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68話 手紙と貴族院




「──面を上げよ」


「はい」



 立派な白髭をたずさえた老人は、見るからに高価そうな椅子に座って一人の少年を見下ろしていた。


 

 少年は老人の指示通り顔を上げる。


 その少年は綺麗な黄金色の髪を持ち、その髪の奥には未だあどけなさは残るものの端正に整った顔があった。



「アルフォート・グランセル、国王陛下にご挨拶申し上げます」



 そう言って、少年(アルフォート)は礼儀正しく老人(国王)に挨拶する。アルフォートの後方には、その様子を不安そうに見つめる父と兄たちの影があった。



 どうしてこのような状況になったのか。それは少し時間をさかのぼる。









 決闘まで後2日に迫ってきて、アル以外の家の人たちは慌ただしく動き回っている。



 市井に「ベル・グランセルとジンクス・ホークスハイムとの決闘」の話が発表されたのは昨日の事だが、その情報は瞬く間に流れていった。そして、王都はその話題で持ち切りで、一部では今回の件には何か裏があるのではないかという噂話すら飛び交っていた。



 ベル、ガンマ、レオナルドは、決闘の準備や親交の深い貴族家・商家への挨拶で忙しそうにしており、グランセル公爵の正妻であるカリーナも各家からやって来た奥様方への対応を一手に引き受けていた。



 つまり、暇人はアルだけだった。



「──よし、実験だ」



 アルは気を引き締めて以前やろうとしていた「古代魔法」の実験をしようとする。


 しかし、アルのその予定は変更することになる。



「……アルフォート様、お手紙が届いております」



 屋敷の使用人がアルの部屋に手紙を持ってきた。アルはその手紙の中に「例の物」があるのを確認する。



「ありがとう。お仕事頑張ってくださいね」



 アルは手紙を持ってきてくれた使用人を労う。使用人の女性は気持ちのいい会釈をして部屋を出ていく。



「──さて、どんな返事がきたかな」



 アルは誰もいない部屋でそう呟き、例の手紙を開封する。その手紙は白色で質素な封に入れられたものだった。


 アルは手紙を開いて読み始める。



「……まぁ、想定の範囲内かな。でも、少し引っかかるかな」



 アルは手紙を読み終えてそんな感想を抱く。その手紙には簡潔にまとめられた一文だけが書かれていた。



『グランセル公爵様にお話をお願いします』









 アルはレオナルドに話を通すべく、屋敷の外に出た。


 一応カリーナに居場所を聞いて、セバスの護衛付きという条件なのだが。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




セバス(55)

種族:人間

称号:執事 蟲使い 元A級冒険者

HP:3,000/3,000

MP:1,000/1,000

魔法適性:闇


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


レベル:35(知+5,防+10,筋+15,俊+40)

筋力:610

防御力:440

知力:270

俊敏力:1460

スキル:蟲操作(4) 斥候(4) 短剣(4) 事務(3) 

    礼節(3) 雑務(3) 危険察知(3) 

ギフト:スキル上昇(小)

ギフト:なし




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




……なぜこの人は執事をしているんだろう。


 アルはセバスのステータスを鑑定し、その強さにそんな疑問を抱く。



 冒険者はG級から始まり最も高いランクがS級である。しかし、S級冒険者は各国に1人か2人程度しかおらず、A級冒険者となるとかなりの特権を得ることが出来る。


 B級冒険者以上となると準貴族として特権を得られ、A級は男爵と同程度の地位として扱われる。つまり、セバスは男爵レベルの地位を持っていることになる。




 アルは王城付近にある大きな建物の前に辿り着く。



「……ここですよね?」


「えぇ。ここがレオナルド様がいつも仕事をしている『貴族院』です」



 アルの問いかけにセバスはそう答える。



 貴族院と聞くと、「大日本帝国」の「貴族院」を連想するが、アイザック帝国の貴族院は少し毛色が違う。


 大日本帝国において「貴族院」とは皇族や華族など、いわゆる「特権階級」の者たちで構成された議会の事を言う。これは日本憲法の施行によって華族制度を撤廃されたことにより同時に廃止された。



 しかし、アイザック帝国の貴族院は「議会の下準備」という仕事がメインの「雑用係」だ。



 アイザック帝国は王権制を敷いており、最終的な決定権は王にある。


 一応議会なるものも存在しているが、基本的にその場には王が出席し、活発な意見交換が行われるわけではない。事実事項を確認するために開かれるのだ。


 つまり、その下準備を一手に引き受けているのが「貴族院」であり、議会の趣旨を踏まえると「雑用係」と称されても何らおかしくはなかった。





 貴族院に入っていくと、アルに対する視線が突き刺さる。


 そもそも人が訪ねてくること自体珍しいのに、それも見るからに子供であるアルが何食わぬ顔で歩いているのだ。周りが奇怪なものを見るような視線を送るのは致し方なかった。



「ここが父上の仕事部屋か」



 その部屋は屋敷の最奥にある部屋で、貴族院においてグランセル公爵家が高い身分であることを物語っていた。



 ──さて、どう伝えるべきか。



 アルは「ビクトル家」の事をどのように伝えるべきか、思案を巡らせるのであった。






約一か月間、投稿できず申し訳ありません。

家庭の問題や学校、また私自身の精神的な問題で投稿が出来ない状況でした。

これからは毎日投稿は出来ないかもしれません。少し一話に要する期間が開いてしまうかもしれませんが、少しづつ投稿を再開していくつもりです。

これからも、どうぞよろしくお願いします!

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