第二十四話 死神は訓練の指導をする。Part2
エリート様であるカルマをぶちのめせと命令を受けた俺はとりあえず、そのカルマの前に立った。
「んじゃま、エリート様の実力を拝見させてもらうか。」
「ケガしないうちに止めた方がいいんじゃないかな。」
いきなり生意気になった。イラっときたので、
「ファーストエッジ・・・展開。」
双剣を創造(もちろん、刃引きしている。)し、とっとと始めることにした。
「では、開始!!」
伊織の声が聞こえたと同時にカルマに切り掛かった。
ガン!
カルマは持っている剣で防いだ。カルマの持っている剣は形は西洋の両刃の剣で柄に魔力が宿った宝石が埋め込まれていてなんとも高そうな剣だ。
「いくよ。」
カルマはそう言って、俺に駆け寄り、
ブン!
剣を横一文字に振る。
(お、意外と速い。構えはそれなり。)
ガン!
俺はそれを防ぎ、
「んじゃ、俺の番だ。」
俺は左手にある剣で切る。
カン!
防がれたならすぐに右手の剣で切る。
ブン!
カルマはすぐに後ろに退いた。
(反応はいいな。)
そんなこと考えながら、カルマに駆け寄り、
ブン!ブン!ブン!ブン!ブン!
手数を増やしてみると、
「遅すぎるね!」
ガン!カン!キン!ガキン!ブン!ブン!
余裕で防がれた。
(筋はいいが・・・エリート様にしては普通だな。)
戦い方が普通だった。たしかに、黒夢よりは幾分は強いが、色夢クラスではない。
「手ぇ抜いてんのか?それとも、エリート様は本気を出すまでもないと思ってんのか?」
俺が挑発してみると、
「最弱の色夢にはこれくらいが充分だと思ったけど、よく頑張るね。」
カルマは見下した目で俺を見ながら言った。
「そうか・・・よ!!」
俺はカルマに切り掛かる。
「遅すぎるというのが・・・」
カルマはいきなり俺の隣に現れ、
「分からないのかい!?」
ヒュン!
剣を振った。このままでは当たるだろうと思うが、
ヒュン!
カルマの剣は空を切り、
「誰が・・・」
俺は、
「おせぇんだよ!?」
ザン!ザン!ザン!ザン!ザン!
大剣を創り、『乱撃・五閃』をかました。
「ぐう!!」
ザザザザザー
カルマはなんとか、全ての斬撃をかろうじて防ぎ、堪えていた。
「あらら。意外としぶといな、お前。ぶっ飛んだと思った。」
『乱撃・五閃』喰らって踏ん張る黒夢がいるとは思わなかった。
「あ、当たり前だ!!僕がこんなので倒れると思ったのかい!?さすが最弱の色夢!!なんておめでたいやつだ。」
カルマは叫びだした。
(俺、アイツになにかしたかな?)
なぜか知らないが、俺かカルマに嫌われているらしい。
「君みたいな最弱に僕の本気を見せてやるよ!?」
そう言った瞬間、カルマの魔力が上がり始めた。
「いくよ!!せいぜい醜く頑張れよ!!」
ヒュン!ヒュン!ヒュン!
カルマの剣がいきなり襲い掛かった。
「ファーストエッジ・・・展開。」
俺はすぐに双剣を創り、
カン!カン!カン!
防いだ。すぐに俺も攻めにいった。
「サードエッジ・・・展開。」
槍を創り、
「シッ!」
ヒュン!ヒュン!ヒュン!
3回突けば、
「ハッ!!」
カン!カン!カン!
防がれる。
「フィフスエッジ・・・解放。」
二丁拳銃(弾はゴム弾)で、
ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!
