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死神の物語  作者: 笠井
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第二十七話 死神は後輩と仕事をする。

 あの縫いぐるみの夢を見た後、目が覚めると、いつもの天井があった。


(起きたには、起きたが・・・まだ眠い。)


 俺はそう考えながら時計を見ると目覚ましが鳴る10分前だった。


(そろそろ起きないとな。)


 俺は時の流れの無情さを感じながら起き、


「ノルン。起きろ〜」


 ノルンを起こした。ノルンはあくびをしながら伸びをし、


「ニャ〜〜〜(おはよう、悠志。」


 と、挨拶をしたので、


「ああ、おはよう、ノルン。」


 笑いながらノルンを撫でた。実にいい朝だと思っていると、


『社長さんになんて言うの〜』


 不意に、あの縫いぐるみの言葉が浮かび、少しいい気分が失せた。










 社長室より・・・


 思い出してしまったものはしょうがないので、朝食にトリ蕎麦を食べ、身支度をしてから社長室に行った。


「おはようございます。社長。」


 俺はいつものようにイスに座っている遠野さんに挨拶をした。


「おはよう。神崎。お前にしては今日は早いな。ククッ。今日は血の雨でも降ってくるかな?」


 遠野さんはいつものニヤケ顔で物騒なことを言った。


「人が朝早く来ただけでそんな天変地異かホラーな展開が起こるほど世界は脆くないですよ。」


 俺はとりあえずそうツッコンだ。


「ククッ。冗談だ。それで?昨日の報告しないで寝た神崎君は今日はどんな用事かな?」


 やっぱりこの人根に持ってました。


「その報告と今日の仕事についてですよ。・・・スイマセン。私が悪かったです。だから今にも襲い掛かりそうな目で見ないでください(汗)」


 普通に対応しようとしたが、獲物を見る目には敵わなかった。遠野さんはすぐに笑い、


「よろしい。では、めぼしいやつはいたのか?」


 と、言ってきた。


「めぼしいやつは・・・ミリアっていうやつと、個人的にはあまりオススメできないんですけどカルマの2人です。」


 俺は自分の考えを言った。


「そうか・・・カルマってやつはどんなやつだ?」


「まあ、プライド高くて、叫ぶのが好きな男です。あと、俺に敵意を持ってます。実力は色夢のちょい下です。」


「ミリアっていうのは?」


「随分前に、死霊の軍団から助けた女の子です。実力はあると思います。」


 それを聞いた後、


「ふ〜ん。じゃあ戦い方は?」


 遠野さんは続けて聞いてきた。


「カルマは剣で戦います。見たことないですが、カルマは自分のことエリートだって言いましたので魔術もそれなりに使えるでしょう。そこんとこは魔術を教えてる人に聞いて下さい。」


 魔術を使わせる前に、ボコボコにしたのでこう言った。ちなみに俺は魔術をあまり使わない(というより不向きなので)ので、治癒魔術はそれなりに、火と氷の魔術、そして分身魔術を中途半端にしか使えない。


