表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
99/146

87.沖縄

 香織達を乗せた飛行機は、順調に沖縄への道のりを進んで行った。


「何か、天気悪い?」

「そうね。この前より、雲が多い気がするわ」


 今回も香織は外の景色を楽しんでいたのだが、沖縄の近く、大体九州くらいの場所に来ると、いきなり周りが雲に覆われてしまった。


「一応、パイロットの人には、地図を貸してるけど大丈夫かな?」

「そこは、任せるしかないわね。それにしても、少し黒い雲ね。雷雲かしら?」

「うげっ……危なそう……」

「普段、雷を操ってる香織が言う?」

「自分で作るのと、自然に出来上がってるのは、違うもん。危ないから、晴らした方がいいかな?」


 香織は、この前の大雪山国立公園で、自然発生、あるいは誰かが作り出した雲を完全に散らす方法を会得している。


「簡単にできるものなのか?」


 ちょうど話が聞こえてきた玲二が、香織に訊く。


「出来るよ。やる?」

「頼めるか?」

「分かった」


 香織は、飛行機を覆ってくる雲を散らしていく。すると、地上の様子が分かるようになった。


「あの雲って、噴火雲だったんだ……」


 香織達の視線の先には、噴煙を撒き散らしている火山があった。


「何だっけ? 桜島?」

「地図的には、そんな感じがするわね。ただ、世界の変異で変わっている可能性もあるわ。得に、九州には火山が多かったはずだもの」

「そうだったっけ? じゃあ、九州に住むのは、厳しいのかな?」


 香織が考えているのは、何度も噴火し続けていたら、住む場所が無くなるのでないかということだった。


「どうかしらね。噴火の度合いによると思うわよ。昔も、桜島は何度も噴火していたんだから」

「それもそうか」

「それにしても、噴煙の中に突っ込んでいるのに、この飛行機はよく無事でいられるわね?」

「ふふふ……」


 咲が疑問に思っていると、おもむろに香織が胸を張って笑い出した。


「そこの問題も、もちろん解決済みなのさ! 最初の設計図の段階でね!」

「そういえば、生産職の皆が、刻印の時に鬼気迫っていたな」

「細かいからね! 魔力を使った濾材みたいなのが張られてね。火山灰だとか、細かい粒子を完全にシャットアウトするんだ。それでね。シャットアウトした粒子は、一定時間毎に取り除く機構も取り入れたの。これはね。風属性の魔法で、表面をこそぐ感じなんだ。他にもね……」


 香織は、飛行機に備わっている機能を、咲に説明し始めた。自身が設計したものなので、基本的な機能は把握していた。咲は、香織の話をきちんと聞く。玲二は、苦笑いしつつ、その場から去って行った。


