第二十話 死神は人形と出会う
マフィアのボス視点
何がどうなってるのだ。
そんなことを思ってしまう。当たり前だ。たった2人の死神が私が集めた部下を次々と殺していった。
「ギャアアアアアア!!」
まただ。私の部下はそこらへんの死霊とは訳が違う。リビングであろうと戦えばリッチだろうと倒すことが出来るほどのプロの集団だ。そいつらが何故たった2人に殲滅されるのだろうか。
「何故?何故なんだ!?」
知らないうちに声を上げて叫んでいた。誰もいないので答える者もいないと思ったら、
「「理由を聞きたいか?」」
2人の死神が私の隣に立っていた。
「お前の部下は強いかもしれない。だけどな、」
ガキの姿をした死神がそう言って、
「実力を出させなければこの通り簡単に仕留められる。」
不覚にも納得してしまった。私達とこの2人では、
格が違うと。
そう考えていると、タバコを加えた死神が、
「さて、そろそろ・・・」
そう言えば、ガキの死神はああと答え、
「「ジ・エンドだ」」
ドン!ザン!
私の額を打ち抜き、首を切り裂いた。だけど、
(ただ・・・で・・・は・・・死なん!頼・・・むぞ・・・し・・・か・・・ば・・・ね)
そこから私の意識は消えた。
神崎 悠志視点
「さて、これで終わりだな。坂塚さんはどうします?ってもういないし!!」
仕事が終わって早く帰りたいのは分かるが『空間魔術』使ってでも奥さんに早く会いたいかと思っていたら、1枚の紙が置いてあったのに気付いた。それを拾ってみると何か書いてあったので読み上げると、
『神崎君へ、僕はもう帰るけど、神崎君も早く帰ったほうがいい。殲滅してるときに変な人形があってね。下手に壊さないほうがいいと思ってそのままだけど、ここのボスが死んだと同時に起動するかもしれない。・・・・坂塚より』
こう書かれていた。俺は気になるがやばそうなのですぐに帰るとすると、
ドカーン!!
「なっ!?」
どこかで爆発したような音が聞こえた。俺は音が聞こえた方向を見ると、
ガシャン・・・ガシャン・・・ガシャン・・・ガシャン・・・
何かがいた。形は人型、コートを着ていて、仮面を付けていると言えば、人間と変わりないくらいの精巧なロボットだった。手に持っているのは、柄の長い剣だった。
「坂塚さん・・・壊してから帰ってくれよ。」
俺は持っている双剣を構えた。するとロボットは、
「・・・ギギ・・・ワタシハ・・・屍・・・任務遂行ノタメ・・・貴様ヲ・・・殺ス。」
殺る気満々だった。
「仇討ち・・・か?」
機械にそんな感情はないと思うが一応聞いてみた。
「ワタシノ任務ハ・・・コノ塔ヲオソッタ・・・
貴様ラヲ殺スコト・・・マスターノ最期ノ任務・・・完遂サセル」
どうやら俺と坂塚さんを殺さないかぎりは止まらないらしい。
「あいにく、はいそうですかで死ぬ人間じゃないんでね。抵抗するがいいか?」
俺は相変わらずバカなことを言った。
「キニスルナ・・・抵抗ハ当タリ前ダ・・・」
意外と親切なロボットだった。
「そうかい・・・なら。」
ガキン!
「テメーに破壊を押し付ける!!」
その言葉を最後に戦いが始まった。
ガン!キン!カン!カン!カン!ブン!ガキン!ドン!
互いの武器が火花を出す。
「・・・・」
シュン!シュン!シュン!シュン!シュン!シュン!シュン!シュン!シュン!シュン!
屍は柄の長い剣を槍のように使っている。
(腕、心臓、頭、腹、足腕、足、頭、心臓、腹、)
『流れ読み』があればこんな攻撃は難無く避けられる。
「ギギ・・・ナラバ。」
ヒュン!
