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死神の物語  作者: 笠井
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第十三話 死神はスピード狂

 『黄泉』社長室より


「んで、これが今日の仕事ですか?」


 俺は手に持っている紙を見ながら言った。


「ああ、今回はそれだけだ。」


 と、遠野さんは言った。仕事の内容はこうだ。


『7番ゲート地域にリビングが大量発生。直ちに、殲滅せよ。』


 俺は紙を見ながら、


「ふ〜ん、今回はリビングか。微妙だな。」


 リビングは死霊の中級クラスだから強さの偏りが大きい。油断できないため楽な仕事ではない。


「リッチを瞬殺したお前なら一人で充分だろ。」


 遠野さんは気楽に言った。


「判りました。すぐに行きます。あと念のためノルンを連れていきます。」


「遊ぶなよ。」


 遠野さんに睨まれた。


「遊びませんよ。」


 俺がそう言えば、


「信用できん。お前があの猫を連れて行った仕事のほとんどが猫と遊んでいただろーが。」


「いいじゃないですか。仕事の終わりに遊んでも。」



「ダメだ。お前が遊ぶと他の仕事をお前に押し付けられない。」


「他の死神に押し付けて下さい。」


 仕事が増えるのはさすがに嫌だ。


「他の死神だと?黒夢は死霊の殲滅に忙しいし、白夢はまだ経験不足だし、まさか他の色夢に頼むのか?」


 遠野さんの睨みが強まった。


「そう言ってますが?」

 俺は何が問題なのか分からなかった。


「じゃあ言うが、ルカはお前と同じで仕事を押し付けているからいい。エイレンシアは自分の仕事があるからまだいい。だがな、あのバカップル組や暴力女、筋肉バカに押し付けてみろ。バカップルはイチャつき、暴力女は不祥事起こす、筋肉バカは自分の筋肉について最低1時間聞かされるんだよ!あー何で此処の色夢は問題児だらけなんだよ!!」


 遠野さんは叫び出した。他の死神達が見たら苦労してるんだな、と同情するかもしれない。だけど、


「そらぁ、アンタも変人だからだろ。いい加減嘘くさい演技をやめなさい。」


 俺達、色夢にはこの人の性格なんざ分かりきってるので同情なんてしない。


「ククク、さすがに嘘くさいか・・・まあ、確かに俺も変人の類だからな。」


 さっきの叫びからすぐにニヤケ面になった。


「さて、もう行きますよ。」


 俺は部屋から出ようとした。


「ちょっと待て。」


 しかし遠野さんに呼び止められた。


「もう一度言うが、くれぐれも猫で遊ぶなよ。」


 と、遠野さんは言った。


「早く帰ってきますが、今日の仕事はコレだけと言ってたので仕事は受け付けません。」


 俺はこの人に効くかどうか、分からなかったがそう言っておいた。










 7番ゲート地域


「んで、来てみたところ、最初に見たのは鳥の群れ・・・か。」


 7番ゲート地域に向かったら、目の前にはリビングが飛び回っていた。


「さて、どうすっかな〜?」


 俺はリビングを倒す策を考えた。


「フィフスエッジは遠距離向きじゃないし、アグニスはこう飛び回ってちゃあ一掃できないしなぁ。セブンスエッジは、調整まだだし。」


 セブンスエッジが使えればあの群れを一掃できるのだが、随分前にカスタマイズしてそのままだったのであまり使いたくなかった。


「ニャー。」


 考えていると、ノルンが急に鳴いた。そう、今日はコイツがいる。


「ノルン、悪いが手を貸してくれないか?」


 元々そのつもりだったがとりあえず聞いてみた。


「ニャ!(任せなさい)」


 了承を得たのでノルンに俺の計画を聞かせた。


「という訳だ。出来るか?ノルン?」


 一応そう聞いてみたが、


「ニャーニャ?(私を誰だと思っている?これくらい簡単だ)」


 余裕がある返事だった。それから俺はノルンを撫でてから、


「よし。じゃあ・・・」

 一息をつき、


「イクぞ!!」


 群れに向かって飛び掛かった。もちろん、俺一人ならこのままでは落ちる。だけど、


「ノルン!!頼む!!」

「ニャ!!」


 今はコイツがいる。


「ニャニャーニャ。(氷よ・・・風よ・・・私に従え・・・)」


 ノルンの詠唱と同時に、俺の周りに氷が出現した。俺はそれを、


「ハッ。よっと。」


 氷を足場にしてリビングの群れに突っ込んだ。


「フィフスエッジ・・・展開。」


 俺は群れの中央に二丁の銃を使って、


 ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!


 撃ちまくった。


 撃ちまくる間、俺は次の足場に移る。そしてまだ撃ちまくる。


(さて、体力はもつかな?)



 実際、こんなことしてれば凄く疲れる。普通なら1分ももたないだろう。だが、


(なんて思ってみたが、問題があるわけがない。)


 俺はいろいろと厄介事に巻き込まれる人間だ。だからこんなことで疲れたりしない。それに、


「なんか楽しくなってきたしな!!」


 俺はより速く、もっとスピードを求めていた。


 ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!


 撃ちまくっている間、俺は物足りなく感じていた。


(もっと、もっと速く!!)


 肩に乗っているノルンが心配しないわけじゃないが、もう少しスピードを上げたい。なので、


「ノルン、もっと速くいきたいんだが・・・行けるか?」


 と、聞いたら、


「ニャニャ(私にかまうな。やりたければやれ。)」


 そう言ってきた。


「ありがとな。ノルン。ファーストエッジ・・・解放。クロノトリガー発動。」


 俺はノルンに礼を言い、双剣をだした。俺の刃は、俺自身の心で出来ている。そして、解放と口にすれば刃に込められている想いが発動し、その想いが実現する。双剣に込めた想いは『疾風』、だから、


「其は疾風の刃なり。」

 俺自身が風のように、


 ザン!ザン!ザン!ザン!ザン!ザン!ザン!ザン!ザン!ザン!ザン!ザン!ザン!ザン!ザン!ザン!ザン!ザン!ザン!ザン!ザン!ザン!ザン!ザン!ザン!ザン!ザン!ザン!ザン!ザン!ザン!ザン!ザン!ザン!ザン!ザン!ザン!ザン!ザン!ザン!ザン!ザン!ザン!ザン!ザン!


 加速する。


「はああああああ!!」

 加速した俺は次々と敵を切り裂き、


「ラストおぉぉ!!」


 3秒で敵を殲滅した。


「よっと。」


 俺は手頃なところに着地した。


「ふぅーー。まあまあかな。」


 俺は自分のスピードの良さに酔っていると、


「あ、ノルン?大丈夫か?」


 スピードを上げる際にノルンの存在を完全に忘れていた。だからノルンを見てみたら、


「ニャ〜〜〜。」


 目を回していた。


「ノ、ノルン?だ、大丈夫か?」


 見るからに大丈夫そうではないが一応聞いてみた。


「ニャ〜〜〜〜(多分、大丈夫。)」


 そう返事をした。


「わ、悪いなノルン。今度から手加減するから。」


 俺はノルンに謝ると、


「ニャ〜〜(そう思うなら遊んで。)」


 そう言ってノルンは俺に擦り寄った。


 それから俺はノルンと遊んで、遠野さんに仕事を増やされた。

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