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17話 後悔と進展




 アルは耳を疑った。



 ──目の前の女の子が婚約者?



 いくら何でも早すぎないだろうか。


 アルはアリアを凝視する。アリアは見つめられ照れてしまったのか、また顔を真っ赤にして下を向く。



 ぱっちりとした大きな瞳に落ちついたブラウンの髪。鼻筋も綺麗に通っていて、将来は人を魅了するであろう容姿を持っている。



 しかし、人様の将来をこうも簡単に決めてしまってよいのだろうか。


 前世で、日本の常識を持つアルからすると、3歳で婚約者がいるという事は考えられないことであった。




「……アリア様、将来どうなるかはわかりませんが、婚約は解消させていただきたいです」









「アル、どうして断ったんだい?」



 お披露目会の後、公爵家は大忙しだった。


 公爵令嬢が暗殺されかけるということでお披露目会は途中で中止となり、参加者への状況説明やお詫びなどの後始末に追われていたからだ。



 そのため、アルの決断に対してレオナルドは話を聞くことができないでいた。


 しかし、後始末の一部をガンマやベルが担当してくれるという話になり、ようやく時間を作ることができたのだ。



「あの子は年の割にしっかりしているし、容姿も可愛いと思ったんだが」



 アルが沈黙していると、レオナルドはそう付け加える。



「アリア様はとてもいい人だと思います。でも、好きでもない人と婚約なんて可哀そうです」



 レオナルドの目から見れば、助けられたことでアリアはアルのことを好意的に思っているように映っていた。事実、アルに断られたことでアリアはひどく落ち込んでいた。



 しかし、アルが言うことも正しい。



 生涯を添い遂げるのに、好きではない者と結ばれてしまうなど同情したくなる。


 しかし、それがこの世界の常識であるのだ。



「それに、僕は三男ですし……」



 アルはレオナルドに聞こえないくらい小さな声でそう呟いた。










 レオナルドはアルの意思を尊重してくれた。


 婚約といっても、正式に決まっていたものではなかったらしく、アルが承諾することで成立という話だったようだ。


 しかし、断わり方はもう少し考えたほうがよかったのではないかと、今更になって後悔していた。



 アルが婚約話を解消してくれといった時、アリアは目に見えるほどに落ち込んでいた。


 お互いのためにも、ここで婚約の話は解消した方がいいという考えは今も変わっていない。しかし、好意の有無は関係ないにしても、異性から断られるのは辛いものだろう。


 その部分をもう少し相手を傷つけないように振舞えたのではないかという自責の念が、アルの心のなかに残っていた。



 しかし、今更後悔したとて後の祭り。これから同じような失敗をしないようにと心に誓った。









 お披露目会が終わってからは、平和な日常に戻った。


 午前中は、散歩がてらに調理場へ行き、その後中庭でカインと体を動かす。カインが訓練の日は、自室で魔力の循環を行った。



 そして、午後からは書庫へと足を運んだ。


 ただ、今のペースで読み進めるとすぐに書庫の本を読み終えてしまうので、三日に一日は書庫に行かない日を作ることにした。



 その日を使って、アルは魔法道具の開発に取り組んだ。


 魔法道具は、魔法陣を道具に書き込んだもので、魔法陣さえ書くことが出来れば、5歳未満であっても魔法の適性がなくても作ることが出来るらしい。


 そうはいっても、高度な魔法道具の作成には属性魔法を用いるようなので、アルが作れるのは低級のものだけだ。



 しかし、魔法道具はそこまで市場に出回らない。


 なぜなら、低級のものなら生活魔法などで代用できてしまうからだ。



 アルが現在作っている魔法道具は「ライト」の魔法を模したものだ。


 魔法陣を書くのはそれなりにシビアな作業であり、かなりの集中力を要する。そして、魔法の概念を知識として理解していないと、魔法陣を組むことすらできないのだ。


 例えば、「ライト」は魔法陣にあてた手から使用者の魔力を吸い取り、その魔力をいくつかの電子に変換する。そして、その電子たちを高速移動させることで摩擦を生み出し、光を発生させている。



 しかし、この原理を理解することは、前世での知識を持つアル以外には到底不可能だ



 そのため、市場に流れる「ライト」の魔法道具は、使用者の魔力によって発光する物体を召喚するという、大雑把で燃費の悪いものになっており、生活魔法を使用できる人間はもちろん、魔力量の少ない獣人族も使用しない。


 しかし、アルの作った「ライト」の魔法陣は、魔力を電子に変換し摩擦させるので、継続時間も長く、燃費もよかった。



 「ライト」と同じように「着火」の魔法道具も作り、メイドのニーナにプレゼントしたのだが、アルが思っていた以上に喜んでくれた。



 ニーナから話を聞いたのか、ガンマやベルたちも部屋にやってきて魔法道具をねだってきた。



 ニーナはともかく、ガンマやベルは自分で生活魔法を使用できるので、どうして必要なのかと尋ねたが、「研究のためだ」と返された。



 一体何の研究をするのやら。



 アルは何か研究の成果が出れば教えるという条件で、ガンマとベルにも魔法道具を作ることを約束した。






最後まで読んでいただきありがとうございます。


今回でお披露目会は終わりです。(いや、厳密に言うと前回で終わっていましたね…)


あんな可愛い女の子から婚約者だと告げられたのに、断わってしまうアル。


リアルならあり得ない話ですね!!


さて、次回はアルの趣味前回の話を書きたいと思います。

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― 新着の感想 ―
[一言] 転生物には定番だけど、それでも3歳児の言動にしては気持ち悪い
[良い点] 章をありがとう [一言] すべてのストーリーには独自のひねりと方向転換があります。アリアがヒロインであり続け、アルが将来彼女を受け入れることを願っています。ストーリーがどうなるか見てみまし…
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