34話 姉の策略
今回は複数人からの視点で話が進みます。特に誰視点からかなど書いていませんが、出来るだけ分かりやすいように書いたつもりです。
もし分かりづらければ、感想の方で指摘していただけると助かります。これからの書き方の参考にさせて頂きたいと思っていますので!
「サントス公爵家からの招待状、ですか」
「そうだね。……行くかどうかはアルが決めなさい」
アルは現在、一つの問題を抱えていた。
◇
時は少し遡る。
サントス公爵家では、使用人たちが慌しく動いていた。その理由は、長女マリーの15歳の誕生会のためだ。
「マリー。貴女、誰か呼ぶ人はいないの?」
使用人が忙しなく動いている時、マリーとその母•メイリンは女子会を開催していた。
普通ならこの席にアリアもいるはずなのだが、アルに婚約話を断られてから「庭の手入れ」に没頭しており、時間を見つけては外に出ていく。
そのため、マリーが誘おうにも部屋にいないので誘えなかったのだ。
「私には婚約者もいませんからね~。特に親しい友達もいないしー」
マリーはネガティブな発言をする。しかし、彼女の顔には悲壮感など全くなく、そのことに対してそこまで深刻に捉えていないようだ。
それもそのはず。
彼女は男性にモテる。そして、同性にも嫌われるタイプでは無いため、誰が来ても退屈することは無い。ただその反面、特定の人物と親しくなることもなく、歳のわりに少し達観した物の見方をしていた。
「……貴女ならそう言うと思ったわ」
メイリンは少し呆れながらも、我が子のことは理解していた。
「あ、でも一人いるかも……」
マリーは突然妙案を閃いた。
「あら! それはどこの子なのかしら!?」
マリーの言葉に母メイリンは瞳を輝かせる。
我が子の、しかもマリーの恋話を聞けるとは!
メイリンの心は踊っていた。しかし、彼女の口から出された名前に耳を疑う。
「……グランセル公爵家の三男、アルフォート君かな」
マリーはアリアの驚く顔を想像しながら、ニコッと笑顔を見せる。
「はぁ……」
アルは招待状の件について考えていた。
内容は「長女マリーの15歳の誕生会」で、本来はアルが参加する必要はない。
しかし、誕生会の主役からの名指しらしく、手紙には「お会い出来ることを期待しております」と書かれていた。
実に断りづらい文面だ。
なぜ、マリーがこんな手紙送ってきたのか。理由は幾つか考えられる。
一つは、アリアとの縁談を断ったこと。
アルの目から見ても、アリアは気落ちしていた。そのことを根に持っている可能性は多分に有り得る。
二つ目は、ただ単純に顔合わせしたいから。
ただ、その理由は考えづらい。もしそうなら5年前のお披露目会にマリーも連れてきていただろう。
三つ目は、アルから聞き出したい情報があるから。
んー。でもこれはないか。もしそうなら、手紙でも事足りる。
──となると。
アルは自分のなかで選択肢を消し去ってしまい、そして気落ちする。
会ったこともない人から嫌われるとは。
「お姉様! 誕生日おめでとうございます!」
誕生会の席で、アリアは自らの姉に祝いの言葉を送る。
二人の関係性はマリーが学園に通いだしても、変わらず良好であった。
「ありがとう、アリア!」
マリーはいつも以上に笑顔を見せており、参加している男性陣から熱い視線が送られていた。
ただ、マリーはそのことに対して何処吹く風。挨拶にやってくる男性陣と適当に会話をしている。
本を読んだり、庭の手入れを頑張ったりと、毎日努力してきたが、アリアは未だ自分に自信がもてないでいた。
お姉様のように、誰とでも親しく話せるといいのだけど。
心のなかで、完璧超人である姉への劣等感を消せないでいた。
「貴方はアリアさんですね?」
突然、後ろから声がかけられる。姉にばかり気を取られていたアリアはその声に驚いてしまった。
「──失礼。驚かすつもりはなかったのですが、綺麗な女性を見つけたもので、……つい」
歳は大体15、6歳くらい。ブロンドの髪をしたいかにも軽薄そうな男性だった。
普通なら「お世辞はやめてください」だとか「お上手ですね」など返すべきなのだが、アリアは動揺してアワアワと反応するだけだった。
その反応を面白いと感じたのか、男性はしつこくアリアに話しかける。
「アリアさんは婚約者でもいるのですか?」
ほとんどの言葉がアリアの頭に入ってこなかったが、「婚約者」という言葉だけはすんなりと入ってくる。
「いえ……、婚約者はいません」
アリアはそう答えた。
ただ頭に入ってきた質問に答えただけなのだが、男性は違う風に捉えていた。
「今度、私の家でパーティーが行われる予定でして、アリアさんも来られませんか?」
アリアの答えに、自分への好意があると誤解した男性は、アリアをパーティーに誘う。
「いえ、それは……」
アリアは困っていた。なぜ、自分に絡んでくるのか。ただでさえ苦手な男性なのに、ここまでグイグイ来られると恐怖を感じていた。
「──貴方は確かクルーン様でしたね?」
アリアが恐怖で体を強ばらせていると、懐かしい声が聞こえた。アリアは声の主のほうへ視線を送る。
そこには、5年前から恋焦がれていた想い人、アルフォートが立っていた。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございます!
お待たせしました……。今回からはアリア回です!
いつ出そうかと悩んでおりましたが、このタイミングでは?と今回からラブコメへも突入させていただきます。
二人の運命はいかに……。