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死神の物語  作者: 笠井
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第二十五話 死神は訓練の指導をする。Part3

「それまで。」


 伊織の声が聞こえた瞬間、修練場は騒がしくなった。


「『刃』スゲー!」


「いきなり消えたかと思えば、カルマはボコボコにされてるしな。」


「アイツ、『刃』のこと最弱って、言ってたけど・・・」


「最弱には見えねーよ。」


 黒夢たちが騒いでいると、


「次!そこにいるジョン!前に出ろ!」


 伊織が次のやつを指名した。


「え!?俺!?というか、俺・・・」


 ジョンと呼ばれた男はなぜか動揺した。


「つべこべ言うな!!とっととボコられてこい!!」


「は、ハイ!」


 伊織はそれを無視した。仕方なく前にでたジョンに、


「お前、本名は?」


「俺は田中です!ジョンではありません!」


 田中は心の底から叫んだ。


「伊織・・・名前で呼んであげろよ・・・」


 俺はまだ手にある剣を構えながら、田中に同情した。










 2時間後・・・


「よし!30分休憩する!」


 2時間の間、半分の黒夢たちと戦っていた。伊織の声が響いたてすぐ俺はトイレに向かい、


「ゲボッ!!ガバッ!!」


 吐いた。


「やっぱり、無理してたんだな。」


 吐いてる最中に伊織に話し掛けられた。


「伊織・・・男子トイレだぞ。」


「誰もいないからいいだろ。それより無理をするな。コッチが心配する。」


「カルマに圧倒的なところを見せつけないと気が済まなかったからな。しかし、『霧切りきりぎりまい』はやりすぎた。」


 俺は吐き気が無くなり少し楽になった。


「『霧切り舞』・・・刀の特性である自分の身体能力を極限まで上げて、高速で敵を切り刻む技。言ったよな?私がそれを没にした理由。」


 伊織は怒りの篭った目で睨んできた。どうやら本当に心配だったらしい。


「『クロノ・トリガー』みたいにな魔術的なものではないし、身体能力上げるだけで、肉体が丈夫になったわけじゃない。

そのままいけば、身体にダメージが大きい。」


 俺がそう言うと、伊織はますます機嫌が悪くなった。


「分かってるなら、なんで使った。あんなバカをボコるのに、あんな無茶な技を使う必要があるのか?」


「いや、そんなに怒るなよ。ああでもしないと、あのバカ、色夢になれそうにないし。」


 カルマのことはどうでもいいが、人員不足は俺にも迷惑かかるし、カルマは実力はまだ伸びるので、あの性格なおして、是非、俺の仕事を減らしてほしい。


「これ終わったら、残れ。一緒に医療班のとこに行くぞ。」


 そう言って伊織は男子トイレから出た。


「なんで一緒なんだ?」


 俺はこの疑問を口にしたが、答えてくれる人はいなかった。










 2時間後・・・


「うらあ!!」


 ブン!ガキン!


「うわあ!!」


「それまで。」


 休憩が終わり、俺は黒夢たちの訓練を再開した。


(今、思うと、コレ、かなりしんどいな・・・)


 かれこれ5時間くらい戦っていた。さすがに疲れる。早く終わってくれと願ったら、


「次で最後だな。」


 願いが通じたようだ。


「最後のやつ、出ろ。」


「は、ハイ!」


 伊織が呼ぶと、すぐに出て来た。


「最後の方はどちらさんだ・・・って、アンタか。」


「は、ハイ!お、お久しぶりです。先輩!」


 最後の相手は、以前、助けた黒夢だった。


「ミリアと知り合いなのか?」


 伊織が尋ねてきたので、


「ああ、前の仕事の合間にちょっとな。」


 俺はこう答えた。ついでにミリアの名前も覚えておいた。


「ふ〜ん。そうかい。あいつは意外と強いぞ。」


 伊織がそう言うならそうなのだろう。そう考えてたら、伊織はすぐに、


「始め。」


 訓練が開始された。伊織の声と共に、


「やあっ!!」


 ミリアは俺に、


 ブン!


