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死神の物語  作者: 笠井
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第二十三話 死神は訓練の指導をする。

 社長室より・・・


 放送で呼ばれた俺はすぐに社長室に行ってみたら、遠野さんがいつものように座っていた。


「やあ、神崎。もう少し早く来てほしいな。」


「何か用ですか?」


 呼ばれた理由を聞くと、


「ああ、仕事だ。今回は、黒夢の鍛練に付き合ってくれ。」


 遠野さんはそう言った。


「黒夢の?合同練習なんてありましたっけ?」


 俺が黒夢の時はそんなものなかった気がする。


「合同練習は、年に4・5回くらいだからな。お前は半年で色夢になったんだ。知らないのは無理もない。」


 遠野さんはいつものニヤケ顔で言った。


「さいですか・・・でも、なんで俺なんですか?普通、鍛練なら伊織が嫌々やってるでしょ?」


 伊織は鍛練の師範係みたいなものもやっている。本人は、


「弱いヤツなんかと戦えるか。」


 と、言って、そのイライラをよく俺にぶつけている。


「いや、今回は色々と事情があってな。実は、今回の鍛練で色夢に相応しいヤツがいるか調べてほしいんだ。」


 と、遠野さんは言った。


「なんでまた。色夢になるには昇進試験に合格しなければいけないんでしょ?」


 死神がより上のクラスに入るためには、昇進試験を受けなければならない。内容は実技試験のみ、試験官と戦い、勝つか、能力が認められたら合格できる。交通班や医療班はそれの他に筆記試験もある。白夢から黒夢の昇進はそれほど難しくないが、色夢になるための昇進試験は受かる者はあまりいない。


「そうなんだが・・・最近というかいつもなんだが、人員不足なのは言ってるだろ?だから今回は異例として才能あるやつは今のうちに色夢にして仕事を押し付けようと思ったわけ。」


 遠野さんはそう言って、ため息をついた。


「分かりましたよ。でも、合同練習のスケジュールなんて知りませんよ。」


 俺はそのことを質問すると、


「そこは伊織に任せてある。伊織に言えば、スケジュールについて教えてくれるはずだ。」


「了解。では、行ってきま〜す。」


 俺はそれを聞いて、修練場に向かった。










 修練場より・・・


 修練場に着いた俺は訓練のスケジュールを知るために伊織を探した。


「伊織〜。いるか〜」


 とりあえず、伊織を呼んでみると、


「悠志か。早くこい。スケジュールを教える。」


 すぐに伊織を見つけることができた。


「で?何やんだ?」


 俺がスケジュールについて聞くと、


「昇進試験と同じことをやる。だから遠慮はいらないぞ。」


 随分シンプルな合同練習だった。


「合同練習じゃねえだろ。それ。」


「黒夢たちには色夢との実戦訓練って言っておいた。お前は多くの武器を使うからな。黒夢たちにもいい勉強になるだろ。」


 伊織はそう言うが、俺は切り札であるカードの武器しか誇れるものがない。他の武器の技術は黒夢よりも少し上くらいで、見本になるほどでもない。


「なあ、伊織。お前なら分かるだろうけど、俺は・・・」


 俺がそのことを言おうとすると、


「分かってる。カードの武器以外は自信ないって言うんだろ?謙遜するな。毎日、私と戦って、技術は身についてるはずだ。」


 言い終わる前に、伊織に励まされた。俺は不意に、


(まいったな。)


 これでは何も言えない。ここまで期待されてるのだ。頑張らないわけには、


「いかないな。」


 ぼやいた。


「ほら。黒夢たちが来た。始めるよ。」


 伊織はそう言って、俺をひっぱっていた。










 黒夢たちが集まり、さあ始めようとした時、


「おい、あれって・・・」


「間違いないよ。『刃』の神崎だ。」


「あの半年で色夢になったあの天才がなんで?」


 黒夢たちが騒ぎ始めた。


(そんなにスゴイのか?・・・俺?)


