサーの感度を引き上げた。すると・・・


「ぐぅ・・・あぁ。」


「ほらほら・・・頑張ってね、ゆ〜君。」


 グチャグチャ


 嫌な音が鳴り響く。


(む、意外とキツイ罰なのか?)


 私は引き続き盗み聞きを続けた。


「次は・・・コレ。」


 ザク!


「ガア!!」


「あ〜、あったかい・・・ゆ〜君はあったかいね〜・・・」


 ぐりぐり、グチュグチュ。


(突き刺した音とあったかい・・・まさか・・・血か!?)


 私は恐怖した。まさか主に血を見て興奮することを。


(か、神崎は生きているのか?)


 私は盗み聞きを続行。


「ねえゆ〜君、痛い?痛いよね?こんなに朱いの出してるから痛いよね?」


「はあ、はあ、ああ、痛いな。イカレた人間ならともかく・・・普通の一般人Aである俺にはすぎた痛みだ。」


 意外と神崎は冷静だった。


「じゃあ今度はコレね。」


「ちょっ!?それデカイ!」


 神崎は慌て出した。一体、どれほどの大きさなのか。そして、


 ザクン!!パシャ!


「!!!!!!」


 神崎は声のない悲鳴をあげる。


「アハハハハハハ!!ゆ〜君、すっごい出たね。やっぱりゆ〜君は面白いね!」


(いや、大丈夫なのか!?神崎もそうだが、主も!)


 主がここまで豹変するとは思わなかった。やはり、主はマッド・サイエンティストなのか。


「でも、これだけだとゆ〜君が可哀相だからね〜、よし。」


「ちょ!?エイレンシア!?何して・・・」


 グサッ!


「グッ!!」


「うっ!!」


 何故か二人のうめき声が聞こえた。


「ふふふふ・・・いたいね、でもこれでゆ〜君とおなじだよ?」


「エイレンシア、なに自分も刺してんだ・・・つっ!」


 グチャグチャグチャグチャグチャグチャグチャグチャグチャグチャ


「アハハハ、面白いね。どんどんあったかくなるよ、どんどんでてくるよ。」


「つぅっ!エイレンシア!コレ以上やったらお前、死ぬぞ!?」


(いや、お前も死ぬぞ!?)


「それもそうだね〜・・・じゃあ・・・はむ」


 ぴちゃ、くちゃ。じゅる、ずちゃ、


「んん・・・んぐ・・・あむ・・・ごくん・・・なめあいっこしようよ。」


「いやまず怪我をなおそうよ!?つうっ!!」


(そのまえに止めろよ!?貴様ら!?)


 私は二人の命を心配し、ドアノブに手をかけ、ドアを開けようとしたら、


 ピンポンパンポーン♪


『え〜、女の子をお姫様抱っこで誘拐し、イジめた神崎さ〜ん。社長が仕事だって言っています。至急、社長室に来て下さい。』


 ピンポンパンポーン♪


 放送がなった。というかあれでいいのか放送。まあそれより、


(た、助かった。これで二人は無事・・・)


 と、思ったら、


「ゆ〜君〜、放送なったね〜?、でも少しくらい遅れてもいいよね〜?私、もっとゆ〜君の朱いの飲みたいな〜。ゆ〜君も私の朱いの飲んでいいよ?」


「え、エイレンシア!俺は吸血鬼でも食人嗜好者でもないから傷治せ!!死ぬぞ!?マジで!?」


「だからその前に貴様が死ぬぞ!?早く止めろ!!」


 まだ続いていた。



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