屍は剣を突き出した。
(胸に一突きだけ?何考えてやがる。)
俺は剣を弾こうとしたら、
スカッ
「なっ!?」
擦り抜けた。とっさにもう1つの剣で弾くが、少しかすってしまった。
「どんな突きだよそれ?1撃目と同じスピードの突きを2撃同時に出すなんて。」
放った瞬間、同じ箇所、同じスピードで、連続して突く。確かにこれなら『流れ読み』を持っていても弾くかれることもないし、命中率も高い。だけど、それを続ければいつか身体が壊れてしまう。まさに機械ならではの技だった。
「コレヲ避ケルトハナ・・・驚イタ。」
屍はそう言っているが、驚くという感情があるのか疑問だった。
(スピードは異常、技もかなりの腕だ。確かにリッチよりも大変だな。)
俺がそう考えていると、屍は剣を構えていた。
「ワタシノ剣ハ無敵ダ・・・ダカラ・・・諦メロ。」
屍はそう言った。俺はその言葉に、
「諦めろ?」
屍の言葉はカンに障った。諦めたら終わりだ。
「屍・・・俺は諦めないぞ。」
諦めたら俺は俺ではなくなる。諦めたら今までのことが無駄になる。諦めたら約束は果たせない。諦めたら・・・
「諦めたら・・・アイツに会えない!絶対に諦めない!!」
カチャン
何かが割れる音がした。
「イメージ・・・スタート。」
イメージを高めて屍を倒す方法を考える。
(生半可な攻撃じゃダメだ。強い攻撃を連発するくらいの勢いがないとダメだ。方法は・・・ある。負担がデカイから使いたくはないが制限があるからカードは使えないから仕方がない。)
敵を倒す方法は思い付いた。あとは・・・
「やるだけだ・・・」
俺は双剣を捨て深呼吸をし、
「セブンズエッジ・・・解放。」
と呟き、
ダン!
屍に向かって走った。
「・・・ギギ!」
屍も走り出す。俺は双剣を出し、
「『疾風』は!!」
ザン!ザン!ザン!
「ガッ!!」
あらかじめ『クロノトリガー』でスピードを上げて、首と胴を最速に任せて切り付ける。さらに大剣で、
ザン!ザン!ザン!ザン!ザン!・・・ドン!
「ギガッ!!」
「『怒涛』に潰され!!」
『乱撃・五閃』でぶっ飛ばす。そして俺は槍を出し、
「『閃光』は!!」
ドオオオオォォォン!!
「ガフッ!!」
『ブリューナク・投擲版』(連携しやすくするために)で閃光を投げ付け、
「『日輪』に焦がれ!!」
ゴオオオォォォ。
炎を纏ったダブルセイバーを投げ付ける。
「ギッ!」
ガギギギギギギギ!!
屍は剣で防ぐが、
バキン!・・・ザン!
「ガアアアァァァ!!」
剣が折れ、切り刻まれる。俺は動くヒマを与えないように二丁拳銃を出し、
「『彗星』は!!」
ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!
ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!
容赦なく弾は威力の高い神弾で屍を撃ち抜く。さらに仕上げのために、
「『束縛』され!!」
ジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラ
「ガッ!!」
空間の歪みから出る鎖で屍を束縛する。そして、
「天使は!!」
ヘル・エンジェルの羽根を右手に集め大砲を形作り、
「『破壊』する!!」
ドオオオオオオオオオォォォォォン!!!!
打ち出した。全てが終わると屍は跡形もなく消えていた。
この連携は、カードが使えないときに強い敵と戦うことを考えた結果、
『クロノトリガー』の加速攻撃から始まり、『乱撃・五閃』、『ブリューナク』、『アグニス』、
神弾を大量に使う『ジャッジメント』、『束縛』、そして最後にヘル・エンジェルで最強の技『イレイザー』の順で使い、
反撃させないで一気に仕留める連携技。
「名前は・・・『悠久死神舞踊』にでもするか。」
そう考えた後、屍がいた跡を見て、
「悪いな。諦めるわけにはいかないんだ。」
もう存在しない屍に言い残した。