第二十八話 死神はゲームをする。
社長室より・・・
俺はようやく新人イジメとも思われる仕事をこなし、遠野さんにその報告をしにきた。
「ハイ、これが今日の報告です。」
「そうか。ご苦労。これでミリアにも溜まってる仕事を押し付けられるな。」
遠野さんはいつものニヤケ顔で言った。
「あ、それとミリアの異名なんですが、勝手に『桜』ってしちゃいました。」
「おいおい。人の楽しみを奪うなよ。にしても、『桜』ねえ。」
ミリアの異名について言うと、遠野さんは考え込んだ。
「どうしました?まさか、センスないとか思ってます?」
「いや、お前にそんな人並みのネーミングセンスがあったのに驚いた。」
「さりげなくバカにされたよ。ちくしょー。」
気分が悪くなったふりをして帰ろうとすると、
「ああ、そうだ。お前、リーのところに行って、これ渡してくれないか?」
遠野さん引き止められた。その手にはゲームと手紙があった。
「部長の?なに渡すんですか?」
俺はそれを見てみると、
ゲームには『発狂都市』と書かれていて、手紙には、感想が書かれていた。
「仕事してくださいよ・・・」
俺はそうぼやき、社長室から出た。
部長室より・・・
仕方なく俺は部長にゲームと感想を渡しに行った。部長の部屋は、死神たちの部屋よりも広い。どのくらいの広さかというと、充分な戦闘が出来るくらい広い。
「やれやれ。相変わらず広いな。もうコレ、一軒家並だぞ。」
俺がそう呟やくと、
「ニャー。(ホント)」
何となく連れて来たノルンが鳴いた。
「さて、とっとと渡しにいくか。」
俺は部長を探しに歩き出した。
「たくっ。遠野さんもさ、借りたゲームくらい自分で返せよな。」
「ニャン。(そうね)」
そんな遠野さんの愚痴を言ってると、
ガン!・・・キン!・・・ブン!・・・ブン!
金属音が聞こえた。
「ニャ。(悠志)」
「ああ。明らかに誰かやり合ってんな。」
1人は間違いなく部長だ。もう1人を確認するため音のなる方へ行くと、
「アアアアアァァァァ!!!!!」
ガン!キン!ガン!キン!カン!カン!カン!カン!カン!ガン!ガキン!ギン!
「・・・・・・・」
部長とルカが戦ってました。
「なにやってんだ?あいつら・・・」
「ニャ(ホント)」
俺達がほうけている間も戦いは続く。
「があああ!!!!」
ブン!ブン!ブン!ブン!ブン!ブン!ブン!
ルカはまさに鬼のような、荒々しく鎌を振るい、
「・・・・・・」
ヒュン、ヒュン、ヒュン、ヒュン、ヒュン、ヒュン、カン!カン!カン!
部長は全長75㎝で、刀身が幅広い両刃の剣を使って、ルカの攻撃を防ぎ、必要最低限の動きで躱していく。
「この分だとすぐ終わるから少し待つか。」
そう言った瞬間、
「・・・終わりだ・・・」
部長の姿が消え、
「くっ!!」
チャキ。
ルカの首に剣が突き付けられていた。
「む・・・悠志か・・・余に何の用だ?・・・」
「っと、いきなり呼ばないで下さいよ部長。心臓に悪い。」
俺は部長にここに来た理由を言った。
「・・・そうか・・・
一夜がゲームを返しにお前をよこしたのか・・・それくらい・・・自分で来ればいいのに・・・」
「全くです。ハイ、これがそのゲームと感想。で、ルカ。久しぶりなんだけど、なんでお前部長と戦ってたんだ?」
俺は久しぶりに会ったルカに戦った理由を聞いた。
「ああ?部長が身体が鈍いから少し付き合えと頼まれたんだよ。」
ルカはいつもの不機嫌そうな顔で言った。すると部長が、
「・・・悠志・・・余とゲームをするぞ・・・」
と、言ってきた。
「別にいいですけど、何やるんですか?」
ホラーゲームは勘弁してほしい。
「・・・コレ・・・」
部長はゲーム棚(部長はゲーマーなので、かなり大きく、かなりのゲームがある。色夢はたまに部長からゲームを借りてる)の中から一つ出し、俺に見せた。
『学園ロマン』
パッケージを見ると、完璧にギャルゲーだった。
「・・・・(どうする!?俺!?)」
悩んだ末、結局やらされた。ゲームをやってる間、ノルンの視線が冷たいのは少し傷ついた。
2時間後・・・
「・・・む、こういう類は・・・好まぬか・・・」
部長は真剣に考え込んでいた。
「こんな人数でギャルゲーやろうというやつはいないでしょ!!」
恥ずかしいことこの上ない。
「なんだかんだいって、結構、のめり込んでたよな。俺たち。」
ルカは冷静に言った。
「あの女。あのまま続けていたら刺されてた。」
何故か人になってるノルンはこう呟いた。
「・・・では・・・次のをやるか・・・」
部長はそう言って、ゲーム棚をあさっていった。
「次はなにやるんですか〜?」
「ギャルゲーは勘弁してほしい。」
「あの選択をしたら、監禁されていたかも。」
みんな思い思いに言った。そして部長はゲームを持ってきて、
「・・・次は・・・格ゲー・・・」
今度はまともだった。
1時間後・・・
格ゲーをやって1時間が経ち、ようやくやり方や使いやすいキャラを見つけ、対戦をやることにした。先ずはルカと部長だ。
「部長!?そのコンボどうやってんすか!?」
ルカは叫ぶことしかできなかった。
「・・・日頃の・・・特訓・・・」
部長はルカを永久にボコり続ける。顔は見えないが若干嬉しそうだ。
「鬼だなこの人。」
「そうね。」
次は俺とノルン。
「う〜ん。上手くいかないな〜」
「また失敗した。」
俺とノルンは自分の動きに満足しなかった。
「イヤ、それだけできれは充分だ。」
「・・・基本コンボは完璧・・・1時間で出来れば・・・上出来・・・」
ルカたちはそう言った。
「いや〜。もう少しつなげると思うんだけどな〜。」
「弱、中、中、中、強。浮かせ、ジャンプ、弱中強。」
それから俺達はコンボの研究をしていた。
1時間後・・・
ゲームを終え、部長と別れて思ったことは一つ。
「やっぱ・・・ゲームはいいな。」
「悠志。リーからRPGをもらったけど出来る?」
「ゲーム機がないから買うか・・・」
こう見えて死神になってからずっと貯めている。
「連れてって。」
俺はノルンを連れて、ゲーム機を買うために街に出かけた。あと、遠野さんに仕事に支障をだすなと釘をさされた。