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死神の物語  作者: 笠井
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第十八話 死神は療養中(リハビリ)

 女に殺されそうになったところで目が覚めた。時計を見たら2時間しか経っていなかった。


「嫌な夢だな。おい。」


 感想を言ってみた。さあ帰ろうとしたところを脂ギッシュな上司に連行され、月を眺めてたら、女にバッサリ斬られそうになる夢が最高だと言うヤツがいたら精神病院にブチ込んでやろう。


(しかし、やっぱりあの夢が頭に残るな〜。三途の川に落ちた時の夢以来、全然見てなかったのに。あ〜あ。どうせ夢ならノルンと遊ぶ夢を見させてくれよ〜)


 なんて思っていると、


「やあ、ボーイ!また目が覚めたのかい?ヒマなら私の『マッスル講座』のDVDを見せてあげようかい?」


「いらねぇよ筋肉バカ。というよりメシまだ〜?」


 不快な笑顔で不快なDVDをチラつかせたマイケルに、軽く応えた。


「私は食堂の従業員じゃないのだが・・・それより君に面会したいって言ってる人がいるがどうするんだい?」


「面会?俺の見舞いに来る物好きがいるもんだな。」


 エイレンシアは確実に来るかもしれないが、その時はいつもいきなりなのでエイレンシアではないだろう。


「じゃあ、呼んどくよ。入っていいよ。」


 マイケルが呼んだと同時に出て来た。


「何だ。元気じゃないか。」


 伊織が入って来た。


「なあ・・・今日、俺・・・何かしたか?(汗)」


 何故か刀とノルンを担いで。


「ヒマだから、遊びにきた。」


「普通は見舞いにきたと言うんじゃないか?」


「知るか。オラ、元気あるなら少し付き合え。さもなくば、コイツを三味線にしてやる。」


 そう言いながら、ノルンに刀を向けた。いわゆる人質(猫質?)というやつだった。


「ニャ〜〜〜(助けて)」


 ノルンも本気で怖がっていた。


「伊織・・・死ぬ覚悟は出来てるんだろな。」


 俺は伊織に久しぶりに殺意を抱いた。


「へー。殺気・・・出せるんだな。ホールに行くぞ。」


 俺は伊織に着いて行こうとしたら、


「ゴハッ!!」


 パシャ。


 血を吐いた。それもかなりの量。


「ちょっとおおおぉぉ!!!!ボーイ!?何してるんだい!?一日で治るって言ったけど、君重傷なんだよ!!伊織も!!何、怪我人連れていこうとしてんの!?」


 戻ってきたマイケルに怒鳴られた。


「エッ!え、え〜と。な、何?ゆ、ゆ、悠志の身体、そ、そんなにヤバイのか!?」


 伊織もかなり慌てていた。結構、可愛かった。


「ちょ・・・ま・・・てよ。俺、歩いた・・・だけで・・・血が・・・溢れたり・・・吐血する・・・くらい・・・の・・・じゅ!・・・ゲハッ!!ゴホッ!!ゴホッ!!」


 パシャ。ドクドク。ボタタ。


 喋るだけで血がかなりでた。第二の死が目の前にあるかもしれない。


「確かに、一日で治るとは言ったが、それは私の腕によって出来ることでの話だよ。ボーイには言ったけど、今、ボーイの身体はボロボロなんだ。歩いただけで輪廻に還るくらいに重傷なんだよ!」


 マイケルは叫ぶように言った。伊織は珍しく落ち込んだ様子で、


「悪かった・・・何かあったらすぐに呼んでくれ。治癒魔術なら私も使えるから・・・」


 そう言って、走って行ってしまった。


「あ・・・の・・・さ?何・・・この・・・空気?」


 なんか喋るだけで輪廻への階段を上っていく感覚だった。そして、空気が重い。


「これじゃ・・・ボーイの面会は止めた方がいいね。」


 マイケルは、かなり真剣に言って俺の治療を行った。










 翌日・・・


「マイケル・・・俺は今、生きていることに感動を覚えた。」


「まあ、あんだけ血を吐いて、Hellを見たなら感動するのは当たり前だけどね・・・(汗)エイレンシアじゃないけど君の身体を調べてみたいよ。」


 マイケルも俺の身体に呆れていた。


「あれ?1日で治るって言ってたのに、何で俺の身体を調べたいんだ?」


 俺がそう聞くと、


「あれだけ血を吐いて、塞いでおいた傷口が開いてたら、もう1日かかるよ。なのに君は1日で完治したんだ。身体の全てをバラして調べてみたいよ。」


 マイケルも信じられないような顔で言った。


「止めてくれ・・・(汗)まだクレアに復讐してないし・・・何より、そんなスプラッターな現場に被害者として立ち会いたくない。」


 おまけに筋肉質な化け物になりそうだし。


「まあ、冗談はそこまでにして。退院おめでとう。お大事に!」


 マイケルは不快なくらい爽やかな笑顔で見送った。










 修練場より


 俺はとりあえず、伊織に完治したことを知らせに修練場に行った。普通なら別に行かなくてもいい気はしたが、あの時の騒動のおかげで行くことにした(去り際の伊織の姿を見たら、本気で空気が重かった。)。


