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死神の物語  作者: 笠井
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第十五話 死神は少女を見る。

「はあ、はあ、はあ。」


 ビギリ、ビキビキ。


「がっ!!くっ、かっ・・・ハっ!!」


 フードを倒した反動は大きく、俺はその痛みに堪えていた。


(『乱撃五閃』、『二式・乱撃十閃』に『ブリューナク』・・・か。威力があって隙が少なく連携がとれる技を使ってみたが・・・肉体に負担がかかる技ばっかだな〜おい。)


 『ブリューナク』は自分が光の矢になり、敵を貫く技だ。意外と魔力を使うし、言ってしまえばただの特攻なので、カウンターを喰らわないようにかなりの神経を使う。


(1番の負担は・・・やっぱ大剣の創造か。)


 俺は多くの武器を創り、戦うスタイルだが、ある条件を満たさないかぎり一度に複数の武器を創造すると、『ブリューナク』や『乱撃五閃』よりも負担がかかる。元々、俺は他の色夢たちと違って普通の一般人だ。身体能力は劣っているし、魔力の総量も、どの色夢より低いかもしれない。『流れ読み』や伊織との特訓、エイレンシアの魔術指南がなければ、今ここには立っていないだろう。


「肉体の負担は治癒魔術をかければ問題ないな。魔力は・・・まだ結構残ってるな。」


 俺は治癒魔術をかけながら、とっくにフードを倒しているルカを探した。


「おーい!ルカー!」


 と、叫んでみれば、


「何だよ?」


 ルカはすぐに来た。


「そっちはすぐに片付いたのか?」


「ああ、3秒もかからなかった。」


 ルカはつまらなそうに言った。


「てーか。お前、時間がかかりすぎだ。ヒマでヒマでしょうがなかったぞ。」


 不機嫌な顔で続けて言った。


「わかってるよ。さすがに、反動がなんだ言ってられないしな。帰ったら、伊織と特訓してみるよ。」


 俺にも反省するところがあるので素直に言った。


「たくっ、とっとと帰ろうぜ。あのゲームをクリアしたいしな。」


 ルカはそう言ってゲートに向かった。


「何だよ?そのゲームは?」


 俺もゲームが好きなのでなんのゲームをやっているか気になった。するとルカは、


「『発狂都市』だ。内容はお前の嫌いなホラーだな。」


 イヤな笑顔で答えた。


「わかった。頼むからそのイヤな笑顔は止めようぜ(汗)」


 なんかイヤな予感がしたので話を打ち切った。










 だからだろう。










「まあいいや。早く帰るぞ。」


「ああ今行・・・・・・・・・く。」










 ずっと待っていた。










「ん?どうした?遠くなんか見て?」


 ルカの声なんて聞こえない。俺はただ見ていた。










 この時がくるのをずっと待っていた。








「見つけた・・・」


 あの長い銀の髪、白い肌。そしてあの顔。










 あの女を見つけることが出来た。










 俺はフードと戦う前のカードを取り出し、


「ファーストカード・・・解放。」


 カードを握り潰したと同時に走りだした。その間に潰したカードはガラスのように砕け散り、破片は左手に集まり、刀ができた。俺はあの女にできた刀を、


 ヒュン!


 振り下ろした。それをあの女は


 カン!


