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19話 魔道具と魔力量




 アイザック王国では火魔法こそが至高だと言う風潮があった。



 その原因は、勇者ユリウスが火魔法を行使できたことにあった。勇者ユリウスは、剣を用いた戦闘が多いのだが、唯一火属性に適性があった。


 そのため、王国内では火魔法こそが至高であると言う風潮が一般的であり、貴族たちは火属性の適性を何より求めていた。



 その点で、アルの作った魔法道具は王国の常識をひっくり返すものだった。



 熱狂的な火属性至高派からすると、アルの魔法道具はとても邪魔な存在であり、何かしらのアクションを起こすことは容易に考えられた。


 だから、ガンマは三人だけの秘密にしようと言ったのだった。








「……ただ、これはアルからの贈り物だからね。ありがたく頂くよ」



 ガンマはこの技術が漏洩することを危惧していたが、アルからの贈り物を手放す気は毛頭なかった。



「俺もこいつは頂いておくぜ」



 ベルもガンマと同じ考えだった。


 確かに、この技術が漏れることで、世界の価値観を180度変えかねないが、魔道具の管理をベルたちが気をつけていれば良い話だ。



「はい! これはお兄様たちへのプレゼントですから」



 アルは兄たちの気遣いに感謝する。もしかすると、受け取って貰えないのではないだろうかと思っていた。


 ちゃんと受け取ってもらえたので、それだけでアルは満足だった。



 ──しかし、これからは色々と気をつけないと……。



 アルは、この件からもう少し後先を考えて行動しようと決意した。








「ニーナさん! こんな魔道具も作ってみました!」



 アルは新たに作った魔道具をニーナにプレゼントする。あの件以降、二重魔法陣を用いた魔道具製作は封印した。


 しかし魔道具の研究は続行し、この魔道具で40個目になる。



「……今回の物はどういった物なのですか?」



 ニーナは、アルからの贈り物を受け取りそう尋ねる。


 作った魔道具を全てニーナに贈っているわけではないが、かなりの量をプレゼントしている。


 そのため、ニーナの部屋には数多くの魔道具たちが飾られている。殆どが実用的な物なので、ニーナとしても有難いのだが、最近は置き場所に困っていた。



「今回は髪を乾かす魔道具です!」



 アルが今回作ったのは「ドライヤー」だった。


 この世界では、髪の毛は自然乾燥させるのが常識だった。そのため、前世の時よりも髪の毛が傷みやすかった。


 そこで、ドライヤーを魔道具で作ってみたのだ。



「髪を乾かす魔道具……ですか?」



 ニーナは首を傾げる。聞いたこともない魔道具なので仕方がない反応だ。



「ちゃんと説明します」



 アルは仕組みから使用方法まで、丁寧に説明していく。



「この魔道具も風魔法と『着火』の応用です。魔力を風に変換し、『着火』で暖めて送り出すだけですね。これにより髪の毛が早く乾いて、痛みにくくなります!」



「なるほど……」



 アルの説明にニーナは納得する。


 魔道具について、あまり詳しくないニーナなので気づいていないが、これもかなり非常識なことだった。


 ガンマたちに渡した魔道具と今回の魔道具に書かれた魔法陣とでは、同じ魔法をベースにしているものの、少し異なっていた。



 全く同じ魔法陣を書くと、髪に火が放出されてしまう魔道具になってしまうからだ。


 それを回避するために、先に風を作り出して『着火』の火で温度を調整すると言う、高度な命令を魔法陣に書いたのだ。



 これは常人にはできないシビアな作業だった。









 アルは4歳になった。



 道具の作成に精を出していたアルだったが、4歳になって新たに模索するものがあった。


 それは、魔力量を増やす新しい方法だ。



 これまでは、体内の魔力を循環させることで魔力量を増幅させる「魔力の増加術」を欠かさず行ってきた。


 まだステータス魔法を行使できないので何とも言えないが、最近魔力が増加しているような感覚が得られていなかった。



 そのため、ベルが帰省した際に魔力量を増やす術はないかと聞いてみたのだ。


 もちろん、「魔力の増加術」を幼いころから使用してきたことはベルに伝えていない。だから、魔力の増加が感じられないなどは言わず、ただ興味本位で聞いているかのように心がけた。



「──それなら『魔力の増加術』だな。」



 やっぱり、その方法しかないのだろうか。



「そうですか……。それ以外の方法はないのでしょうか?」



 少しがっかりしながら、それ以外はないのかベルに尋ねる。



「無いことはないが……」



 ベルにしては珍しく歯切れが悪い返答だ。何か非人道的な方法なのだろうかと身構えながらも、アルの知識欲が勝ってしまった。



「それは、どのような方法なのですか?」



 アルはゴクリと唾を飲み込む。アルの目をみて、ベルは決心したように口を開く。



「それは……」



 ベルは焦らすかのように間を作る。


 さぞ、恐ろしい方法なのだろう。アルは息をすることを忘れるくらいに、ベルの返答に集中する。



「性こうs――」


「やっぱりいいです」



 ベルの言葉を遮るように、アルは言葉を発する。


 もしそれが本当のことだとしても、この人は4歳の子供に何を言おうとしているのか。



 アルのなかでベルへの好感度がほんの少しだけ下がった瞬間だった。





今回も最後まで読んでいただきありがとうございます!


今回は、少し緩いお話にさせてもらいました。

常に情報を詰め込んでも疲れてしまいそうだったので…。


最終部分は好き嫌いが分かれてしまいそうで少し怖いのですが、新たな試みとして…。


さて、次回はアリア目線で話を書いていきたいなと思います。


いつになれば、5歳になるのか…。気長に見ていただけるとありがたいです!

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