「あれ?誰もいないな。いつもは此処で特訓してるんだけど・・・」


 とりあえず修練場をくまなく探してみると。


「あ、」


 すみっこにいた。


「悠志の身体が治りますように・・・悠志の身体が治りますように・・・悠志の身体が治りますように・・・悠志の身体が治りますように・・・悠志の身体が治りますように・・・悠志の身体が治りますように・・・ブツブツ」


 なんかやってた。


(いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや!!何やってんだよ!?こんな呪詛聞いてたら逆効果になるだろ〜が!!)


 心配してくれるのは嬉しいが・・・かなり怖い。だがこのままだと話が進まないので俺は声をかけることにした。


「伊織、心配してくれるのは嬉しいが、その謎の呪詛は災いが起きそうだから止めてくれ。」


 俺はそう声をかけたら、伊織はすぐに振り向き、


「ゆ、悠志・・・か?いや、あんなに血を吐いていたし、治療にまだかかるだろうし、もしかして幽霊!?」


「いや、俺らとっくに幽霊だし。」


「じ、じゃあアレか!?私の願いを叶えてくれる。妖精か!?」


「こんなデカイ妖精がいたら見てみた・・・あ、ノルンは精霊の類か。」


「お願いだ。悠志の怪我を治してくれ!」


「本人だ!!ほ、ん、に、ん!!」


 このままだと本気で妖精になってしまうので大声で叫んだ。


「ほ、本当に悠志なんだな?」


 伊織は縋るように俺に駆け寄った。


「当たり前だ!まだやることあるのに死んでたまるか。」


 どんだけ動揺してるんだと俺は思った。


「あ、あのさ。悠志。ね、猫を脅してゴメンね。」


「お前、ホントに伊織か?」


 あの暴力女(社長談)と言われているあの伊織が、謎の儀式に手を染めたり、素直に謝るところなんて見たことなかった。


「ほ、本人だ!というか、な、何の用だ!?」


 と言って、俺に刀を向けた。


「何って。そりゃ復帰を知らせにきたんだけど。(うん。どこか違うけど伊織だ。)」


 というより刀向けられているのに平然としている俺は一体何だろう。


「そ、そうか。だったら稽古するぞ!ほら、武器出せ!」


「結局そうなるのか・・・いいぜ。こっちも強くなりたいしな。」


 このままではアイツに勝てないので、いつか伊織に稽古をつけて貰おうとしたがまさか怪我が治ったすぐになるとは思ってなかった。俺は、


「オールエッジ・・・解放。」


「!!」


 俺が全力を出したことに伊織は驚いていた。


「全力・・・か。」


 伊織はそう呟き、


「上等!!」


 俺に切り掛かった。










 キン!カン!ガン!


 今ので何合目だろうか。そんなことを考えるヒマもなく、気にすることを諦めるくらいの時間が過ぎた。最初は俺は双剣、伊織はいつもの刀で打ち合っていた。しかし段々、俺は大剣、槍、二丁拳銃、と武器が変わっていった。


 ヒュン!


 伊織の刀が俺の胴を切り裂こうと襲い掛かる。


 ガキン!


 俺は銃で防ぎ、


 ドン!ドン!ドン!


 空いている銃で撃つ。だけど伊織はすぐに引いて避けた。そして避けたすぐに切り掛かる。俺は双剣を出して、


「クロノトリガー・・・発動。」


 加速させて立ち向かう。


 カン!カン!カン!カン!カン!カン!カン!カン!カン!カン!カン!カン!カン!カン!カン!カン!カン!カン!カン!カン!カン!カン!カン!カン!カン!カン!カン!カン!カン!カン!カン!カン!カン!


 長い打ち合いだった。俺は一旦引く。そして、


「シックスエッジ・・・解放。」


 俺がそう呟くと、


 ジャラジャラジャラジャラ。


 空間が歪み鎖が出てくる。


「チッ!」


 伊織は舌打ちをし、襲い掛かる鎖を刀で弾いて防いだ。だけど鎖は無限に出せる。


 ガシッ!