 咲が、香織の生産話を聞いているうちに、沖縄の上空にまで来た。


「空港があった場所に近づいて来たぞ」

「本当?」


 香織は、話を中断して、窓の外を見る。視線の先には、新千歳空港と同じような感じの空港があった。


「あっ、また、私が先に降りて、空港を直すよ」

「そんなにまずそうか?」

「うん。新千歳空港と同じくらいだと思う」

「そうなのか。すまん、頼んだ」

「いいよ」


 香織は、咲を連れて出入口に向かう。


「じゃあ、咲、よろしくね」

「分かったわ」


 香織は、北海道の時と同じように飛行機から飛び降りた。


「わぁぁ……」


 思わず、香織の口から感嘆が漏れてくる。香織の視界には、一面透き通った海の姿があった。


「すごい……向こうと全然違う……」


 ずっと見ているわけにもいかないので、香織は、体勢を立て直して、靴に魔力を集中させ、空中を歩いていく。


「早く、直さないと」


 香織は、空港に着地して、空港全体を自身の支配下におく。そして、滑走路を平面に直していく。


「よし、オッケー。空港全体を支配下にしたけど、あまり、魔力の消費しなかったなぁ。取りあえず、端っこの方によって待ってよ」


 香織は、即席で椅子を作って待つことにした。香織が空港を直して十分後に、飛行機が着陸した。


「今回は、めっちゃ早く着陸したなぁ。慣れてきたのかな?」


 素早く降りてきた咲が、香織に駆け寄る。


「大丈夫だった?」

「大丈夫だよ」


 今回は現地の人達からの襲撃はなかった。周りに住んでいないのかもしれない。


「それにしても、かなりボロボロね」

「そうだよね。羽田や新千歳と比べたら、かなりヤバいよね」


 空から見ると、あまり分からないけど、地面の抉れ方や建物の崩壊具合が、今までの空港と比べものにならない。


「これ……自然に壊れたわけじゃないよね?」

「そうね。どちらかというと、攻撃を受けたという方が正しく思えるわね」


 香織達が、空港を見回していると、玲二達も降りてきた。


「どうなってるんだ?」

「分からない。でも、異常なのは確かだよ」


 そこに、パイロットの冒険者が慌てて降りてきた。


「す、すみません! これを見て下さい!」


 パイロットの冒険者、金崎護(かねざきまもる)は、香織から借りた地図を広げた。


「ん? 沖縄の地図だよね?」

「そうだな。これがどうかしたのか?」

「沖縄の形が少し変なんです」


 香織と咲、玲二は、地図をよく見てみた。すると、自分達の記憶しているものと若干違うことに気が付く。しかし、土地の形が変わるのは、世界が変異したときに起きる事の一つだ。少し形が違うくらいなら、何の不思議もない。


「よくある事じゃないか?」

「いや、違うよ。世界の変異で、形が変わる事は多いけど、こんなに、奇妙な事にはならないと思うよ」


 香織は、地図のある部分を指さす。そこは、一直線に溝が出来上がって、水が流れ込んでいる場所があった。


「これ、もしかしたら、リヴァイアサンかもしれない……」

「でも、この前戦ったときは、こんな威力なかったと思うわよ?」

「これが、本来の一撃なのかもしれないよ。あの時は、海が遠かったから」

「それじゃあ、海を侵犯したから、襲われたかもしれないということ?」

「可能性的にはね」

「まずは、人の捜索だな。少人数で、捜しに向かうぞ。まだ、リヴァイアサンの仕業と決まったわけではないからな」


 玲二は、集まっている冒険者達の元に向かい、班分けをしていっている。


「香織は、どう思っているの?」

「リヴァイアサンがやったかどうかってこと?」

「ええ」

「どうだろう。正直、リヴァイアサンが、態々暴れるのかなって思うんだ」

「?」


 咲は、香織の言っている事が分からず、首を傾げる。


「だって、私達と眼が合っても何もしなかったんだよ? 海を侵犯したからといって、地上にまで攻撃してくるのかなって」

「地上に、攻撃をする理由があったということ?」

「うん。私は、赤龍じゃないかと思ってる」

「赤龍……なるほど、ここには、米軍基地もある。そこから飛び立とうとすれば、赤龍が黙っていない。そして、自分の攻撃範囲に入ってきた赤龍をリヴァイアサンは、見逃さなかったということね」

「あくまでも予想だけどね」


 香織の考えは、何の根拠もない。これからの探索で何かしらを見つけなければならない。


「香織達は、香織達で行動するで良いか?」

「うん。大丈夫。一回一回、空港に戻ってくる?」

「いや、期間を決めての探索にした。一週間で戻ってきてくれ。それとは別に、人を見つけたら、出来れば空港まで連れてきてくれ。強制はしなくていい」

「分かった。じゃあ、先に行ってるね。焔、星空、行くよ」

「はい」

「うん」


 香織達は、四人で空港の外に出て、沖縄の街の中に足を踏み入れた。

読んで頂きありがとうございます

面白い

続きが気になる

と感じましたら、評価や感想をお願いします

評価や感想を頂けると励みになりますので何卒よろしくお願いします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=312541910&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