第三十一話 死神は衝突する。
「なんで俺がイカれてるんだ?不良A。」
俺は不良Aにそう聞くと、
「あんな負担がかかるような技ばかり使っといて何ほざいていやがる。」
不良Aはすらすらと言った。どうやら自己修復があるみたいだ。相変わらず四肢は回復したようには見えないが・・・
「何言ってんだ?お前を半殺しにするためにベストな選択だろ?」
俺がそう言えば、
「嘘です!先輩、ぶっ飛ばしたら『ブリューナク』だけでよかったです!!」
「そうですね。仕留めるのでしたら槍投げるだけで充分ですね。」
「アタシだったら、反撃するヒマ与えないでボコボコにするよ〜」
外野がうるさかった。
「て、ワケだ。わかったか?カス。」
不良がまた罵倒した。
「ハイハイ。半殺しが目的だからねアレがイイの。ところで不良A、とっととクレアについて吐けや。」
俺がとっとと目的のクレアについて聞き出すことにすると、
「残念ね。それを聞く前にアンタは死ぬの。」
不意に女の声が聞こえたので後ろを振り向くと、
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!!!
情け容赦なく閃光が降り注いだ。
「チッ!」
俺はとっさに不良Aから離れたが、まだ閃光が俺を狙っている。
「ファーストエッジ、解放。クロノトリガー、発動!!」
俺は双剣を創り、加速し、閃光を避ける。
「ふー。お前ら大丈夫か?」
あれだけの閃光だきっとあいつらにも被害があると思って、ミリア達の方を見てみると、
「てっ!?なんでテメーら無傷というか一歩も動いてないんだよ!?」
ミリア達には閃光のせの字もなかった。
「いや、だって・・・」
「神崎だけですよ。」
「攻撃されてたの。」
3人はそんなことを言ってた。だから俺は閃光を放った方に向かって、
「ちょっとお!お前、俺になんか恨みでもあんの!?」
叫んでみると、
「あるわよ!!」
少女趣味な赤いドレスを着た少女がひょっこりが出てきた。
「不良Aを半殺しにしたことか!?」
それしかないと思って言って見ると、
「ハン!こんな不良、全裸で吊されたって平気よ!!」
「ふざけんな!!」
酷い言われ様に不良Aは吠えた。まあ、確かに『ふざけんな』と言いたいよね。
「だったら何だ?それ以外には無いぞ。・・・多分。」
微妙だったのは死霊の中に家族がいたかもしれないことだ。
「アンタには知る必要はないわ!」
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!
また閃光が降り注いだ。
「チッ!」
俺は『流れ読み』と『クロノトリガー』を使い、避け続ける。
「避けるな!!シャイン!アイスレイン!フレアボム!」
ドレス女(仮名)は理不尽なことを叫び、いろんな種類の魔術を放っている。
「避けなきゃ死ぬだろ!?」
俺は当然避け続ける。そして、
「ちょっとテメーら!!見てないで助けてくれ!!」
3人に助けを求めた。
「え〜。なんでよ〜?コレ神崎の問題でしょー」
「俺は無理ですよ。人のケンカには関わりたくないですよ。」
「わ、わわ私は無理ですよ!あんな人たちに戦いを挑むなんて。」
拒否された。
「いや、頼むから!俺も何で狙われなきゃいけないのか分からないんだって!」
俺はなんとか粘る。
「大丈夫ですよ。死んだら『黄泉』総出で葬式しますから。」
「安心して死んでねー」
バカップルには効果がなかった。
「先輩なら大丈夫です!頑張って下さい!」
「ミリア!!お前、後でいじめるからな!!」
ミリアにも見捨てられた。
「よそ見なんて随分余裕ね。」
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!
ドレス女はしつこく攻めてくる。
「ああ、くそ!!少し・・・・」
二丁拳銃を創り、
「黙ってろ!!」
ドン!ドン!ドン!
ドレス女に向かって撃った。しかし、
「ふん。」
カン!カン!カン!
ドレス女は障壁を作り銃弾を防いだ。
「チッ!やっぱ防がれたか・・・なら。」
俺はある程度のダメージを覚悟して、
「サードエッジ・・・解放。」
大技で一撃で倒すことにした。
「槍!シールド・・・最大展開!!」
ドレス女は俺の意図を察してか、障壁の強度を強めた。さらに、
「グレイブ!フレアレイン!ウインドクロウ!」
土の刺や火の粉の雨やら鎌鼬的な魔術で俺を妨害する。
「其は閃光の刃なり・・・」
俺はそれを無視して力を溜め続ける。もちろん、
ドドドド!!ゴオオオオオ!!ザザザザ!!
サッ!サッ!サッ!
痛そうなのである程度避けます。
「先輩!!ここは耐えるところです!!」
ミリアが無茶苦茶なことを言う。当たったら死ぬぞ絶対。まあ一難は去ったので俺は立ち止まって力を溜めると、
ドス!!
「ガハ!!」
トゲが刺さり、
パシャ。
吐血した。意識が飛びかけるが、
「ああああああ!!!!」
気力でねじ伏せ、
「ブリューナク!!」
光の矢になって突進する。
「くっ!」
ドレス女は一瞬怯むが、すぐに立て直し、やがて、
ドカアアーーーン!!
衝突する。
「グッ!アッ!」
俺は槍の握る力をより強め、
「くっ・・・アアアア!!!!」
ドレス女は障壁に魔力を込める。少しマズイ展開だ。
(以外と・・・硬い!このままじゃ・・・)
ピキビキ・・・バチッ・・・パン・・・
「ガア!!」
身体が持たない。『ブリューナク』は基本、突進技なので障壁などで防がれ衝突が長引けば、自分の閃光で自分へのダメージが大きくなる。しかし、退くに退けないので、
「あーだこーだ言っても始まらない。このまま駆け抜ける!」
さらに威力を上げる。
ギチキチギチキチギチキチギチキチギチキチ
衝突の際に出る音なのか、自分の身体が軋んでる音なのかもう分からない。そうしてる間にも、
「この!・・・いい加減、消えなさい!!」
ドレス女は片手に魔力を篭め始めた。障壁が消えた瞬間、そのまま俺を射抜くつもりだろう。
(防御の片手間に攻撃の準備!?どんだけコントロールに長けてんだよ!?)
もしかしたらドレス女はエマ以上に魔術に長けてるかもしれない。
(このままだと確実に死ぬな・・・仕方がない。あれやると俺もしばらく戦闘不能になるが、後のことはイアン達に任せよう。)
俺は覚悟を決め、
「セブンズエッジ・・・展開。」
羽根を創造した。
ギギギギギギギギギギ
ィィ!!!!
「痛つ!!」
前にも言ったとおり、複数の刃の創造、というよりそれの維持はどんな技よりも負担がかかる。今も俺の筋肉や神経は焼け付くような熱さと刃に貫かれるような鋭い痛みで蝕まれている。具体的な対策もない。最早これは気合いでなんとかするしかない。
「全ての羽根を飛行に使い・・・」
羽根は俺の後ろにくっつき、
「全速・・・前進!!」
キイイイィィィィィィンンンン!!!!
加速した。それはつまり『ブリューナク』の威力も上がることにもなる。
「なっ!?」
ドレス女は驚く。当然だ。いきなり威力が跳ね上がったのだから。そして
「チッ!!」
今まで溜めていた魔力を全て障壁に廻す。
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」
俺は力の限り叫び、突っ込んだ。そしてついに、
ピキピキ・・・
障壁にヒビが入り、
パリィィン!!
割れた。
「貫けええぇーー!!」
俺はそのまま突進した。