「チッ!」


 ついに鎖は伊織を捕らえた。俺はすぐにダブルセイバーを出して、


「アグニス!」


 伊織に向かって投げ付ける。


 ドン!


 炎を纏ったダブルセイバーは衝突と同時に爆発した。普通なら死ぬかもしれないが、


「縛りが甘い。そんなんじゃ・・・」


 伊織には鎖を使っても、


「逃げられる!!」


 意味がない。


 ヒュン!


 伊織の刀が俺の背を狙う。俺は、


「セブンスエッジ・・・解放。」


 ガキィィィン!!


 防いだ。










 伊織視点


「羽根も使うのか?珍しいな。全部出せって言っても、出さなかったくせに。」


 私はニヤついていた。


「リハビリついでに調整をしてみようかなって思ってね。」


 悠志はなんでもないように言った。

 そんな悠志の背中には羽根があった。羽根は全部で10枚。羽根の1枚1枚には禍々しい紋様が刻み込まれていて、1枚1枚が紅く輝いている。

これを見た死霊や死神にはこう名付けられた(本人は渋々その名前を使っている)。


「ヘル・エンジェル・・・」


 破壊するために生み出された天使のようだった。










 神崎 悠志視点


「いくぞ。上手く避けろよ。」


 俺は10枚の羽根のうち、4枚を撃ち出した。


「くっ!!」


 カン!ガキン!キン!ブン!ブン!ガン!


 伊織は刀で羽根を防ぐ。


「5番から8番・・・ショットモード・・・9、10番・・・待機。」


 俺は次の攻撃手段を選択し、


「スタート!!」


 ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!


 実行する。


「チッ!」


 伊織は舌打ちをし、ギリギリで避ける。


「1番から8番・・・切りきざ・・・「いちいち言わないと出来ないのか?」うわっ!!」


 指示が言い終わる前に伊織が迫って来た。俺は2枚の羽根を使い、


 タン。


 飛んで避けた。


「卑怯だ〜。降りてこい〜。」


 伊織はそう非難するが(なぜか棒読み)、


「いや、特性だから仕方ないだろ・・・」


 ヘル・エンジェルは10枚の羽根を操作して敵を殲滅する『刃』だ。込められている想いも『破壊』で、そのためには手段や良心を選ばない造りになっている。


(だけど操作が難しくて接近戦には向かないんだよな〜)


 10枚の羽根を1枚1枚操作するので手間がかかりることが欠点だ。その改善法として考えた結果が2つある。1つは、近距離は諦めて、遠距離で戦うことと、


(1番から3番は左手に・・・4番から6番は右手に・・・そして残りは飛行に使用。)


 飛行能力を頼りにヒット&アウェイで戦うことだ。


「飛行・・・開始!!」


 一気に伊織に詰め寄り、


 ヒュン。


 左手で攻撃したが、


 ガン!


 防がれる。俺は勢いを使って伊織から離れる。


(なら・・・スピードを上げる!・・・スピード・・・上昇開始。)


 俺はスピードを上げて伊織に切り掛かる。伊織もそれに合わせて応戦する。


 ビュン!カン!ビュン!カン!ビュン!カン!ビュン!カン!


 そんな攻防が続き、伊織はついに、


「いらついた・・・」


 不機嫌に呟いた。


「お前が空飛んでんだったら、私も空を飛んでやる。」


 そう言って伊織は深呼吸をし、


「『空渡り(そらわたり)』」


 タン。


 呟いたと同時に跳びはねた。普通なら地面に足がつく。だけど、


 トン。


「・・・・どうやってんの?それ。」


 伊織は空中に浮くというありえない現象を実現させた。


「説明がメンドイ・・・いくぞ。」


 タッタッタッタッタ


 そう言ったと同時に空中を走っていった。俺はすぐに攻めた。


 カン!キン!カン!ガキン!キン!


 何合か打ち合ったところで俺は伊織の胴を薙ぎ払う。


 ヒュン。


 しかし、伊織は後ろに飛んで避けた。


 タン!


 なぜか後ろに引いた直後に、壁があったかのように空気を踏み付け、


 タン!タン!タン!


 空気の壁を跳びはねながら俺の首を狙った。

「くっ!」


 あまりの出来事に反応が少し遅れ、

 ガン!・・・・ドン!


 ぶっ飛ばされた。起き上がろうとしたら、


 カチャ


「終わりだ。」


 刀を突き付けられていた。

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