第十二話 死神は街を行く
死都『ミルディン』1番区画より
「さて、街には着いたけど、ゲーム売ってる店ってどこにあるの?」
「たしか、6番区画にあったはずだ。とっととメインゲートに行こうぜ。」
ミルディンは20に別れた都市で1番から5番
までが居住区。6番から15番までが商店区。16番から20番までが神が住んでいる絶対地区。絶対地区に住んでいる神は俺ら死神とは違い、最初から神と決められた者たちだ。神の仕事は人間の運命を定めること。と言っても人には個性というものがあるため定められるものは寿命ぐらいだ。まあ、そんな話はこれくらいにして俺達はそれぞれの区画に一瞬で行けるメインゲートに向かった。
「んで、聞いてなかったけど部長はどんなゲームが欲しいんだ?」
俺はゲートの行き先を設定しながら聞いた。
「え〜〜と、確かホラーだったような気がするわ。」
エイレンシアはそう答えた。
「・・・・何だって?」
「だから、ホラーなゲームだった気がしたって。」
「・・・・・題名は?」
「たしか、『発狂都市』だったわ。」
「へ〜。そ、そうなんだ〜(汗)」
部長がホラーゲームを欲しがるなんて思わなかった。するとエイレンシアはニヤつきながら、
「あれ〜?ゆ〜君?顔が真っ青だよ〜?」
(くそっ!俺がホラーが苦手なのに気付いたな!)
俺はホラーが嫌いだ。血を血で洗うものならまだ大丈夫だが、貞子やら口裂け女やらゾンビやら着信アリなんてもん見たくもない。
「ゆ〜君、もしかしてホラー苦手なのかな〜?『刃』とも言われるお方がまさかホラーが怖いなんてないよね〜」
エイレンシアのニヤつきは止まらない。ここは見栄を張るのが普通の反応だが、
「うん、こわい。だからワタシカエルネ。」
自白した。だって見栄張ればお化け屋敷やらホラー映画見せられそうだもん。
「えー、張り合い無いなー。いいかい、ゆ〜君? こういう時は怖くないって言うもんだよ。」
「んなこと言ったら、ホラー満載なデートになるだろーが!」
それは絶対に阻止したい。
「えー、もう予定に遊園地でお化け屋敷に入るって決めたのに〜。」
「断固、断る!!たとえそれが運命だとしても変えて見せる!!」
「カッコイイこと言ってるけど、全然カッコ悪いよ?」
「カッコつけて無いぞ。これは純粋な願いだ。」
「そんなに嫌いなの〜?死霊をバッサバッサっと斬りまくってるのに?」
確かに、死霊の中にはゾンビ、首なし、スケルトンなどグロテスクなのもいる。
「まあ、仕事だしな。白夢やってた時に慣れた。」
いちいちビビってたら、色夢になんざなってない。するとエイレンシアが、
「じゃあもう大丈夫だよ〜」
「そんなにお化け屋敷行きたいか?」
ゲートの設定を忘れ、説得に全力を注いだ。
6番地区より
結局、俺の全力はエイレンシアには効かなかった。仕方ないのでとっとと部長の頼みを終わらせて、明るいうちにお化け屋敷に入るということにさせた。で、今は部長の欲しいゲームを探している。
「ねーねーゆ〜君〜。『発狂都市』が無いよ〜」
「それは俺じゃなく、店員に言いなさい。」
俺は自分用に買うゲームを探していた。
(う〜ん。欲しいゲームは3つあるな。でも高いしな〜。)
俺がゲームを買うかどうか悩んでいる間。
「すいませ〜ん。『発狂都市』というゲームを探しているんですけど、まだありますか?」
エイレンシアは店員に話し掛け、
「ああ、それならコレですね。」
目当てのゲームを買うことが出来た。
「ねーねーゆ〜君。『発狂都市』買えたよ〜。」
「ああ、買えたのか。んじゃ、とっとと次行くぞ。」
俺が店を出ようとすると、エイレンシアが、
「あー、ついでに買いたい物があるんだけど・・・」
遠慮がちに言ったので、俺は不思議に思った。
「?、別にいいが、なに買うんだ?一万以下ならおごってやってもいいが。」
まあ、デートということになってるので男である俺が金を払うことになる。
「ホント!!ありがとうゆ〜君!!」
エイレンシアは顔を輝かせ、ガバっと俺に抱き着いた。
「うわっ!危ね!!」
俺は転びそうなところをなんとか堪えた。
「えへへ〜。ゆ〜君は優しいな〜。」
「人が見ているので止めましょう。」
周りを見れば、
(テメーら公共の場でなにしてやがる<怒>)
殺気の篭った視線がいくつかあった。その中に一際目立つ殺気が二つほどあった
(ん?二つ?)