 楽々に鎌を出して防いだ。そしてコイツは


「ご機嫌よう。久しぶりね。」


 最初に出会った笑顔で応えた。


「ふっ!」


 俺は後ろに跳んだ。


「ようやく・・・ようやく見つけたぞ。・・・・・クレア!」


 何故か知らないが俺も知らないうちに笑っていた。


「名前・・・名乗ったっけ?」


 クレアは首を傾げた。


「名乗ってねえな。名前を知ったのは、社長に聞いてからだ。」


 俺はそう答えた。


「だよね。でも、貴方の名前は知ってるわ。・・・神崎 悠志・・・『水月』・・・」


「名乗った覚えはないぞ。それに『水月』なんて異名・・・死霊のやつらに言われた覚えもない。」


 俺がそう聞くと、


「貴方を知らない死霊はいないわ。ここ半年で色夢になり、多くの死霊を輪廻に還した死神。でも、その前から知ってた。貴方が普通の生活を送っていた日からね。」


 クレアは可笑しそうに笑って答えた。


「そうかい。おしゃべりはもういいだろ?コッチはテメーを斬りたくてうずうずしてんだ。」


 俺は身体をほぐすために持っていた刀を振り回した。


「なんでよ?もう少し話しましょう?せっかく逢えたんだから。」


 クレアは頬を少し膨らませて答えた。

「悪いが、俺はお前を倒すために何ヶ月も探していた。だからかな?さっきから血が騒いでんだよ。」


 今まで血が止まってると感じるくらい騒いでいる。


「そうなの?実は私も楽しくて胸が張り裂けそうなの。もっと話したかったけどお互い無理そうね。」


 クレアは妖しく笑った。


「だったら・・・」


「ええ。早く・・・」


 お互いがお互いに向かって、


「始めるか!!」


「始めましょう!!」


 飛び掛かった。










 ルカ視点


「嘘だろ?おい。なんでアイツがいるんだ!?」


 俺は今の状況が信じられずにいた。なぜなら、あの最強の死神であるクレアがいて、敵・即・斬をいつも批判していた神崎が真っ先に剣を振ったからだ。


「とにかく、連絡だ。」


 クレアを目撃したら、すぐに連絡するように社長に言われたので連絡を入れた。


「もしもし?俺だ。ルカだ。今大変なことが起こっている。すぐに社長を頼む。」


 それからすぐに社長が来た。


『どうした?未確認の死霊にやられたのか?』


「違うんだ!クレアが現れた!」


『何!!10番ゲートにか!?神崎はどうした!?』


 社長が慌てたようすで聞いてきた。


「アイツはクレアを見たらすぐに襲い掛かった!どうすんだ!?アイツ、なんかエンジン全開だぞ!!」


『とにかく、お前はそこで待機しろ!神崎が負けたらすぐに神崎を回収してゲートに向かえ!一応、イアンとエマを送るがそれでも待機しろ!あれはアイツらの戦いだ。下手に邪魔したらその瞬間に肉片になるぞ!!』


 社長はそう言ったが、


「それはいいが・・・なんでよりにもよって勇者と魔王にのバカップルなんだよ!!ここを惚気の場にする気か!?」


 俺にゲロ吐けと言ってるようなものだ。


『仕方ないだろう!伊織だったら絶対に突っ込むだろ!』


 確かに伊織だったら本気で戦場に突っ込むだろう。


『とにかく!さすがに今回はシリアスな展開だ。空気は読むはずだ。頼むぞ!』


 そう言って連絡を切った。


「どうすりゃいいんだよ?」


 そして俺はうなだれるしかなくなった。










 神崎 悠志視点


 カン!カン!カン!


「おらぁ!!」


「・・・・・」


 カン!ヒュン!ヒュン!ヒュン!ガキン!ガン!ヒュン!ブン!ズドン!


 金属音が鳴り響く。刀と鎌、刃と刃がぶつかり合う。


(上、下、右、左。)


 俺は『流れ読み』を使って、クレアの鎌の軌道を読み、防いでいく。


(鎌のくせに返しが速い!どうやればそんなこと出来んだよ!)


 クレアは俺やルカの鎌と同じくらいの大きさの鎌を使っているのに、草刈り用の鎌みたいに軽々と振り回していた。


(自分も鎌は1番得意だけど、コレ見たら自信なくすな。)


 そんな余計なことを考えていたら、


 ヒュン!


 鎌が俺の頭上に振られて、


「うわ!危な!!」


 俺はかろうじて避けて、クレアとの距離を離した。


「ふぅーー。」


 さすがにヤバかったので、俺は息をつく。


「あら?今のが本気?案外『水月』もたいしたことないのね。」


 クレアはがっかりしたような様子で言った。


「まさか。いつ本気を出そうか考えててね。」


 冷静に答えた。


「ふ〜ん。じゃ、私、もう少し強くやるから・・・」


 クレアは一気に俺との距離を縮め、


「死なないでね。」


 笑いながら鎌を薙ぎ払った。


「舐めんな!!」


 鎌を刀で防いでクレアを真一文字に切り裂く、


 ガキン!


 当然クレアもそれを防ぐ、それから、


 カン!カン!カン!カン!カン!カン!カン!カン!カン!カン!カン!カン!カン!カン!カン!カン!カン!カン!カン!カン!カン!カン!カン!カン!カン!カン!カン!カン!カン!カン!カン!カン!カン!カン!カン!カン!カン!カン!カン!カン!


 刀と鎌の打ち合いが始まる。何故か俺はこの切り合いが楽しく感じている。気を抜くといつまでもこうしていたいと思ってしまう。だけどいつまでもこうしてはいられない。俺はこの女を倒すためにここまできた。だから終わせようと心に決めた。


「其は戦いの刃なり」


 俺はそう呟いた。俺の刃には7枚のエッジと3枚のカードがある。カードはその名の通り『切り札』であり、エッジでは他の色夢に劣ってしまうが、カードでは誰にも負けないと思っている。この刀には『戦う』という想いが込められている。特性は身体能力の向上。ファーストエッジの『クロノトリガー』やセカンドエッジの『筋力増強』よりかは低いが、スピードとパワーが両方上がる。


「っ!」


 クレアは驚いた顔をした。いきなりスピードやパワーが上がったのだから驚くのは当たり前だ。

そしてクレアは後ろに引いた。


「忘れてたわ。刀には身体能力向上の能力があったわね。」


 クレアは少し息を整えてから言った。そして、


「でも・・・それだけじゃないでしょ?もっと本気を出してくれないかしら?」


 笑いながら挑発してきた。


「いいぜ。元々、そのつもりだしな。」


 手加減はしてないが、まだ全力ではない。なぜなら俺のバトルスタイルは、


「オールエッジ・・・・開放。」


 複数の武器を使って、その状況に合った対応をするスタイルだからだ。



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