10.5話 ユリウス冒険譚(1)プロローグ
作中の『ユリウス冒険譚』をはさんでいきたいと思います。
大体10話に1回くらいの予定です。
昔々、アルタカンタは魔族によって支配されていました。
世界は暗澹とした暗闇に覆われ、人々は絶望を胸に、次は我が身と不安を抱えながら中央から離れていきました。
魔族は大陸の西から突然現れました。魔族たちは数こそ多くありませんでしたが、一騎当千の力を持ち、瞬く間に中央まで攻め入ってきたのです。
勿論、人間や獣人といった人族たちは抵抗しました。しかし、魔族の中には「魔王」と呼ばれる規格外な存在があったのです。
人族の領土は魔族たちに蹂躙され、中央から逃げ出すように方々は散っていきました。
魔族から逃げながらも、人間たちは小さな集落を作り、それぞれに復興へ向けた活動をしていました。
中にはそれなりに大きな集落もでき始め、その集落は「国」と言っても差し支えないほどに発展しました。
人々は着実に反抗するための力をつけていました。
しかし、魔族も愚かではありません。
人間が力をつけるのを待ち、僅かにも見えた人々の希望を簡単に捻り潰してしまいました。
人間たちは、以前よりも深い絶望の淵に追いやられることになるのです。
ですが、魔族は他種族を滅ぼすことはできませんでした。
なぜなら、魔族が生きるには他種族の「絶望」が必要だからです。
そのため、魔族は彼らを搾取しつつも絶滅しない程度に生かしていなくてならなかったのです。
そんな生活が十数年続きました。
人々は絶望から抜け出せず、沈んだまま生き続けてきました。東西南北に集落を作り、助け合いながら生活しています。そして、時々やってくる魔族たちに怯え、反発することもできずにいました。
彼らは生きる意味を見失いかけていました。
しかし、彼らに「最後の希望」が舞い降りてきたのです。