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129話 3人の落ちこぼれ(2)

※今回は主人公視点ではありません。




 ソーマ達3人は陣形を保ちつつ、ダンジョンを進んでいく。


 太陽は丁度真上あたりにあるはずの時間帯だが、洞窟上になっているダンジョン内は暗く、一筋の光すらもさすことはない。張り詰めた糸がより引っ張り合う様に、ソーマ達は全集中を周りに向ける。



「……来た!」



 前方から何かの足音が近づいてくる。その足音は一つではなく、複数であることが分かる。


 少しして、その姿が目に飛び込んできた。



「――どけっ! 邪魔だ!!」



 ソーマ達の目に飛び込んできたのは、複数の魔物と彼らに追われて逃げてくる生徒達だった。彼らは紺色の制服を着ており、剣術科の生徒であることはすぐに分かった。


 生徒の人数は6名ほどで、後ろを追ってきている魔物の数は正確には測りきれない。しかし、6人もいて足止めさえしようとしないということから、その後ろに相当数の魔物の群れがいることは想像に難くない。



 彼らはソーマ達を見つけ、邪魔だと怒鳴りつけながらも3人に向かって走ってくる。そして、すぐに彼らの意図を理解する。



「……もしかして、なすり付ける気!?」



 クリスはこちらに向かってくる生徒に怒号を発する。すると、1人の男子生徒はいやらしい笑みを浮かべる。


 彼らは確信犯だった。


 数人の生徒がソーマ達の横を抜けて走り去っていく。彼らの中でも疲れなのか、身体能力に劣っているのか遅れている生徒たちもいて、全員が等しくソーマ達に魔物をなすりつけようなどと考えているわけではないようで、後方の者達は逃げることに必死になっており、3人の存在に気が付いてさえいなかった。



 しかし、これは冒険者としてしてはいけない行為の一つであった。


 トレインと呼ばれる、大量の魔物のヘイトを取って連れまわす迷惑行為であり、それによって他の冒険者に危険をもたらした場合は「除名処分」を言い渡されることもあるという。


 彼らが冒険者登録しているかは分からないが、剣術科の授業でもこのことは知らされているし、やってはいけない行為であることは知っているはずだった。



 ソーマは彼らを引き留めようとするが、彼らはそれに応じる様子はない。



「――ソーマ、ここで彼らと揉み合っても意味がない。構えて!!」



 リリーはそう言って目の前の敵に標準を合わせる。遅れていた他の生徒たちがソーマ達の近くに辿り着いた時、ようやく魔物の姿がはっきりと見え始める。


 そして、その数に背筋が凍りつく。


 ぱっと見えるだけでゴブリンやコボルトの大群が目に入る。その数はざっと10体以上はいる。



「……クリスさんはできるだけ足止めを。ソーマは一匹でも多く倒して!!」


「おう!!」


「了解した!」



 リリーの指示にソーマとクリスは素直に応じる。


 もし逃げるにしても、少しでも魔物の数を減らす必要がある。そうでないと、このトレインはより大きな規模になって手が付けられない状態になってしまうからだ。



 指示通り、クリスは剣で魔物のヘイトを取りつつ攻撃をかわしていく。隙を見つけては攻撃を繰り返し、出来るだけヘイトが他の2人に向かないように意識しながらポジションを取っていた。


 それに対して、ソーマは彼女にヘイトを向けた魔物を一撃で屠っていく。アルから貰った剣は相当な業物であり、ソーマのステータス上昇に伴って相当な攻撃力を彼に与えていた。


 

 しかし、現状はそう簡単なものではなかった。



「……まずい、溢れてきてる」



 じりじりとソーマ達の立ち位置は下がってきており、所々彼らの脇を抜けて魔物が抜け出てきている。


 その魔物をリリーが魔法で殲滅している状態だが、この状態をずっと続けるわけにはいかない。



「こんな時、アルフォート様なら……」



 リリーは同級生で自分の魔法の師でもある少年の顔を思い浮かべる。もし、アルがここに居たらどのような手を打つか。その事に思考を巡らせる。


 現状、数体の魔物が息絶えて地面に転がっている状態だが、その後ろにはまだ魔物が控えている。ただ、最後尾の魔物までは確認することができるようになった。



 ソーマやクリスは全力で魔物の相手をしており、他に手を回すことはできない。現状をひっくり返す可能性があるのはリリーの魔法だけだった。


 チラッと自分の魔力量を確認する。多少は減っているものの、まだ魔力に余裕がある。



「2人とも、一旦引いて!」



 リリーは二人にそう指示を出す。リリーの指はすでに動き始めていた。


 そんなリリーの姿を見て、2人は何か策があると確信し、近くの魔物を切り伏せて一気に魔物たちと距離を取る。


 リリーは二人が魔物と距離を取るのを確認して、最後の文字を書きつける。すると、彼女の前に2つの魔法陣が浮かび上がった。


 リリーは一つ目の魔法陣に魔力を注ぐ。すると、氷の刃が複数浮かび上がり、魔物たちを飛び越えて彼らの後方にあるダンジョンの壁に向かって飛んでいく。



 外れたのか?


 ソーマ達はそう思った。しかし、彼女の目的は他にあった。



 彼女は、二つ目の魔法陣に魔力を注ぎ込む。すると、大量の水が魔物たちを襲う。魔物たちはその大量の水に流されて、後方の壁に張り付いた氷の刃に突き刺さる。



「……はぁ、はぁ」



 魔力を大量に使い切ったリリーは荒い息のまま前方に視線を送る。


 しかし、目の前の光景は一変しており、あれだけ沢山いた魔物の影はそこにはなく、地面には彼らのドロップアイテムだけが大量に落ちていた。



「……すげぇー」



 ソーマは目の前の光景を見てそう呟く。


 これまで、リリーの魔法は幾度となく見てきた。ソーマからすれば普通に剣で切り伏せた方が早いのではないかと思う事も多々あった。


 しかし、今回の件は違う。彼女の大規模な魔法によって、自分たちでは無しえないジリ貧な現状を一気に解消してしまったのだ。



 リリーはようやく張り詰めた糸を緩めることが出来たのか、その場に倒れるように崩れ落ちる。



「大丈夫!?」



 崩れ落ちるリリーを見て、クリスは彼女の肩を持って支える。相当な魔力を消費したのか、彼女は少し乾いた笑顔をクリスに向ける。



「はい。ただ、ちょっと魔力を使い過ぎてしまいました」



 ちょっとなどではない。おそらく、ギリギリまで魔力をつぎ込んでいたはずだった。


 クリスは彼女の頭を軽く叩く。そして「無理しすぎ」と優しく微笑む。



「……それにしても、これ一体何匹居たんだ?」



 ソーマもリリーの肩を支えつつ、眼前に広がるドロップアイテムの数々に辟易しつつそう呟く。


 こうしてみると、異常な数の魔物と戦っていたのだと改めて分かる。



「……一応持てるだけ持って帰りましょう。課題は間違いなくクリアだろうし」



 クリスはそう呟く。既に持っている討伐証明のアイテムと合わせて見ても、課題をクリアしていることは明白だった。


 彼らは持てるだけのアイテムを各自の鞄に詰め込んで、ダンジョンの外を目指して歩き出す。



 この日、彼らは野外演習において一番の成長を見せたのだった。





今回も最後まで読んでいただきありがとうございます!


前回と引き続き、ソーマ達3人の話でした。何となく、3人の関係性を掴んでもらえると有難いです。


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