100.5話 ユリウス冒険譚(10)勇者・聖女編
※『ユリウス冒険譚』の続編です。
読み飛ばして頂いても本編が分からなくなることは無いと思います。
勇者ユリウスと聖女フィオネたち一行は、神託に従って『べランゲの谷』に向かっていました。
その間、2人は色々な事を話しました。家族のこと、村民のこと、これまでの旅路のこと……。
「それは大変でしたね」
勇者ユリウスの話を聞いて、聖女フィオネは彼の苦労を労います。
イノシシの魔物も彼らに同行しているため、最初の内は周囲の騎士たちにかなり驚かれましたが、今では仲良く一緒に歩いています。
見た目こそ獰猛な獣ですが、勇者ユリウスとの出会いで彼は変わったのです。
勇者一行は、『べランゲの谷』に到着しました。しかし、予想外の光景に固まってしまいます。
「これが『べランゲの谷』ですか……」
聖女フィオネは眼前に広がる広大な峡谷に息を飲みました。
向かい側は、目視でようやく見えるぐらいは離れており、峡谷自体の長さについては全く把握できませんでした。
伝え聞いた話によると、『べランゲの谷』を直接超えることは不可能であり、その両端に聳え立つ『べランゲ山脈』を越えるのが一般的でありました。
「流石にこの峡谷を越えるのは難しそうですね」
勇者ユリウスは聖女フィオネの提案を受け入れ、『べランゲの谷』を直接越えることは諦めて、『べランゲ山脈』を越えて『盟主の王城』を目指すことにしました。
勇者一行は『べランゲの谷』に沿って北側に進んでいきました。
途中、何度か魔物との交戦がありましたが、勇者ユリウスと聖女フィオネに仕えていた騎士たちによって討ち取られていきました。
そして、難なく山脈に到着します。
勇者一行が山脈に足を踏み入れると、彼らを矢が襲います。
勇者ユリウスたちはその矢を防ぎつつ、攻撃をしてきた方向を特定しました。そして、その攻撃してきた者との距離を一気に詰め、その者を捉えました。
襲撃者は黒色のフードで顔を隠していたので、それを除けてみると緑色の髪と長い耳が露になりました。体格を見るとまだ幼そうに見えました。
「どうして攻撃をしてきたのですか?」
「……そのように命令されているから」
勇者ユリウスが尋ねると、その者はただそれだけを答えます。
声色は女性のものでしたが、目には生気などなく、もはや命令を受けて行動する傀儡のようでした。
そんな中、聖女たち一行が勇者ユリウスに追いついてきます。
「私は聖女フィオネ、そして彼こそが世界を救う勇者ユリウスです」
聖女フィオネは勇者ユリウスによってとらえられている彼女に近づいていき、その場に座って彼女と同じ目線になりながら名乗りました。
すると、彼女の目に生気が戻っていき、閉じ込めた水があふれ出るように、彼女の口が開いていきます。
「それは本当か? ならば、『べランゲの谷』に居座っている魔族の討伐をお願いしたい」
彼女は縋るように、そう言います。
「魔族ですか?」
聖女フィオネは少し怪訝な表情を浮かべながらそう呟きます。ここまで谷によって移動してきたが、魔族に襲われていないためです。
「その魔族は『べランゲの谷』の南方にある私達の同胞の村を拠点として谷越えしようとする人間を――」
彼女の話を聞く限り、どうやら魔族は『べランゲの谷』の南方に拠点を構えており、谷を越えようとする者を始末する役割を担っているそう。
「分かりました。僕たちがその魔族を討ちましょう」
彼女の訴えを受けて、勇者ユリウスはそう宣言します。
「――もし、打ち滅ぼすことが叶わないなら、こちらを」
そう言って彼女は背中に所持していた剣をユリウスに渡します。その剣は刀身が黒い、魔剣でした。
「この剣は魔の者を封印する力があります。しかし、封印には神の加護が必要です。あなた達なら有効に使えるでしょう」
彼女には神の加護がないため、封印が出来なかったらしい。相手が勇者であると聞き、その剣を託す気になったのです。
「分かりました。必ず」
勇者ユリウスは魔族を討つことを彼女に誓います。そして、勇者一行は南の山脈に向かって移動し始めました。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございます!
ユリウス冒険譚も10話目に到達し、「あー、100話到達したのか」と実感しております。今話を予約投稿しようとしている今現在、総合ポイントが1090くらいです。本当にありがとうございます!!
未だ日間ランキングに入れるほどではないのですが、最近のポイントの伸び方に驚いている作者であります。
また、誤字報告誠にありがとうございます<(_ _)>
一応間違えないようにと意識しているつもりなのですが、なぜか増えていく誤字脱字……。何故だろう。
これからも、どうかよろしくお願いします<(_ _)>




