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40話 暗躍の時間




「――以上が街の状況です」


「そうですか。ご苦労様です、ニーナさん!」



 アルはニーナを通して街の状況を把握していた。



 レオナルドとガンマの会話を聞いた日。実はそれ以前から市場の現状はニーナを通して知っていた。そして、2人がその対応策として輸入策を講じていることも。


 ただ、アルはその対応策では現状を打破できないであろうことも予想していた。そのため、クランに授けた提案を考えていたのだ。



「生産業が上手くいっていない理由は分かりましたか?」


「それもアルフォート様の言う通りでした。どうやら、旅の行商人なる者から肥料を安価で買い付けて、それを畑に使用したそうなのですが、その後にみるみる土がダメになったみたいです」



 やっぱり土に問題があったのか。



 ニーナから事前に受けていた報告では、市場に流通する食料品が減った原因として、生産業が上手くいっていないという根本的な要因があった。その原因として考えられるのは、畑の土や水の問題、もしくは天候の問題が大きい。


 天候は例年と比べて大きな変化が見られない以上、土か水が問題であろうとは思っていた。畑がダメージを受けたことで家畜の餌の量にも影響がみられるのは当然である。



「ですので、お言いつけ通りに土の入れ替えとサルーノさんから比較的安値で肥料を買い付けられるように取り計らってもらいました」


「分かりました。ニーナさんは仕事が早いので助かります」



 事前に原因にある程度の予想がついていたことで、その対応策も用意していた。



 お披露目会の時に知り合ったサルーノは、レオナルドに近しい存在でありながら義理堅く口も堅いので、最近ではレオナルドには秘密で、アルのお願いを聞いてくれている。アルから特別に報酬を受け取ることはないが、その代わりにアルから色々なアドバイスを受けているので、サルーノ商会は以前と比べるとかなり大きな商会となっていた。



「いえ、そんなことは……」



 アルがニーナをほめると、動揺したのか、毛づくろいをする猫のようなしぐさを見せる。これはニーナが照れているときに行うしぐさであることをアルは知っていた。









「アル様、そろそろ限界です!」



 アルの提案が実施されてから、大体3か月が経った頃だろうか。血相を変えたクランがアルの部屋へやって来た。クランのこんな姿は非常にレアなので、アルは呆けてその姿を見ていた。



「聞いておりますか!?」



 呆けているアルにクランは追い打ちをかけるようにそう詰め寄ってくる。クランのそんな姿も一通り観察し終えたので、アルは一応返事を返すことにする。



「えぇ……。聞いてましたよ」


「レオナルド様もガンマ様も、私の裏に誰かがいることは勘付いているようで、私の言動を逐一気にしているご様子で……」



 アルの意識がこちらへ向いたことで、クランは不安を爆発させる。相当溜まっていたのか、それは脱兎のような勢いだった。



「それは困りましたね!」



 アルはクランの不満にそう答える。元気よく答えれば諦めて(あきれて)くれるかもしれないと思ったからだ。しかし、そうは問屋が卸さない。



「元をたどればアル様が自ら進言しないからです。アル様の提案なら、お二人もお聞きになるでしょうに」



 クランは現状レオナルドやガンマに疑われて大変だという現実的な話から、そもそもこうなった根本的な理由がアルにあるという根源的な話へとシフトチェンジする。確かに、クランが疑われているのは、その提案がアルによるものであり、その事を内緒にするように言いつけてあるからだ。レオナルドに直接的に聞かれているのかはわからないが、アルのことを黙っている位には、彼の誠実さが異常に高いとわかる。



「いえ。僕とクランさんでは雲泥の差ですよ。クランさんの提案としていれば父上たちも必死で不備がないか探してくれるでしょう。父上たちは僕のことを過大評価しているみたいなので」


「……はぁ」



 アルは提案が改善されながら実施されているのはクランによる提案であるからだと指摘する。事実、クランの出した提案、つまりアルが考えた提案はレオナルドとガンマによって実現可能かを協議された上に実施されている。


 しかし、クランはそうは思っていないようで、アルの言葉に呆れたようなため息をついた。



「分かりました。ただ、本当に限界を迎えた場合はお二人に報告させていただきます」



 これ以上アルに話しても無駄だと察したのか、クランはそう言ってこの話を終わらせようとする。おそらく、今もレオナルドから仕事か何かを頼まれていて、その仕事の合間を縫って会いに来ているのだろう。



「それなら仕方ありませんねー」



 クランにこれ以上迷惑をかけるのもよろしくない。これからもクランとは仲良くやっていきたいと思っているので、アルは心の中でクランへのお願いは必要最小限にとどめようと誓う。



「本当にそう思っていらっしゃいますか?」



 しかし、クランはアルの表情をみて本気でそう考えているのか不安そうにしていた。




今回も最後まで読んでいただきありがとうございます!


今回は主人公アルの暗躍?を書きました。


まだ子供という事もあり、表立って動けないアル。それなら周りを使おう!という事ですね。はい。


40話到達という事で、次回は「ユリウス冒険譚」です。できれば、この話を投稿する日に同時投稿したいのですが、もしかすると翌日の投稿になるかもしれません。

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