前に感じたことのある殺気を感じ、その先をちらっと見ると、
黒い猫と和服を着た女性が見えた。
(ノルンと伊織?何でこんなところに?もしかして尾行?いやいや、まてまてもっかい見てみよう。)
俺は再度、視線の先を見ると、
(ほら、やっぱり誰もいない・・・最近疲れてるんだ。)
デートだからって、妨害しようとする二人ではない。と、ふと、
「んで、お前の欲しい物は?」
エイレンシアのことを思い出し、なにが欲しいか質問した。すると、エイレンシアは向こうを指差し
「コレが欲しい!」
エイレンシアが指差した方向を見ると、
「何だアレ?」
エイレンシアが指差したのは、UFOキャッチャーがあり、景品は雪だるまの縫いぐるみぎっしり詰まっていた。ここまではいい。
「・・・なんか・・・・・でかくね?」
人より大きい縫いぐるみがあった。それに、
「・・・なんか・・・・・・みんな・・・・コッチ・・・見てね?」
縫いぐるみの全てが俺達を見ていた。
「・・・なんか・・・・・・恐くね?・・・」
縫いぐるみは全員笑っていてそれらが全て俺達を見ていたら、さすがに恐怖を覚える。するとエイレンシアは、
「あの大きい縫いぐるみが欲しいの。」
と、1番大きい雪だるまの縫いぐるみ(人より大きい)を指差した。
「どうやって入れたんだ?そしてどうやったら取れるんだよアレ!?」
縫いぐるみを取るのはいい。しかし問題は穴が小さいことだ。どう考えても、アレを取るのは不可能だ。しかし、試してみないことには何も始まらない。なので金を入れて縫いぐるみを取ろうとすると。
ガタン。
失敗した。もう一回。
ガタン。
デカイくせになかなか掴めない。意地になってもう一回。
ガシッ。
三度目の正直とはよく言ったもんだ。縫いぐるみを掴み、穴の方に向かっていくが、
コロン。
やっぱり穴には入らなかった。UFOキャッチャーに熱中してると、
「あの〜〜、お客様?」
声が聞こえたので振り向いたら店員がいた。
「申し訳ありませんが・・・その縫いぐるみ、貰ってくれませんか?」
どうやら店員もアレは邪魔だったらしい。
1番区画より・・・
俺達は人より大きい雪だるまの縫いぐるみを二つ貰い、さすがにコレ持って遊園地に行けるわけないと判断し、会社に帰ろうとした。
(一つ言うとすれば、ありがとう雪だるま達。)
おかげでお化け屋敷に行かないで済んだ。心の中で縫いぐるみに感謝していると、
「あ〜あ、もうこんな時間。時が経つのは早いな〜」
エイレンシアは髪を掻き上げて言った。
「まあ、いっか!ありがとね、ゆ〜君。」
エイレンシアはお礼を言ったので、
「どういたしまして。暇あったらまた会いに行くからな。」
俺はそれを返して、
「そういえば、縫いぐるみ、一つでいいんだよな?」
質問すると、エイレンシアは、
「うん、もうひとつはゆ〜君にあげるね。」
こんなデカい縫いぐるみを貰っても意味はないけど、
「ああ、ありがとよ。」
ツッコミむのは止めよう。そう思いながら縫いぐるみを抱えた。
おまけ。
「何で私がこんなことをしなければいけないんだ?・・・」
「ニャーー(奴らが必要以上にイチャつかないため。)」
「と、言っても睨んだけだけどな・・・」
ちゃっかり尾行していたノルンと伊織(無理矢理)がいた。
「ニャ!(杞憂に終わってよかった。)」
「だけど、アイツら何か忘れないか?」
それから1時間後、高級ネコ缶を買いに、悠志が戻ってきたのは誰も知らなかった。