 切り掛かった。


「おっと!」


 俺はそれを避け、距離をとり、


「ファーストエッジ・・・展開。」


 双剣を創った後、ミリアを見た。


「鎌、使うんだな。」


 ミリアの手には鎌が握られていた。鎌はルカやクレアみたいな物ではなく、花みたいな形をしていてなんともかわいらしい。


「何か問題でも?好きな武器を使ってもいいじゃないですか。」


 ミリアは少し不機嫌になった。


「いやいや、悪いわけじゃない。ちょっとイヤなやつを思い出しただけだ。」


 そう言って、俺はミリアに切り掛かる。


 ブン!


 ミリアはすぐに鎌で受け止めた。俺はもう片方の剣で切り付ける。


 ブン!ガン!


 しかし、また防がれる。俺は諦めずに双剣を振るい続ける。


 キン!カン!ガン!キン!ギン!ガン!キン!ギン!ガン!ガキン!カン!カン!カン!ガン!キン!ギン!ガン!カン!


「手数で押しても無駄です!!」


 ミリアは防ぎ続けた。


「いい腕してんじゃん。」


 俺はそう言って、距離をとる。


「来ないのなら、こちらから!!」


 ブン!ブン!ブン!


 ミリアは鎌で俺に切り掛かる。


「ナメんな!!」


 俺は鎌を避け、そこから出た隙で、


 ガン!


 鎌の柄の部分を双剣でたたき付け、


 バキン!


 折った。


(終わりだ!)


 俺はミリアの首を狙って切り掛かる。


 ブン!


 剣はミリアの首に、


 ガン!


 届かなかった。なぜなら、


「どっから出した。」


「知りませんでした?私、何本でも鎌が出せるんです。」


 壊したはずの鎌に防がれてたからだ。


「姿形は似てないのに、なんでアイツのことを思い出すんだろうかね?〜」


 俺はつい最近負けたクレアを思い出していた。


「アイツって誰ですか?」


「気にすんな。ただの・・・独り言だよ!!」


 ガキィン!


 そんな言い合いをし、俺は距離をとる。


「さっきから距離とってばっかりですね。どうしたんですか?先輩。」


 ミリアはにこやかに聞いてきた。野郎ならムカつくのでぶん殴りたいが女性なので遠慮した。


「なんでもねえよ!!」


 俺はミリアに切り掛かる。


「手数で押しても無駄ですよ!」


 ガン!


 ミリアはそれを防ぎ、叫んだ。


「人生はチャレンジあるのみって聞かなかったか?」


 ガン!カン!カン!


「いや、もう人生終わってるでしょ!?」


 ガキン!ガキン!ガキン!


「第二の人生ということで。」


 ブン!ブン!ブン!


「私の時だけ、無駄に口が回りますね。余裕ですか?」


 ガン!キン!ギン!ブン!


「っと!まあ、そんな怖い顔すんなよ。」


 俺はまた距離をとる。ミリアはニヤリと笑い、


「先輩?なんで別の武器を使わないんですか?」


 そんなことを言ってきた。


「お前が1番、よく知ってんじゃないの?」


 俺は相俟に言った。


「そうですか。先輩は生前、普通の人だったんですよね?」


 ミリアは俺に切り掛かる。


「ちっ!」


 俺はそれを、


 ガキン!


 防いだ。


「普通の人がなんで色夢になれたのかずっと不思議でした!!」


 ブン!ガキン!


 ミリアは鎌を振るい続けながら叫んだ。


「先輩の仕事を見て!ずっと天才だと思っていました!!」


 ガン!キン!ギン!


