表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/220

34話 姉の策略

今回は複数人からの視点で話が進みます。特に誰視点からかなど書いていませんが、出来るだけ分かりやすいように書いたつもりです。

もし分かりづらければ、感想の方で指摘していただけると助かります。これからの書き方の参考にさせて頂きたいと思っていますので!




「サントス公爵家からの招待状、ですか」


「そうだね。……行くかどうかはアルが決めなさい」



 アルは現在、一つの問題を抱えていた。







 時は少し遡る。


 サントス公爵家では、使用人たちが慌しく動いていた。その理由は、長女マリーの15歳の誕生会のためだ。

 


「マリー。貴女、誰か呼ぶ人はいないの?」



 使用人が忙しなく動いている時、マリーとその母•メイリンは女子会を開催していた。


 普通ならこの席にアリアもいるはずなのだが、アルに婚約話を断られてから「庭の手入れ」に没頭しており、時間を見つけては外に出ていく。


 そのため、マリーが誘おうにも部屋にいないので誘えなかったのだ。



「私には婚約者もいませんからね~。特に親しい友達もいないしー」



 マリーはネガティブな発言をする。しかし、彼女の顔には悲壮感など全くなく、そのことに対してそこまで深刻に捉えていないようだ。


 それもそのはず。


 彼女は男性にモテる。そして、同性にも嫌われるタイプでは無いため、誰が来ても退屈することは無い。ただその反面、特定の人物と親しくなることもなく、歳のわりに少し達観した物の見方をしていた。



「……貴女ならそう言うと思ったわ」



 メイリンは少し呆れながらも、我が子のことは理解していた。



「あ、でも一人いるかも……」



 マリーは突然妙案を閃いた。



「あら! それはどこの子なのかしら!?」



 マリーの言葉に母メイリンは瞳を輝かせる。



 我が子の、しかもマリーの恋話を聞けるとは!


 メイリンの心は踊っていた。しかし、彼女の口から出された名前に耳を疑う。



「……グランセル公爵家の三男、アルフォート君かな」



 マリーはアリアの驚く顔を想像しながら、ニコッと笑顔を見せる。






「はぁ……」



 アルは招待状の件について考えていた。


 内容は「長女マリーの15歳の誕生会」で、本来はアルが参加する必要はない。


 しかし、誕生会の主役からの名指しらしく、手紙には「お会い出来ることを期待しております」と書かれていた。



 実に断りづらい文面だ。



 なぜ、マリーがこんな手紙送ってきたのか。理由は幾つか考えられる。



 一つは、アリアとの縁談を断ったこと。


 アルの目から見ても、アリアは気落ちしていた。そのことを根に持っている可能性は多分に有り得る。



 二つ目は、ただ単純に顔合わせしたいから。


 ただ、その理由は考えづらい。もしそうなら5年前のお披露目会にマリーも連れてきていただろう。



 三つ目は、アルから聞き出したい情報があるから。


 んー。でもこれはないか。もしそうなら、手紙でも事足りる。



 ──となると。



 アルは自分のなかで選択肢を消し去ってしまい、そして気落ちする。


 会ったこともない人から嫌われるとは。








「お姉様! 誕生日おめでとうございます!」



 誕生会の席で、アリアは自らの姉に祝いの言葉を送る。


 二人の関係性はマリーが学園に通いだしても、変わらず良好であった。



「ありがとう、アリア!」



 マリーはいつも以上に笑顔を見せており、参加している男性陣から熱い視線が送られていた。


 ただ、マリーはそのことに対して何処吹く風。挨拶にやってくる男性陣と適当に会話をしている。



 本を読んだり、庭の手入れを頑張ったりと、毎日努力してきたが、アリアは未だ自分に自信がもてないでいた。



 お姉様のように、誰とでも親しく話せるといいのだけど。



 心のなかで、完璧超人である姉への劣等感を消せないでいた。



「貴方はアリアさんですね?」



 突然、後ろから声がかけられる。姉にばかり気を取られていたアリアはその声に驚いてしまった。



「──失礼。驚かすつもりはなかったのですが、綺麗な女性を見つけたもので、……つい」



 歳は大体15、6歳くらい。ブロンドの髪をしたいかにも軽薄そうな男性だった。

 

 普通なら「お世辞はやめてください」だとか「お上手ですね」など返すべきなのだが、アリアは動揺してアワアワと反応するだけだった。


 その反応を面白いと感じたのか、男性はしつこくアリアに話しかける。



「アリアさんは婚約者でもいるのですか?」



 ほとんどの言葉がアリアの頭に入ってこなかったが、「婚約者」という言葉だけはすんなりと入ってくる。



「いえ……、婚約者はいません」



 アリアはそう答えた。


 ただ頭に入ってきた質問に答えただけなのだが、男性は違う風に捉えていた。



「今度、私の家でパーティーが行われる予定でして、アリアさんも来られませんか?」



 アリアの答えに、自分への好意があると誤解した男性は、アリアをパーティーに誘う。



「いえ、それは……」



 アリアは困っていた。なぜ、自分に絡んでくるのか。ただでさえ苦手な男性なのに、ここまでグイグイ来られると恐怖を感じていた。



「──貴方は確かクルーン様でしたね?」



 アリアが恐怖で体を強ばらせていると、懐かしい声が聞こえた。アリアは声の主のほうへ視線を送る。


 そこには、5年前から恋焦がれていた想い人、アルフォートが立っていた。






今回も最後まで読んでいただきありがとうございます!


お待たせしました……。今回からはアリア回です!


いつ出そうかと悩んでおりましたが、このタイミングでは?と今回からラブコメへも突入させていただきます。


二人の運命はいかに……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