 自分は伊織やルカのようなスゴイやつだとは思ってないのでこの反応に疑問に思ってたら、


「黙れお前ら。5秒以内に黙んなかったら、ここにいる悠志を斬る。」


 と、伊織はそう言って俺の首筋に刀を当てられた。


(黙ってくれ!?頼むから!そして伊織!刀を下ろせ!!)


 まだ死にたくないので大声で叫びたかったが、刀を当てられているからか声が出ない。俺の想いが通じたのか、黒夢たちは、


「は、ハイ!!」


 すぐに黙ってくれた。すると伊織は刀を下ろし、


「よ〜し。これから訓練を開始する!内容はとっても簡単!そこにいる神崎と1対1で戦え!以上だ!」


 訓練の説明をした。シンプルすぎて説明が必要なのかと疑問に思う。


「エッ、『刃』と戦え!?」


「あの天才と戦うのか。」


「勝てる気がしないわ!」


 また騒ぎだした。


「お〜い。訓練なんだから、別に勝たなくてもいいんだが・・・」


 とりあえず、俺がそう言うと、


「で、でも勝たないと、伊織さんに(汗)・・・」


 1人の黒夢が話しかけた。


「伊織がどうかしたのか?」


「伊織さんに、シゴかれます(涙)」


「訓練なんだから、諦めろ。」


 俺は非情だと思うが、そう言った(その黒夢は真っ白な灰になってた)。


(というか、伊織。お前、こいつらに何した?)


 俺はひそかに思っていた。


「さて!始めるぞ・・・てっ、1人いないぞ?」


 伊織は訓練を始めようとしたら、1人いないことに気付いた(俺は初参加なのでよく知らないが・・・)。


「ああ、カルマなら、まだ部屋にいるんじゃないでしょうか?」


 1人の黒夢がその足りない1人について話した。


「なあ、伊織。カルマって?」


 俺はカルマについて聞いた。伊織はいかにも嫌そうな顔をして、


「いきなり黒夢に成り上がった。エリート様だ。いつも訓練をサボるから実力は知らないが、自分は色夢クラスにいる人間だと言ってるらしい。」


 吐き捨てるように言った。どうやら、ものすごくエラそうな奴らしい。


「ふ〜ん。エリート様ねえ。見てみたいな。そいつ。」


 ムカつくやつならぶん殴りたいがあえて口にしない。


「本気か?性格が凄くイヤなやつだぞ?話してるだけでムカムカするヤツだぞ?」


「伊織。少し落ち着こう(汗)。」


 伊織を宥めていると、


「これはこれは。『刃』さんじゃないですか。」


 不意に声をかけられた。


「え?」


 俺がその声の先を見てみると、


「初めまして、僕の名前はカルマです。黒夢一のエリートです。」


 カルマはそう言って、礼をした。


(なるほどね。コイツがエリート様か。)


 カルマという男の容姿はまあいい方だろう。髪は藍色で、顔は整ってる。しかし、性格のほうはプライド高そうだ。


「カルマ!また遅刻か!?自分勝手なのはいい加減にしろ!!」


 伊織は今にも切り掛かりそうな勢いで叫んだ。しかし、カルマは、


「僕みたいな、エリートにはこんなヤツらと同じところで訓練したくないのですよ。」


 軽くあしらった。黒夢たちもいらついていた。どうやら、コイツは友達はいないみたいだ。


「カルマ。最初にお前が出ろ。」


 伊織がカルマを指名した。


「『刃』と戦え・・・ですか。分かりました。」


 カルマはニヤつきながら言った。俺が体をならしていると、


「アイツをボコボコにしろ。」


 伊織が物騒なことを言った。


「やれやれ。」


 訓練なのに殺気だってる状況にため息をついた。どうやら本格的にカルマという人間が嫌いらしい。



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