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100話 落ちこぼれ

11/15 ステータス少し弄りました<(_ _)>




 朝7時頃、既に学生服に着替えたアルは学生寮の1階にある食堂で朝食を取っていた。周りを見渡すと、アルのように既に学生服を着た者は少数派であり、ほとんどが未だ私服のままだった。


 朝食は白パンとシチューだった。白パンはそれなりに柔らかく、シチューの味付けもしっかりとされている。貴族が食事をとる寮という事もあり、生活水準は高いようだ。



 アルが黙々と食事をしていると、一人の女子生徒がこちらに近づいてくる。少し明るい茶髪に、キリっとした瞳。朝早くに運動してきたのか、顔にはほんのりと赤みが指している。



「貴方がアルフォート君ですか?」


「はい、そうです」



 その女子生徒はアルの所へ一直線にやってくると、そう尋ねてくる。

 昨日、寮母のクローディアに尋ねたところ、学生寮に入寮しているアルの同学年は3人だけらしい。平均しても、1学年に4,5人くらいしかいないという事なので、1週間でほとんどの人の顔を覚えているのだろう。

 そのため、見知らぬ顔=アルフォート・グランセルと結びつけたのだろう。



「私はクリス・ブラウン。貴方と同じ剣術科です。先生から貴方をクラスに案内する様に仰せつかりました」


「それは本当に助かります」



 アルはクリスにそう言って頭を下げる。「え?」と小さな声を上げるクリスだったが、すぐにもとのクールな表情に戻す。



「……8時には寮を出ますので、剣を持参して寮前に来てください」



 クリスはそれだけ言い残してアルの下を離れる。

 そして、食堂でアルと同様にパンとシチューが入った器を受け取り、食堂の片隅に座ってそれを食べ始める。



「……つんけんしてるけど、案外素朴な人みたいだ」



 アルは、彼女を軽く観察してそんな事を呟く。パンを食べた時の表情の変化は、彼女の人となりを色濃く映し出していた。












 8時前に寮前に出てきたアルだったが、既にクリスがそこには待機しており、アルの姿を見つけてすぐに歩を進め始める。


 アルは置いていかれそうになって少し歩くスピードを上げて彼女の隣に移動した。



「……剣術科エリアは学生寮の真反対、北西部にあります。ちなみに、北東部が魔術科エリアですから、間違えないように気をつけて下さい」



 アルたちは寮を出て学園の中心に向かって歩きだしていた。ちなみに、学生寮は南東部にあるため、学生寮から北に進めば魔術科のエリアに着くという事らしい。


 建物の名前やその位置を口頭で説明を受けながら二人は剣術科エリアに向かっていた。



「そういえば、クラス分けはどうなっているんでしょう」



 アルはふと疑問に思ったことを口にする。


 アイザック国立学園。それがこの学園の正式名称だ。この学園には、「剣術科」と「魔術科」の二つの学科に分かれており、基本的にはその学科ごとに設定された必修科目を取りつつ、他の授業は各自が自由に選択できるようになっている。


 しかし、その中でも「クラス」というものがある。


 クラスはA~Eの5クラスに分けられており、入学時試験の成績によって優秀な者から順にA~Eクラスに分けられていく。


 アルが普通に試験を受けていたならば間違いなくAクラスに入れただろうが、試験を受けなかったことでクラス分けがどのように処理されたのか気になっていた。



 これまで殆ど表情を変えずに説明を続けていたクリスだったが、ここで少し眉間に皺を作る。そして、重々しく閉ざされた口を必死にこじ開けながら、言葉を紡いでいく。



「――貴方は剣術科Eクラスに入っています。……私と同じ、『落ちこぼれ組』ですよ」


「……ふーん、『落ちこぼれ組』ですか」



 落ちこぼれ組。


 確か、ベルが以前話していた気がする。



 学園には魔術科を優等生とする風潮があった。

 そして、剣術科は魔術科に入れなかった劣等生として捉えられていた。確かに、魔術科を目指していた者の中から大量に剣術科に流れてくるというサイクルがある以上、それは決して間違ってはいないのかもしれない。


 そして、その剣術科の中でも成績が悪かったEクラスを、総じて「落ちこぼれ組」と呼ぶそうだ。



 それこそが、隣を歩く彼女の表情を暗くした原因なのだろう。しかし、アルには彼女とは別のものが見えている。



「そこまで深刻にならなくてもいいと思いますよ。クリスさんには『才能』がありそうですしね」


「慰めはおやめください。私に才能何てあるわけがないではないですか」



 アルの言葉を世辞と受け取るクリス。しかし、どうも瞳の奥には絶望が渦巻いていて、自分の可能性を全く見ようとしていないようにアルには映った。



「――そうですか。勿体ないですね、自分の可能性に目を瞑るなんて」


「貴方に何が分かるというのですか!! ずっと劣等生として生きてきた私の人生を、『神童』としてもてはやされている貴方なんかに分かるわけがないでしょう!」



 アルの一言に、クリスは目に涙をためながらそう言う。しかし、そこまで言ってすぐに我に返った。



「……すみません。非礼をお許しください」


「別に気にしていませんよ。それに、僕も少し配慮が足りていませんでしたね」



 われに返ってさっきの非礼を詫びるクリスに、アルも謝罪を返す。

 今回の件にはアルの不注意な言動があったことは否めない。さっきのことだって、別にアルの心の中で留めておくことだって出来たのだ。


 しかし……。


 アルは、隣をしょんぼりと歩くクリスを見つめながら、小さな声で呟く。



「……本当に勿体ない」




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




クリス・ブラウン(12)

種族:人間(種族値:B)

称号:ブラウン男爵家次女 劣等生

HP:900/1,200(1,500)

MP:1,600/1,600(2,000)

魔法適性:水

罪状:なし

状態異常:なし


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


野心:38 忠誠度:0

レベル:3(知+25、他+15/毎)

筋力:130(104)

防御力:130(104)

知力:150(120)

俊敏力:130(104)

スキル:片手剣(1) 礼節(2) 手芸(3)

ギフト:熱血(感情の起伏によって知力と筋力に補正)

    封印の珠(常時ステータス値×0.8、

        解放時ステータス値×1.5)

加護:なし



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




彼女は、正にバーサーカーになり得る逸材だ。




今回も最後まで読んでいただきありがとうございます!


11月になり、私事ではあるのですが少しずつ忙しくなってきており、更新速度が著しく落ちるかもしれません。2日に1話くらいを目標に書いていきますが、もしかしたらもっと少ないかも……。


必ず書くことは辞めませんので、もう少しお付き合い頂けると嬉しいです<(_ _)>

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