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42話 王族と手紙




「──そういえば、王族って今は何人おられるのですか?」



それは家庭教師のギリスによるアイザック王国の歴史の授業を受けていたとき、ふと出てきた「王族」という単語に聞き、アルはかねてからの疑問をギリスにぶつけた。 

アルは、アイザック王家についてほとんど何も知らない。知っていることと言えば、ベルが第3王女と仲がいいことくらいだろうか。



「現王はユートリウス2世です。そして、王子が五名に王女は六名。末席の第6王女はアルフォート君と同じご年齢ですね」


「お后様はたくさんおられるのですか?」


「現王は四人の后を娶っておられます。王太子は王妃から生まれたため、跡目争いなどは起こっておりませんね」


「王弟やその子息は?」


「そこまでは把握しておりませんが。基本的に王弟たちは王都から離れたところで隠居されることが多いので、人数までは把握できません」



 ギリスの話をまとめると、アイザック王家は国王とその后が四名、王子五名、王女六名の計十六名しかいないことになる。


 これに対して、アルは王族の数が少ないのではないかと感じていた。王族ということで、王子たちは戦地に赴くことが多い。あまり考えたくはないが、戦場に赴くということは少なからず死のリスクを伴う。王太子が亡くならない限りは国が傾くことはないと思うが、最悪の事態も想定されるべきだ。



「アルフォート君が懸念していることは何となく理解できます。しかし、『アイザック王族法』には継承権についての規約が細かく書かれております。もし後継者としてふさわしくないと判断された場合は王女にも継承権がありますので、継承権の争いは早々起こりません」


「王族法なんてものがあるんですか。ギリス先生は博識ですね」


「はい。これでも学者としてはそれなりに名が通っておりますから」



 ギリスの説明から継承権の争奪戦が発生する可能性は低いということを理解したアルだったが、それ以外にも王族に関することで気になっている点があった。



 それは、王女の降嫁問題だ。


 本来は王族、例えば現王の弟たちの息子たちの所へ嫁がせるのが普通だろう。しかし、王族以外に貴族の令息の所へ降嫁させることはよくあることだ。そして、その第一候補が公爵家だろう。



 ──まさか、ね。



 アルは公爵家の令息といっても3男だ。通常なら学園卒業を機に自立する立場にある。そのため、アルのもとに王女を降嫁させるなどあり得ないことだ。


 しかし、アルのなかの小さな不安は色濃くずっと残り続けていた。







「アルフォート様、お手紙です」


「ありがとうございます!」



 ニーナは数通の手紙を手にアルの部屋を訪れていた。今日ギリスはお休みであるため、アルは一人、自室で勉強を行っていた。



「アリアさんとノーラさん。後は……ベル兄様からだ!」



 アルが手紙の差出人を確認していると、珍しい相手からの手紙を発見し興奮する。ベルから手紙が来ることなどほとんどなく、たまに屋敷の様子を尋ねるような手紙が来るくらいだ。



 そういえば、ベルとは全く会えていない。


 アルは王都で宮廷魔術師として一生懸命働いているだろう兄を想像し、少し寂しさを感じていた。



「それにしても、今回はどういう理由で手紙をくれたのかな」



 珍しい相手であるベルからの手紙の内容が気になり、真っ先に封を切る。綺麗な封のなかからは、真っ白な手紙が出てきた。上等な紙を使っているようだ。




────────────────────


 アルへ


 元気にしているか?


 もうすぐ11歳になるらしいな。

 次のお前の誕生会には参加する予定だ。


 ガンマ兄上やミリアさんは元気にしているか? 

 別に気になっているわけではないが、

 屋敷に異常があっては俺も困るからな。



=====================




 ここまではベルらしい文面だ。

 いつものように、アルやガンマ、アルの母親であるミリアに異常がないかを尋ねる内容だ。あくまで自分の為だと匂わせてくるところなど、本当にベルらしい。


 しかし、その手紙の後に続いていた文章にアルは目を疑う。




=====================




 今日はお前に報告がある。


 いずれお前の耳にも入ることだから、

 個別に報告することでもないんだが。

 お前には先に報告しておく。




────────────────────




「──『俺と第3王女との婚約が決まった』?」



 アルはベルの手紙の最後に書かれていた文章を口に出してつぶやく。


 つい最近、王女の降嫁問題について考えていただけに、アルにとてはタイムリーな話題だった。

 アルの予想通り、公爵家の人間へ王女を降嫁させることは最有力だったようだ。そして、魔法の才能に恵まれていて、尚且つ公爵家2男という社会的立場を持ち、第3王女とも仲のいいベルに白羽の矢が立ったのだろう。


 アルとしては、兄の結婚を祝いたいという気持ちは大いにある。



 しかし、その裏で以前抱いていた不安が再熱する。公爵家2男のベルに、現王が溺愛していた王女を降嫁させた。


 この事実から、アルは自身の将来に不安を感じていた。




今回も最後まで読んでいただきありがとうございます!


今回は王族の構成と、作者お気に入りのベルの婚約話を書かせてもらいました。

最近、展開が早い気もしていますが、これからはもっと急展開があると思います。


楽しく読んでいただけていると嬉しいです。


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