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11話 兄弟(1)

3日ほど空いてしまいましたm(_ _)m






「──俺はベル。お前の兄だよ」



 ベルは微笑みながら自己紹介する。しかし、その微笑みはガンマのような人の良さそうなものではなく、アルを値踏みするような気味悪さを含んでいた。ただ、アルにはその奥底にある本心が見えた気がしていた。



「やっぱりベル兄様だったんですね! そうじゃないかと思ってました!」



 アルはそう言いながら警戒態勢を解く。



「ベル兄様。王都はどのような所なのです?」



 ベルがどんな人物なのかは分からないが、アルは前から興味のあった王都の話をベルに尋ねた。興味や好奇心が勝ってしまうのはアルの欠点でもあり、長所でもあった。


 しかし、アルのことを知らないベルからすると意外であると感じていた。ベルは自分の異常性を誰よりも理解していた。



「……そうだな。俺は学園生だから、そんなに遊んだことはないんだが──」



 ベルは王都での生活を話しだす。






「へぇ、学園では属性魔法を重点的に学ぶのですか!」


「あぁ、稀に生活魔法の研究をやる物好きもいるがな」



 気づいたら30分以上話し込んでいた。アルの好奇心が強いのもあり、色々な質問をベルに投げていたのもあるが、ひとえにアルの話術の上手さによる部分が大きかった。


 ベルもアルに対して全く警戒心を解いていた。



 ──アルは他の奴とは全く違うのかもしれない。



 そんな感情が胸に込み上げていた。


 しかし、そんなベルの気持ちに水を刺すように扉がノックされる。

 


「はい!」



 アルはそのノックに答える。



「アル様、お食事の時間です」



 よく知った声だった。自分を遠くからヒソヒソと小馬鹿にした声。



 扉が開かれて、そこに居たのは幼少期のベル付きのメイドだった人族だった。


 そのメイドはベルを見て大きく目を見開く。まさか、ベルが既に帰ってきていて、アルの部屋にいるなど考えもしなかったからだろう。



「……ベル様、お帰りになられていたのですね」



 そのメイドはベルにその一言だけ放つ。そして、アルには笑顔を見せその場を離れていった。



 ──やっぱり、ここは俺の居場所じゃないな。



 ベルの心はまた黒くなっていく。


 ベルは、魔法の才能だけは進化していて、自らの心は閉ざされたまま成長していないと感じていた。



 ──自分は魔法以外必要とされていないのでは?



 そのことが心の中で反駁し、彼を何度も沈ませる。




「──兄上! 一緒に食堂へ行きましょう!」




 アルはベルの手を取った。



 ベルは突然握られた手に驚いた。その手は、小さくて頼りない。しかし、ベルに顔を上げさせ、前へ進ませる程の温もりがあった。



「ダンさんのご飯は大陸一です。新しいメニューもすごく美味しいんですよ!」



 アルは笑顔を向ける。


 アルとて、兄に会えて嬉しかったのだ。

 勿論、メイド達の反応からベルへの不信感も多少は抱いていたが、話してみてそれは杞憂だとわかった。



 ──彼は、とても優しい人だ。



 アルはそう確信していた。



 使用人達とベルとの間に、どの様な確執があるのかは分からないが、その誤解がいずれ解けるといい。


 アルはそう思っていた。







「ベル! 帰ってたなら顔を見せに来てくれよ」



 食堂に入ると、ベルを見たガンマが少し悲しそうにそう言った。



「……悪い。アルがどんな奴か気になってたから。今度からはちゃんと兄上のとこにも行くようにするよ」



 ベルはガンマに素直に謝った。


 ガンマは目を見開いて驚いている。


 今までのベルなら一瞥して「ふんっ」と鼻を鳴らしていただろう。何かが彼を柔らかくさせたのだ。そして、ガンマはその何かについて、すぐに勘づいた。



「……ようやく、見つけたんだね」



 ガンマのその独り言は地獄耳を持つアル以外には誰の耳にも届いていなかった。








「……美味しい」



 ベルはハンバーグを食べて、そう呟いた。思わず口からこぼれ出した素直な感想だった。



「これは最近ダンさんが開発した『ハンバーグ』という物らしいよ」



 ベルの感想にガンマは嬉しそうにそう付け足す。ベルはガンマの言葉を聞いて、感想を口に出していたと気づいたようで、少し顔を赤らめていた。



「ハンバーグ以外にも、ダンさんは色々と開発してますよ! どれもとても美味しいんです!」



 アルはダンを褒めたたえる。アルは何の迷いもない真っ直ぐな笑顔をベルに向けた。



「そうなのか?」



 アルの笑顔を見て、ベルも不思議と笑顔になれた。心を渦巻いていた真っ白な霧がどんどん晴れて行くような、そんな感じだった。







 その夜、ベルは久しぶりに自分の部屋で就寝した。



 はっきり言ってこの屋敷にはあまりいい思い出はなかった。自分の劣等感を感じて生活した毎日はとても苦しかった。そのため、この部屋では気持ちよく眠れた試しがない。


 誰かに当たってその鬱憤(うっぷん)を晴らしても、その後に来るのは激しい自己嫌悪と周りからの恐怖や憎悪だった。




 しかし、アルにあったこの日からベルはぐっすりと眠ることが出来る様になったのだった。




後書きって何を書けば良いのか分からないのですが、これから作者の感想とか書いていきたいと思います!


これまで少し伏線紛いの部分もあるかと思いますが、できるだけ回収したいとは思ってます!


ただ、作者の技量は乏しいので、あまり期待はしないでください( •̥ ˍ •̥ )

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[一言] 使用人とベルの間の問題が将来解決されることを願っています。
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