38話 成長
「――アル、また背が伸びたみたいだね」
いつもの様にロンの稽古に付き合っていると、偶々その光景を傍観していたガンマにそう言われる。アリアとの関係性が修復されてから約2年が経過し、アルは10歳になった。
8歳の時は120cmくらいしかなかった身長も、今では150cmくらいにまで伸びており、身体面は順調に
成長している。
「ええ、最近体力の方もついてきたと思います」
「そう、みたいだね……」
ガンマは目の前で「ハアハア」と肩で息をしている自らの子とアルを見比べて、微笑しながらそう答える。
アルの体力が上がったのは、本当の事だ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
アルフォート・グランセル(10)
種族:人間
称号:グランセル公爵家三男 神童
HP:1,800/2,000
MP;50,000/50,000(上限)
魔法適性:火・風・水・地・闇・光
―――――――――――――――――――
レベル3(各+100/毎)
筋力:300
防御力:300
知力:300
俊敏力:300
スキル:片手剣(4) 魔力効率(3) 融合魔法(2) 礼節(3)
菜園(2) 教育(3) 体術(3) 筋力強化(2)
ギフト:鑑定眼 魔眼
加護:創造神の加護
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
心の中で「ステータス」と唱えると、視界に文字が映し出される。
MPは上限に達しているらしく、5歳の時から変わっていないが、HPは倍になっている。おそらく、HPついては年齢を重ねることで上昇していくのではないかと思う。
若しくは、訓練による増加もあり得るかもしれない。ただ、それならある5歳の時点でHPが500しかなかったことが引っかかる。もしかすると、5歳までは増えないのかな……。
HPとMPについてはまだはっきりとはわからない。ただ、その反面、ステータスの件で大きかったのは「レベルの上昇」だ。
レベルが2上がることで、各ステータス数値が軒並み「+200」され、ただでさえ高いアルの戦闘能力がさらに強化された。
また、レベル上げには魔物でも倒さなければならないのかと思っていたが、屋敷の中でも「戦闘訓練」や「魔法の訓練」、「勉強」などをすることで経験値が入るという事が分かったのも大きかった。
「アル兄様、速すぎて、時々、見えないよ」
肩で息をしているため、ロンの言葉はとぎれとぎれだった。しかし、そのアルの訓練についてきているロンも5歳にしては体力のある方だ。
アルは「鑑定眼」でロンのステータスを確認する。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ロン・グランセル(5)
種族:人間
称号:次期グランセル公爵家長男
HP:400/800
MP:500/500
魔法適性:火
―――――――――――――――――――
レベル:1(知+10,他+20/毎)
筋力:100
防御力:100
知力:100
俊敏力:100
スキル:片手剣(2) 礼節(1) 体術(1)
ギフト:スキル上昇(中)
加護:なし
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ステータス自体は、レオナルドのそれに近いかもしれない。
ただ、「ギフト」のスキル上昇(中)はかなり強力で、アルが教えたことをスポンジが水を吸い込むかのように吸収していく。
そのため、まだ5歳の段階だが3つのスキルが生えている。
今、アルは久しぶりに書庫へ向かっていた。
最近、アルの真似をしてか、ロンが勉強を頑張るようになってきているので、彼にぴったりの本を見繕ってあげるためだ。
「……やっぱり、そう上手くはいきませんね」
「そう上手くいくはずがないさ」
書庫へ向かっているアルの耳に、困り果てたガンマとレオナルドの声が聞こえてくる。
何かあったのかな……。
アルは気になって、扉の前で立ち止まる。聞き耳を立てるのは褒められることではないが、二人の困った声を聞いて無視できないほどに、アルは二人のことを慕っていた。
「――アル様。いかがなされました?」
話を聞き始めて、どれくらい時間が経っただろう。
アルは突然声をかけられたことで、ビックっと体を震わせ、声の主の方へ視線を向ける。
そこには、レオナルドとガンマが全幅の信頼を置いている、臣下のクランが立っていた。声の主がクランであったことで、アルはほっとする。
「なんだ、クランさんですか……。でも丁度良いタイミングです!」
アルはクランに耳打ちする。クランはアルから提案された言葉に耳を傾け、その提案の異質さに整った眉を寄せ、今しがた頭に入ったそれを受け入れる。
「……それをお二人に伝えればいいのですね?」
クランは、アルの顔をまっすぐ見て、そう聞く。アルの提案は突飛なものではあるが、中にいる二人にとっては一番欲している提案であろうからだ。
「ええ。でも、これはクランさんが思いついたという事にしてください。……その方がすんなりと話が通りますから」
アルはニコッと笑って、そう答える。クランはその笑顔から言い知れぬ違和感と底知れない知能の差を感じ取る。
アルは、クランにそれだけ伝えて、本来の目的である書庫へと向かった。
後は、あれを2人が受け入れてくれるかだけど……。多分、理解してくれるだろう。
アルは、2人の打ち出した政策によって、現状を打破するであろう自領を想像していた。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございます!
アルもようやく10歳になりました。日本の学校なら「2分の1成人式」をしている年ですね(笑)。
今までは、後書きでこれからの展望を書いたりしていましたが、あまりネタバレも良くないので、これからは、あくまで今回の作者の感想程度で留めていこうかと思います。