「じゃあ、ミリアは?」


 遠野さんはミリアについて聞いてきた。


「ミリアは鎌で戦います。技術はそれなりにあります。あと、言いにくいんですが・・・クレアと同じで何本でも鎌を出せるそうです。」


 俺はミリアの戦い方を言ったら、


「クレアと?それは凄いな。」


 遠野さんは笑って言った。


「まあ、これが2人の内容です。」


 俺がそう言うと、


「分かった。じゃあ、今日の仕事は、お前、ミリアとこの仕事をしろ。」


 遠野さんは紙を渡してきた。その紙を読むと、


『1.16番ゲート地域の死霊狩り。


2.4番ゲート地域の調査


3.死人のガイド。


4.伊織の訓練。


20.2番ゲート地域の死霊狩り


 以上の仕事をやれ。』


「オーバーワークにもほどがあるわあ!!」


 そんなに新人を過労死させたいかと思い。叫んだ。


「じゃ、行ってこい。」


「しかも、反論の余地なし!?」


 それから俺は説得を続けたが全く聞いてくれなかった。










 放送室前より・・・


 ピンポンパンポーン。


『黒夢のミリアさーん。いますぐ放送室前に来て下さーい。』


 ピンポンパンポーン。


 俺はとりあえずミリアを呼ぶために放送を使った。最近、俺の呼び出しにしか使わない放送だが、今日は何故か声の張りがよかった。そう考えていること5分。


「せ、先輩!どうしてこんなところに!?」


 肝心のミリアがきた。


「よお。お前を呼んだのは今日の仕事に俺と組むことになったからだ。」


 俺がそう言うと、


「え!?あ、アハハ、じ、冗談ですよね(汗)?こ、黒夢である私が、色夢の先輩と組むなんて・・・」


 ミリアはかなり動揺しまくってた。なんか俺と組むのが嫌なのかと思うと、なんか傷ついた。


「事情により、お前は今日から色夢になった。」


 俺はそう言うと、


「え?・・・えええええぇぇぇーーーーーーーーーーーーー!!!!」


 廊下一帯にミリアの叫び声が響いた。










 10分後・・・


「ハア、ハア、ハア、ハア。」


 一通り叫んだミリアは虫の息だった。


「大丈夫?医療班のとこ行く?」


 心配した俺はそう言うと、


「だ、だいじょうぶです。そ、それより私が色夢になったってどういうことですか?」


「社長がね、人員不足のために昇級試験の前にいいやついたらとっとと色夢にさせようと考えたわけで。昨日の訓練あったろ?それでお前が選ばれたわけ。」


 俺がそう言うと、


「え、え?そんな、わ、私、そんな器じゃないです!あ、あの時は先輩がいてくれたからで・・・」


 ミリアはまだ動揺している。まあ、いきなり色夢になれと言われたんだ。驚かないほうがよっぽど異常だ。


「まあ、テンパるのはそのくらいにしてくれ。ホイ、これがお前の初仕事。」


 俺はミリアに仕事の内容を書かれているあの紙を渡した。ミリアは渡された紙を見るなり、段々、青白くなり、


「オーバーワークにも程がありますーーーー!!!!」


 俺と同じ反応を示した。


「なんですか!?これは!?これがウワサの新人イジメですか!?」


 ミリアは叫びまくったが、


「もう社長がそう決めちまったんだ。知ってるだろ?俺達色夢は変人集団だって、ま、俺は普通の一般人だがな。」


「ハイ・・・」


 俺の一声で叫ぶのを諦めた。



































 16番ゲート地域より・・・


「はあ!!」


 ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!


「ぴぎゃああああぁぁぁぁ!!!!」


「やあ!!」


 ザン!


「ギャッ!!」


 16番ゲート地域の死霊狩りを始めて15分。ようやく死霊は全滅したところで深呼吸をした。


「ふうーー。これで一つ目の仕事が終わったな。生きてるかー?ミリア?」


 俺はミリアのほうを見てみると、


「ハア、ハア、ハア、だ、だいじょうぶです。」


 息切れしているが目立った外傷はなかった。


「そうか。」


 俺は笑って、


「じゃあ、次いこうか。」


 次の仕事に向かうことにした。







































 修練場より・・・


 調査やらガイドやらを終わらせ次の仕事は、


「遅いぞ、神崎。ついでにミリア。もっと早くこい。」


 不機嫌な伊織と特訓だ。


「あのな伊織。こっちは過労死するくらいの労働してんだ。少しはやさしくしてくれ。」


「む、いいじゃないか。お前と戦うのが楽しみなんだから。」


「い、伊織さんと普通に話してる先輩って・・・」


 こんな会話したあと、


「それじゃ、早く始めるぞ!!ついでにミリアも!」


「ファーストカード・・・展開。ああ!後の仕事があるんでね。とっとと終わらせる!!」


「な、なんで私まで〜〜!!」


 ガン!キン!カン!カン!カン!ガキン!ギン!ガン!キン!カン!






