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幕間 不幸な少年

※アルバス視点です。




 ──彼を見つけたのは、本当に偶然だった。



 天界では、様々な世界の神たちが各々の世界の管理を行う。


 しかし、天界はそれぞれの世界に存在しており、他の世界とつながりを持たない。つまり、各々の世界に神の世界の「支部」のような空間を作り出し、神の数ぶんの天界が存在しているのだ。


 神の仕事は、その天界で各々の世界に存在する「魂」を選別することが主である。魂の選別は基本的にはその世界の神が責任を持って行うものであるが、それは万全ではない。



 これまで一つの世界に対して一柱の神が存在していた。


 しかし、この制度は遠い昔に消え去っていた。神々の中で世界の争奪戦が行われるようになったからだ。



 その原因は、神々が想像していないほどに高度な発展を始めた世界が誕生し始めたからである。


 元来、神による世界への干渉はご法度であり、世界の発展はその世界に住む住人の手によるものだけであった。


 しかし、そこに亀裂を生むのが魂の選別である。



 基本的には、前世の行動を悪事と善事に振り分け、その比率によって来世の幸福度が決定される。その幸福度には、来世での能力なども加味されていた。しかし、そこには一つ問題があった。


 それは、その世界の幸福度のバランス調整である。


 幸福な人生を歩む人間もいれば、その反対で不幸な人生を歩む人間もいる。そのバランスが崩れることで、世界のバランスまで大きく変化しかねない。


 それを防ぐために、異世界転生や神々による試練が行われるのだ。





「アルバス、すまないが『地球』の様子を見てきてくれ」



 天界で魂の選別を行っていると、そんな念話が送られてきた。


 他の世界に念話を送ることが出来るのは、神の中でも上位の存在だ。彼らの命令は絶対であるため、返答の必要もなく、その命令に従わなければならない。



 ──それにしても、『地球』か。



 地球は神々の世界のなかで、かなり特異な存在であった。


 人族が支配するその世界では、「科学」によって高度な発展を見せており、神々による世界の分割が著しく起こっている。


 特に『日本』では「八百万の神」が各々の分野で神が存在している。神であるアルバスですら、実際に一体何柱の神が日本にいるのかはわからなかった。


 そんな大勢の神々が存在する世界だからこそ、様々な問題を抱えている世界でもあった。



 アルバスは、すぐに地球へ転移する。


 いくら神といえど、他の世界に簡単に転移できるわけではないのだが、上位の神による命令であれば簡単に世界をつなげることが出来るのだ。



 アルバスが転移した先は、地球の神のなかでも親交のある「サリバン」の天界だ。


 サリバンは、日本で「インターネット」なるものの神として存在している。


 以前はアルバスの世界でアルバスの手伝いをしていた「見習い神」であった。見た目もアルバスのように年老いた老人ではなく、未だ髭も生えない若者であった。



「あ、アルバスさん。どうもっす」



 サリバンは転移してきたアルバスに全く驚いた様子はなく、そんな軽い挨拶をした。


 どうやら、アルバスが来ることを予想していたようだ。



「元気にやっとるようじゃのぉ。……さて、何があったのじゃ?」



 アルバスは少し思案しながら、サリバンに尋ねる。


 アルバスにわざわざ命令が下されるのだから、サリバンに関係することであることは想像に難くない。

 そして、わざわざアルバスを呼ぶのだから、何か手に負えない状況なのだろう。



「──実は、『日本』の神々に過干渉(かかんしょう)の疑いがあるっす」







 ──過干渉(かかんしょう)


 それは神がその世界の住人に過度な干渉を行い、世界に多大な影響を及ぼすことである。



「――どういうことじゃ?」


「まずは、これを見てほしいっす」



 サリバンは都内の事件発生件数の推移を見せてくる。しかし、多少増加傾向にあるものの、過干渉があると言いきれるほどの証拠とは言えない。



「確かに増加傾向にはあるが、過干渉が起こっているとは言い切れんのぉ」


「じゃあ、次にこれを見てほしいっす」



 そういってサリバンが見せてきたのは、さらに細分化した区別の事件発生件数の推移だった。

 

 これは……。



「なるほどのぉ。これは何か起こっておる」


「おそらく、この区のこの街で過干渉が起こっていると思うんすよ」



 そう言って、サリバンは一つの街を指さした。





 アルバスは、神具を使ってその街を見る。


 「望遠」が出来る神具だが、他の世界の神が使うとかなり多くの神力を使ってしまうため、長い時間はかけられない。


 しかし、他の世界の神でないと神界のなかでは証拠としては扱えないため、他の世界の神がこうして呼び出されるのだ。


 その街は都内ではそこまで栄えたところではなかった。ただ、活気はいいため、あれほど多くの事件が発生している街とは思えない。



「思っていたより、平和そうなところっすね」


「そうじゃな」



 アルバスはサリバンの言葉にそう返答しつつ「望遠」を続ける。


 すると、一つの建物に目が止まった。



「これは学校じゃな?」



 見るからに普通の学校だが、アルバスはこの学校に違和感を感じた。理由は簡単だ。



「異常な神力で満ちてるっすね。ここが元凶で間違いなさそうっす」





今回も最後まで読んでいただきありがとうございます!


今回は神であるアルバス視点でのお話です。


実は、序章を書いた時に書き上げたお話で、どのタイミングで投稿しようか悩んでいたものです。


幕間として、随時投稿していきたいと思っています!

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