表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/220

61話 執事と実力






 アルは、ノーラと一緒に貴族家が屋敷を建てている「貴族エリア」を歩いていた。



 まだ早朝ということもあり、意外と簡単に屋敷を出ていくことが出来た。ノーラが気配を隠しながら先導してくれたという事もあるが。



 グランセル公爵家の屋敷は貴族エリアの最奥にある。貴族としての位が高いほど王城付近の位置に屋敷を建てるため、ビクトル男爵家の屋敷は城下町付近に建てられていた。



「あれが屋敷だよ!」



 歩いて10分くらい経っただろうか。


 もう少し行けば城下町に辿り着くというところでノーラから声がかかる。ノーラが指さす先には、貴族家としては大きくない部類に入る屋敷があった。しかし、敷地面積としてはそこそこ広いのではないだろうか。



「思っていたより広いですね」



 アルは思った感想を素直に伝える。ノーラはその言葉に少し暗い表情を浮かべる。



「まぁ、あんまり褒められた方法でのし上がったわけじゃないけどね」



 ノーラは、自分の家が男爵としてはそれなりに広い敷地を与えられていることに後ろ暗い感情があった。そのため、アルの言葉は彼女にとってはあまり嬉しいものではなかったのだ。



「どんな方法でもいいんですよ。……家族を守るためなら、ね」



 ノーラはアルの言葉を聞き、驚きを隠せなかった。



 「グランセル公爵家」は「正義」を信じる家系だと思われている。それは国中で広がっている認識であり、ベルが噂話だけで悪評が広がったのは、この一般的な認識から大きく外れているからという側面もあった。



 しかし、目の前の少年はビクトル男爵家の「裏稼業」を知りつつも、それが間違っているとは思っていないようなニュアンスで発言している。



「……アル君って変わってるね」



 ノーラの言葉にアルは笑顔で応える。その時、ノーラの心に渦巻いていた後ろ暗い感情は鳴りを潜め、一筋の希望の光が差し込んでいたのだった。












 屋敷の敷地内に入るとこじんまりとした本邸と従者たちが生活しているのであろう別邸の2つの建物が建てられていた。そして、王都にある屋敷の中ではかなり広い部類に入る庭があり、その庭を屋敷の敷地として計算すればそれなりに大きな建物が建てられたのではないかと思われる。



「お嬢様、おかえりなさいませ」



 本邸の扉の前でノーラの帰りを待っていた老紳士が彼女の帰りを迎える。アルの存在もしっかりと把握しているようで、アルの方にも最敬礼の礼を尽くしていた。



「ビクトル男爵様は素晴らしい部下をお持ちのようですね」



 アルはその老紳士を()()、ノーラにそう伝える。


 しかし、反応を見せたのはノーラの方ではなく老紳士の方だった。彼は一瞬肩をびくっと反応させた。



「……私は部下ではありません。この屋敷では執事としてお嬢様のお世話をさせていただいております」



 老紳士はアルの顔色を伺いながらそう答える。


 彼は目の前の相手に自分の事を脅威とは思わせない様に細心の注意を払って行動している。しかし、アルの言葉からは自分の「本質」をすべて見透かされているかのような錯覚を覚えた。



「……そうでしたか。とてもお強そうに見えましたので、……つい」



 アルは老紳士に笑顔でそう答える。


 しかし、「鑑定眼」を持つアルには彼の情報など筒抜けだ。



「私にはそれほどの力はございません。……では、ご案内させていただきます」



 老紳士は気を取り直して自分の仕事を全うすることだけを考える。






◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



ガルベス(56)

種族:人間

称号:執事 ビクトル男爵家分家筋 暗部長

HP:2,500/2,500

MP:1,500/1,500

魔法適性:闇


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


レベル:21(俊敏力+30,攻撃力+15,他+10/毎)

攻撃力:400

防御力:300

知力:300

俊敏力:700

スキル:気配隠蔽(4) 隠密(3) 暗殺(3) 暗器(3) 

    事務(2) 礼儀(2)

ギフト:なし

加護:なし





◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇





 彼は前ビクトル男爵の兄弟に当たる。つまり、現ビクトル男爵の伯父であるのだ。


 称号を見る限りでは、実際に執事としてこの家での役職を与えられているようだ。しかし、それよりももっと気になる点がある。



 暗部長(あんぶちょう)


 それはこのビクトル男爵家が暗躍している核心部分であり、執事である老紳士がその長をやっているのだ。



 アルは自分の「勘」が目の前の老紳士・ガルベスを危険人物だと警鐘を鳴らしていたため、『鑑定眼』を用いてそれを確認したところ予想外の情報に少し驚いていた。



 また、アルのカマかけにも多少の反応は見せたものの上手に受け流した。



 アルはこの老紳士が腕だけで雇われているわけではなく、ノーラの監視役として男爵が付けているのではないかと予想する。



――意外と食えない人なのかな?



 アルはまだ見ぬビクトル男爵を想像しつつ、これから提案しようと考えている「案」をどう受け入れさせるかを考え続けていたのだった。




今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。


身内に不幸がありまして、一週間ほど更新できませんでした。一応の落ち着きが出来ましたので更新を再開しようかと思います。


あらかじめご連絡が出来なかったのは申し訳ありません。これからはまた更新を再開していくつもりです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