撃ち抜く。
「なめないでくれる。」
カルマはムダに軽やかに動き、
ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュン
全部避けた。だけど、
「当たれ!!」
この銃の特性は『絶対射撃』。俺が叫べば、弾の軌道はカルマに向かう。普通はこのままカルマに当たるが、
「なめるなと・・・」
あいつは余裕で、
「言ってるだろうが!!」
全ての弾丸を剣で弾いた。『絶対射撃』は『対象者のどこでもいいのでとにかく当たる。』なので、弾はもうアイツには襲い掛からない。
「さすが最弱。とことん小細工が好きらしい。」
カルマは笑っていた。それも人がムカつく笑い方で、
「さっきから、最弱、最弱と、うるさいな〜」
いい加減、聞き飽きた。するとカルマは、
「最弱が最弱と言って何が悪い!」
「いちいち何?俺に恨みでもあんの?」
俺が訳を聞こうとしたら、
「そうだ!悠志が最弱だといつ決めた!!」
伊織が便乗した。
「フン!10種類の武器が使えるからごまかしているだろうけど、その実力は黒夢レベルじゃないか!いつもお前の戦いと他の色夢の戦いを比較した。お前の双剣や槍や銃の腕はもちろん、魔術すらも劣っている!そんなやつがなんで色夢なんかにいる!?」
カルマはべらべらと叫んでいた。
「よく息が続くな〜。んなもんとっくに知ってるよ。だから今も伊織に戦い方を教えてもらってるし、経験を積んでる。というか、お前がなんでそんなに力んでんだよ。」
俺はアイツに対抗して、ローテンションで言った。
「お前のせいで、僕は色夢の昇進試験に受けられなかったんだ!!なぜだ!?そこにいるのは僕だ!!僕なんだ!!」
カルマは俺に憎しみに満ちた目で睨んできた。
「受けられなかったってアンタ・・・昇進試験は自主参加だろ?推薦なんて聞いたことないぞ?」
死神が推薦で昇進できるなら、ルカと同期になれるはずがない。
「ああそうさ!ちゃんと参加を要求したさ!!なのに・・・僕は参加出来なかった!!そしてお前みたいな半端なやつが色夢になった!!」
カルマはよりいっそう叫んだ。
「なあ、伊織。アイツ、試験を受けられなかったんだって。なんか知ってる?」
「多分、いろいろな仕事をサボったからだろ?昇進試験の参加条件は『200の数の死霊を輪廻に帰し、3年間そのクラスで働くこと。』だからな。お前の場合はデビューから他の死神たちより多くの仕事をしてきたし、任期は免除にしておいたらしい。」
と、伊織は言った。
「今度こそ僕は色夢になる!だがその前に・・・」
チャキ。
「神崎 悠志!!・・・
僕は、貴様を殺す!!お前みたいな最弱が僕の前に立つな!!!!」
カルマは俺に剣を向け、言い放った。
「やれやれ。へんなもんに好かれたな。まあいいや・・・コッチも・・・」
俺はため息をひとつはき、
「ファーストカード・・・展開。」
カードを握り潰し、刀を創った。そして、今まで黙ってた黒夢たちが、
「カルマ・・・スゲー叫んでたな。」
「でも昇進試験の合格者の人数に制限なかっわよね?」
「ああ、人員不足だからって、話聞いてるうちにコレ逆恨みだよね?」
「カルマ、ダサいね〜。強いけど。」
言いたい放題言ってた。
(カルマのヤツ・・・外野に手ぇ出さなければいいが。)
そう考えてると、
「死ねーー!!神崎ィィィー!!!!」
全く聞こえてないらしい。俺もとっとと、
「最弱なのは認めるが・・・」
少し刀を振り回し、
「最弱、連呼されて黙ってるほど人間できてねえんだよ。」
決めにかかることにした。
伊織視点・・・
「死ねーー!!神崎ィィィーー!!!!」
カルマの戯れ言聞いてるうちに胸糞が悪くなった。アイツは何も分かってない。
(悠志は、最弱なんかじゃない。初めて見た時はダメダメだと思ったけど、試験でリッチを倒したり、私との訓練・・・という名のストレス発散を耐え切ったりしたんだ。強くなるために、『最強』の死神に復讐するために、アイツは必死になって色夢になったんだ。)
エリートを連呼するカルマとは違う。悠志は確かに、才能は私たちよりないかもしれない。
(悠志自身は自分が強いとは思っていない。だって、『最強』に勝たないといけないし、悠志は力を求めている。だから・・・)
悠志は強いのだと。
ヒュン、ヒュン。
物思いにふけっていると、悠志が刀を少し振り回した。
「最弱なのは認めるが・・・」
いつも悠志は自分が普通の一般人だと言っていた。だから、
「最弱、連呼されて黙ってるほど人間出来てねえんだよ。」
悠志は少し怒っていた。その瞬間、
ヒュン!
悠志は消えていた。
神崎 悠志視点・・・
(さてと、伊織に没にされてから使わなかったけど、このバカには効くだろう。)
俺は誰にも聞こえない声で、
「『霧』(きり)・・・」
と、言った瞬間、
ヒュン。
周りからは消えたみたいに見えるが違う。ただ単純に、
ガン!
「ガッ!?」
速くなっただけ。
(いらついてたんであまり加減できねえぞ!!)
ドカ!ドカ!ドカ!ドカ!ドカ!ドカ!ドカ!ドカ!ドカ!ドカ!ドカ!ドカ!ドカ!ドカ!ドカ!ドカ!ドカ!ドカ!ドカ!ドカ!ドカ!ドカ!ドカ!ドカ!ドカ!ドカ!ドカ!ドカ!ドカ!ドカ!ドカ!ドカ!ドカ!ドカ!ドカ!ドカ!ドカ!ドカ!ドカ!ドカ!ドカ!ドカ!ドカ!ドカ!ドカ!ドカ!ドカ!ドカ!ドカ!ドカ!ドカ!ドカ!ドカ!ドカ!ドカ!ドカ!ドカ!ドカ!
「ガッ!ケバッ!グハッ!」
まさにリンチ。俺はカルマを伊織の要求通り(口実です。ムカついてたのでしたかっただけです。)にボコボコにする。
「『切り舞』(ぎりまい)!!」
ガン!ドン!
「へぶぅ!!」
最後に俺はカルマは床にたたき付けた。
「俺はお前と違ってエリート様じゃねえ。だから、くだらないことでキレたりするし、さっきも言ったが、最弱なのは認める。だけどな、テメーが俺を語るな。人の道にいちゃもんつけんじゃねえよ。」
いちゃもんつけられて、アイツと戦う機会を逃してたまるか。