第一話 少年は死者になった
6月中旬、今の天気は曇り空。そんな日に俺は散歩をしていた。 俺は神崎 悠志ただ普通に生きている人間だ。
今歩いている場所はあまり人気のない橋の上。
周りを見れば車の数は少なく、ほとんど川の音だけが心地よくひびいていた。俺は此処が一番落ち着く。だから、暇があればいつも此処に足を運んでいる。
しかし今までと違う光景を見た。
(なんだアレ?)
橋の先に立っていたのは女性のようだった。
それ自体が光を発しているかのような長い銀髪、
透き通るような白い肌、整った顔立ち、そしてルビーのような朱い瞳。
誰がどう見たって、美人だと言うような女性だ。
実際俺も、
「綺麗だ・・・。」
と言ってしまった。だけど、
(なんで俺はアイツを見るとこんなにも・・・)
不安になるんだ?
頭がガンガン痛む。身体が震える。何故?
デアッテシマッタ・・・
アノオンナニ!!
(なんだっていうんだ!!ただあの女を見ただけだってのに。)
頭の中の声に苛立ちながらそれを無視して突き進んだ。
それが間違いだったと気付かずに・・・
(ただ普通に歩けば何も起こらないんだ。そうだよこっちから何もしなければ大丈夫なんだ!)
必死にそう言い聞かせ震える身体を動かした。
自然と歩くスピードをあげていた。
その間も頭の声が響いてくる。
モドレ・・モドレ・・モドレモドレ・・モドレモドレモドレ・・・
スグニニゲロ・・・・
ハヤクニゲロ・・・
ソレイジョウチカズクナ・・・
アイツに近付くごとに声が強く響いていく。
(もう少し・・・)
それでも俺は歩みをやめない。
(あと少し・・・)
そう言い聞かせ続ける。 (このまま突っ切る!)
そう思って歩くスピードを早めた。
そしてついにアイツの傍まで近づいた。
その瞬間、
トスッ・・・・
その音を聞いた瞬間、俺は今まで感じたことのない鋭い痛みを感じた。
「えっ・・・」
その痛みの先を見れば、
(なんだよ・・・コレ・・ナイ・・フ・・・)
それを確認したあと痛みが強まった。
「グッ・・アアァ・・・ガッ・・ハッ!!・・」
痛みのせいでろくに息もできない。まだ刺さっているからか、血はあまり出ていなかった。
(でもこのままじゃ、あともって3分だなぁ。)
何故か俺はそう冷静に考えることができた。そしてあの女は通り過ぎて行った。
俺はその女を見た瞬間黒い感情が芽生えてた。
(どこに行くつもりだ。人刺しといてそれはねぇだろ)
いまだに痛む腹を押さえながら、
(ふざけんな!ただですむと思うなよ。)
そろそろ血の味がしてきた。なのに俺は・・・
(コレを抜いたら、あと30秒であの世行きだな。)
ドクンドクンと震えているナイフを確認していた。
(かまうもんか。どうせ残り少ない命だ。なら・・・)
その命を燃やしアイツを・・・
「殺すまでだ。」
そして俺は刺さっているナイフに手に掛けて、そのナイフを抜いた。
ズブリ・・・
妙に生々しい音を出してナイフは抜けた。
「ゲハァ!!・・・スゥ・・ハッ!!」
ナイフを抜いた痛みは想像以上で、一瞬にして俺の体は血で染まった。
だが・・
(まだだ!まだ死ねない!!)
痛みを堪えアイツに向かった。最短でアイツに追い付き、ナイフを構え、
「うおおおぉぉぉ!!!」
アイツに突き出した!
だが・・・
「えっ・・・・」
アイツは翻りナイフを躱した。そしてアイツは、
「やっぱり、向かってきたんだ。」
笑っていた・・・・
この場面に似合わないくらい明るく、妖艶に。
長年逢えなかった恋人を見つけたかのような・・・そんな笑みを・・・。
(な・・んだよ・・ソレ?なんで俺にそんな笑みを向けるんだ?)
そんなこと思いその答えを探す間もなく、アイツは俺を蹴飛ばした。
俺の傷をえぐるかのような蹴りだったが一番驚いたのは、
「グアッ!」
今いた場所から数メートル先にあった電柱まで吹き飛ばされたことだ。
俺は電柱にぶつかってすぐに意識が遠くなった。
薄くなっていく意識のなか最後に見たものはあの笑顔だった。
初めての投稿でしたがいかがでしょうか?復讐する物語ですが重い話にはあまりなりません(というより文才ないのでできません<汗>)。どうかこれからもよろしくお願いします。