「お前も俺の仕事を見てたんかい(汗)」


 コイツラはどんだけ俺に熱中してるのかと思ったら、


「先輩、1時間で大体の戦闘を終えてますね?」


 ミリアはそう俺に言った。


「ああ。確かにな。」


 俺はそう答えた。


「先輩の戦い方、少し変だったんです。全ての戦闘で短時間で終わらせてた。どんな戦いでも・・・」


 ガン!


 ミリアは俺と鍔ぜり合いをしながら言った。


「まあ、常にスピードを求めているからね。」


 こんな状況でもスラスラと答える自分に感心した。


「天才だから出来るんだと思ってた。だけど先輩は違うって言った。」


「偶然でてきた『流れ読み』と伊織のスパルタとエイレンシアのトラブル処理のおかげでこうなったからな。」


 ガン!ブン!


 一旦、鍔ぜり合いを解き、襲ってきたミリアの鎌をぎりぎりで避けた。


「だから、考えたんです。一回だけでいいから先輩に勝ちたいから!」


 ミリアはそう叫んだ。


「ミ、ミリアさん?俺、あなたに何かしましたか?」


 なんか俺が悪人みたいな雰囲気になった。


「い、いえ!う、恨みがあるわけじゃなくて、も、目標が先輩なのでちょっと勝ちたいな〜なんて思っているだけです!!」


 ミリアは顔を真っ赤にして言ったが、すぐに、


「コホン。い、いいですか?」


「いいもなにも、お前が勝手に暴走しただけだろ?」


 かかってくるならとっととこいと思う。


「では先輩が弱ってるうちに・・・」


 ミリアは鎌を構えた。


「なんだ・・・バレてたのか。」


 俺は双剣を構えた。


「そうです。先輩は持久戦は出来ないとわかりました。その証拠に、多種類の武器を使って戦う先輩が、今は双剣しか使ってない。先輩。あなたは持久戦は出来ませんよね。」


「当たり。持久戦やると身体がもたないと医者のお墨付きだ。だけどな・・・」


 俺は深呼吸をし、


(イメージ・・・スタート。)


 誰にも、悟られないように念じ、勝つ方法を組み立て、


「アイツに勝つために、アイツ意外に負けるわけにはいかないんだよ。」


 俺はそう言った瞬間、ミリアに切り掛かった。


 ガン!


「だからって、手数では勝てないと・・・」


 ミリアが言い終わる前に、


「『クロノ・トリガー』・・・発動。」


 加速させ、


 ヒュン!ヒュン!ヒュン!ヒュン!ヒュン!ヒュン!ヒュン!ヒュン!


 剣を振るい続ける。


「なっ!?」


 ミリアは驚きながらも、


 ガン!キン!ギン!ガン!キン!ギン!ガン!カン!カン!カン!カン!カン!カン!カン!カン!カン!カン!カン!


 ミリアはかろうじて防ぎ続けた。


「うらあ!!」


 バキン!


 俺はまた鎌の柄を壊した。


「だから私は何本でも鎌を出せると・・・」


 またミリアが言い終わる前に、


 ブン!


 剣を振る。


「くっ!!」


 ミリアは鎌を出し、防ごうとする。普通ならまたここから切り合いが始まるが、


「ミラージュ、スタート。六花りっか。」


 そう俺が呟いた瞬間。


 ガン!ドカ!ドカ!ドカ!ドカ!ドカ!


「えっ?」


 6方向の斬撃のうち5つがミリアの身体に当たり、


「でらっ!!」


 ドカ!


「きゃっ!!」


 怯んだ隙にミリアを蹴飛ばした。


「まだま・・・!?」


 俺はミリアが立ち上がろうとする前に、ミリアの首筋に双剣を押し当て、


「終わりだ。」


 と言った。


「先輩・・・分身魔術が出来るなんてズルいです・・・」


 ミリアは不機嫌そうに言った。


「仕方ないだろ。疲れてるし。負けたくないし。あ、分身魔術は手しか出来ないからあしからず。」


 俺はこれでやっと寝れると安心した。



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