 こんな戦いが2時間も続いた。




































 『黄泉』カウンセリングセンターより・・・


「聞いてくださいよ死神さん!!うちの旦那いつも帰りが遅いんですよ!!これって浮気なんでしょうか!?」


「そういうことはカウンセリングじゃなくて弁護士か探偵の方に相談しましょう。あと、こういうのは旦那さんにちゃんと言いましょう。」


「分かりました!!ありがとうございました!!」


 仕事のなかにカウンセリングがあったので仕方なくやることにした。


「せ、先輩。いいんですか?あれで。」


 ミリアは不安そうな顔で見てきた。


「仕方ないだろ。俺は普通の一般人だぞ?人の心理なんざ分からない。だから俺は愚痴の吐き出し口にしかなれない。」


 俺はミリアにそう言った。


「というか、仕事多いですね。私、普通、仕事は2つ、3つかと思いました。」


「黒夢ならそれくらいだよ。色夢になると一気に仕事が多くなるうえに、変人集団の仲間入りだ。」


「う、それはイヤですね(汗)。で、でも先輩みたいな人と一緒だと安心します。」


 ミリアは笑って言った。

「そうかい。じゃ、次いくか。」


 俺は次の仕事に向かうとすると、


「ハイ!」


 ミリアは笑って答えた。











































 『黄泉』メインゲート前より・・・


 ようやく仕事が終わり、会社のメインゲートの前でため息をつく。


「はあ〜。ようやく終わったな。」


「はい・・・死ぬかと思いました・・・。先輩はいつもこんなことを?」


「まあ、今日の3つ4つ減らしたかんじがいつもだな。」


「てことは、いつも15個くらいの仕事をこなしてるんですね。さすが先輩です。」


 そんな他愛がない会話し、


「んじゃ、お疲れさん。」


「ハイ、ありがとうございました。あ、先輩!ちょっと聞いていいですか?」


 と、ミリアは言った。


「ん?なんだ?」


「私、色夢になったんですよね?」


「そうじゃないと、俺と組んでないだろ?」


「じ、じゃあ!私にも異名をもらえるんですか!?」


 と、ミリアは言った。まあ確かに色夢になったら遠野さんに異名を名付けられる。遠野さんが言うには、


「意味は全くないが、異名あったほうがカッコイイだろ?」


 と、完全に遊びだ。


「異名ねえ・・・遠野さんから何も言われてないな。異名がどうかしたのか?」


 俺はミリアが異名に興味を持つ理由が分からなかった。


「え!?り、理由は・・・せ、先輩みたいな異名を持っていれば、か、カッコイイなあなんて思ったからで・・・」


 ミリアは顔を赤くし、俯きながら答えた。恥ずかしかったのだろう。俺はその姿に何となくかわいいと感じてしまった。そのためか、


「じゃあ俺が今、異名をつけようか?」


 俺はそんなことを言ってしまった。


「ほ、ホントですか!?じ、じゃあ、お願いします!!」


 ミリアはそう言って、何かを受け止める態勢になった。


(いや、そんなことしなくても・・・)


 俺はそう思いながら、ミリアの異名を考えた。


(容姿から考えてみるか・・・ミリアは、髪はショートで・・・今は、黒夢の制服だけど、かわいい女子高生って感じだな・・・って、俺はどこの変態だ!?だいたいなんで容姿で異名を考えてんだ!?そうじゃなくて・・・)


 俺は不意に、


「桜・・・」


 ミリアを見て、こう呟いた。だから・・・


「決めた。お前の異名は『桜』だ。」


 ミリアの異名をそれに決めた。


「桜・・・ですか?なんでですか?」


 ミリアは首を傾げた。


「お前を見て、何となく桜が出てきた。お前の鎌も花みたいな形してるし。イヤならまた・・・」


 考えるよと言い終わるまえに、


「い、いいです!!か、かわいらしくてステキです!!」


 すごく喜んでた。


「そうか。喜んでくれて嬉しいよ。じゃ、お疲れ、ミリア改め、『桜』」


「ハイ!ありがとうございました!!」


 ミリアは花のように綺麗な笑顔で言った。



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