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23話 武術と期待






 アルは5歳になった。


 この一年間は、自由時間がかなり確保されていて、アルは好きなように行動した。



 レオナルドは、王都での仕事が忙しいのか、なかなか帰ってこないし、ベルも宮廷魔術師の勤務のため王都に滞在している。そして、ガンマもレオナルドが帰ってこないことで領内の仕事を一人でこなさなければならないので、アルに会いに来ることはめっきり減った。


 また、カインも本格的に騎士団の仕事を行うようになり、週一のペースでしか会うことは無くなった。


 少し寂しくも思うが、アルは新しいことに挑戦する機会だと考えた。



 この一年でアルは自分流の武術の開拓を行った。


 この世界の武術は、地球の武術に比べてかなり遅れていた。というよりも魔法の存在によって、武術の必要性が低く見られているといったほうがいいだろう。しかし、それ故に地球にはない発展した分野もある。


 それが、魔力を用いた武術である。




「なるほど……。魔力を武器に流すとこうなるのか」



 アルは、修練場の裏にある森のなかで実験をしていた。アルの目の前には、大きな木が横たわっていた。



「よし! 次は、武器に魔力を流さず、体の魔力を循環させながらやってみようか」



 魔力を用いた武術の開拓を始めてから、大体一か月くらいだろうか。


 最初は武器に魔力を流すことすら困難であった。体の魔力を循環させる過程で、武器まで体の一部として魔力を流し込むのだが、そういった感覚をつかむまでに一か月かかってしまったのだ。



 そして、今日はこの森でその実験を行ったわけだ。



 結果は、大成功だった。


 前世で、少し薄い本を読んだときに魔力を武器に込めることで、威力を上げることができるというような話があったので、試したわけだが……。



 5歳児の体で大きな木を切り倒すことができるくらいには強化することができた。


 そして、次に武器には何の強化もせず、体内で魔力を循環させることで身体的強化が出来るのかについて検証していく。



 アルは、体内の魔力を高速で循環させる。


 魔力量を高めるための動きなのだが、アルは最近違う用途に使えるのではないかと考えるようになっていた。その違う用途とは、「身体強化」だ。



 この術について、以前は魔力の通り道を強くするだとか、魔力を生産する能力を高めるなどと考えていたが、実は違うのではないかと考えるようになっていた。


 色々と考えられる。例えば身体を強化しているなど……。



 魔力を生産する能力を高めているのも身体を強化していると解釈することもできるが、それだけではなく、身体自体を強化して、扱える魔力の上限を高めているのではないかという説である。


 といっても、魔力の通り道を強くすることで扱える魔力の上限を増やしているとも考えられるのだが……。



「よし、そろそろいいかな?」



 アルはある程度魔力を循環させると、地面に置いてあった剣を取り上げる。もちろん剣には魔力を流していない。


 そして、その剣でさっき切った木と同じくらいの大木を切りつける。木には大きな傷がついたものの、切り倒すことはできなかった。



「普通に切るよりは強力だけど、武器に魔力を込めるよりは弱いかな……」



 ただ、魔力を循環させることで身体を強化させることは可能なようだ。


 切り倒した木をある程度の大きさに切り分けて、少し開けた所に置いておく。



 ──いずれ、この木を使うこともあるかもしれないからね。



 アルは、早々に実験を切り上げて屋敷へ帰る。今日は新しいことに挑戦し、それが成功したことで大満足だった。









「なるほど……。魔力を循環させることで身体能力を向上させることができるのですね」



 アルは、この実験についてニーナに教えてあげた。


 ニーナは獣人族ということもあって元々力は強いのだが、魔力量を増やすことで他の獣人族より多い魔力を持っていた。だから、魔力による身体能力の強化は、彼女にとって最も効果のある物だった。



 最近、ニーナはアルのことを子供だとは思っていなかった。書庫にこもって本を読んでいることも知っているし、カインに稽古をつけるくらいに武術の才能があることも知っている。


 生まれた時から世話役として身近にいたために、アルの異常さを最も理解しているのがニーナだからだ。



「でも、これは僕とニーナさんとの秘密だからね」



 アルはニーナにそう言った。


 魔道具の件から、技術の漏洩には慎重に行動するようにしていた。しかし、ニーナは口が堅いし、信頼しているので、大体のことは話している。



「分かりました。このことは誰にも言いません」



 ニーナは真剣な顔でそう答える。しかし、内心ではアルが自分に秘密を話してくれることをうれしく思っていた。秘密を共有するくらいには自分のことを信頼していると感じるからだ。







「アルも5歳になったから、そろそろ神殿に行こうか」



 久しぶりに帰ってきたレオナルドが、晩御飯の席でみんなにそう伝える。その言葉に、アルの目は光り輝いた。



「そうですねぇ。アルのステータスも気になりますし、早めに行くべきかもしれませんね」



 母であるミリアもレオナルドの言葉に賛成する。ガンマも同意見のようで、ミリアの言葉にうなずいている。



「じゃあ、王都に行く準備をしておいてくれるかい」


「わかりました」



 はて、なぜ王都に行かなくてはならないのだろう。アルは周りの反応に疑問を抱いた。確か、カインやニーナはこの町で洗礼を受けたと聞いたけど。



「王都の大司祭様に見てもらったほうがステータスに恵まれるという都市伝説があるんだよ」



 ガンマがアルの耳元でそう教えてくれる。アルはガンマの観察眼に驚愕の顔をする。

 


 ──ガンマ兄様って、読心術でもきわめているのかなぁ……。



 ガンマの観察眼を少し不気味に感じていたが、それよりも魔法が使えるようになることへの期待が勝っていた。



 ──早く魔法が使いたい!



 そんな期待が。





今回も最後まで読んでいただきありがとうございます!


ようやく5歳になることが出来ました!


早く話を進めろ!って声が聞こえてきそうですが、少しずつゆっくり進めていくつもりですので、長い目で見ていただけるとありがたいです。


最近は、ブックマーク数も評価の方も伸びていて作者はとても感動しております。


次回からは、派手な展開になっていくでしょう!

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