85.大雪山国立公園攻略
香織達が頂上で少し待っていると、玲二達が登ってきた。
「俺達が最後だったか。あの龍は?」
「倒したよ」
「そうか。それで、核の方はどうなったんだ? アナウンスがないという事は、まだ破壊してないんだろ?」
「その核なんだけど、どうやら、ここの下にあるみたいなんだよね。だから、坂本さん達を待ってたんだ。下手な事して、山崩れたら、下にいるかもしれない坂本さん達が危なくなるから」
仮に、香織が頂上を吹き飛ばしていれば、その落石などが玲二達に降り注いでいたかもしれないのだった。
「なるほどな。だが、俺達がここに来てもどのみち邪魔なんじゃないか?」
「ううん。吹き飛ばすような事はしないから大丈夫。山は崩すけど」
「……そういうことか」
香織の言っている事が、よく分からなかった玲二だったが、すぐに何をするつもりなのか理解し、香織から少し離れた。
「じゃあ、皆も坂本さんの近くにいてね」
香織以外の皆が一箇所に固まっている。
「それじゃあ、いくよ!!」
香織が足元に大きな魔法陣が現れる。
「このくらいの範囲で大丈夫かな。よいしょっと!!」
香織は、咲達がいる場所を補強しつつ足元をの土をどかしていった。いきなり山が形を変えていく様を見せられて、大紀を初めとした現地民の皆が口をあんぐりと開ける。
「結構深くまで掘らないといけないのかな?」
表層を取り除いただけでは、核が見えなかったので、思いっきり抉ってみることにした。すると、かなり下の方に核の姿が見える。
「星空、お願い!」
「うん」
足場の端っこから、核に向けて星空が矢を放つ。その矢は、黒い炎を纏っており、核に突き刺さると、大きな爆発を起こして核を砕いた。
「じゃあ、元に戻すよ」
香織は、山を元の姿に戻していった。そして、完全に元に戻した後に、崩れないように固める。
「もうオッケーだよ」
「どうなってるんだ……」
大紀は、今見たことが信じられないという風に呟いた。その直後、空から声が降ってくる。
『フィールドダンジョン『大雪山国立公園』の攻略を確認しました。攻略者全員に進化の権利を贈与します。攻略の立役者である桜野香織、高山咲、人造人間・星空に、後日別個で報酬を授与します』
フィールドダンジョンを攻略した証拠とでも言うべき、空からのアナウンスが響き渡る。だが、今回はそれだけじゃなかった。
『朱雀を倒したことで領空権が委譲します。アジア・中東の領空権が朱雀から王皓然に委譲。朱雀討伐の功労者である、王皓然に報酬として進化の権利と武具を授与します。
支配者の討伐を確認しましたので、一部の情報を解禁します。モンスターと戦うための力として、ステータスとスキルを付与しました。ステータスは、種族としての力を表したものになります。この限界を突破した者には、限界突破のスキルが付与されます。そして、『資格を有する者』は、ステータスを剥奪され、それ以上の力を有することになります。現在開示出来る情報は以上となります』
続けて響きわったのは、権利所有モンスターの討伐報告と情報開示だった。
「……どういうこと?」
「つまり、私達の規格外のステータスより上があるってことだと思うわよ」
「資格って?」
「それは、分からないわね。私か香織が満たしているなら、すでにステータスがなくなっているはずだけど……」
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マスターアルケミスト
スキル:『生産の極みLv10』『魔法の極みLv10』『身体操作の極みLv10』『観察の極みLv10』『超集中Lv10』『棒術Lv10』『剣術Lv10』『鞭術Lv10』『記憶容量増加Lv10』『教本生成Lv10』『威圧Lv10』『限界突破』『不老不死』『超再生』『精神耐性』『環境適応』『日本領海権』『日本統治権』『万物の支配』『神の領域』
剣鬼
スキル:『武器の極みLv10』『魔法の極みLv10』『身体操作の極みLv10』『恐怖耐性Lv10』『鑑定Lv10』『未来予測Lv10』『軽業Lv10』『弱点看破Lv10』『威圧Lv10』『超加速Lv10』『空中走行Lv10』『鬼神化』『龍人化』『環境適応』『超再生』『限界突破』『不老不死』『日本・アメリカ領空権』『絶対切断』『神の領域』
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「……なくなっているわね。ついさっきの戦いでかしら?」
香織達のステータスの表記が消え去っていた。香織達は、ステータスの確認を定期的に行っているわけではないので、いつ、この領域に至ったのかが分からなかった。
「てか、確認するのが、久々だから色々変わってる。多分だけど、神の領域が資格なのかな?」
「私達の力が神の領域に至ったと考えて良いのかもしれないわね。神の領域の教本はないの?」
「それが、全く出てこないんだよね。何でだろう?」
香織の教本生成は、スキルの詳細を知る事が出来る手段なのだが、今回の神の領域の教本を出す事が出来なかった。
「まぁ、いいや」
「そうね。さっき、説明されたから、なんとなく予想出来るし」
「お前達は、相変わらずだな」
玲二は、呆れながらそう言った。自分達に関する重要なことなのに、当の本人達は、あまり気にしていないようだったからだ。
「…………」
大紀達の方は、未だに開いた口が塞がらなかった。
「大丈夫ですか?」
一向に動き出さない大紀達を訝しんで、香織が声を掛けた。
「あ、ああ……、二つ程聞きたいんだが、お前は本当に錬金術師なんだよな?」
「え? はい、そうですよ」
「今、山を動かしたのは、魔法か?」
「いえ、錬金術ですけど……」
大紀は、この世には理解出来ないことが沢山あるのだなと思考を停止させた。
「さて、フィールドダンジョン二つの攻略が終わったな」
玲二は、大紀に向き直りそう言った。
「そうだな。そっちは、約束を守ったんだ。こちらも守らせてもらおう。ひとまず、北海道全土を繋げるところから始めようと思う。それで良いか?」
「ああ、そちらの方がありがたい」
玲二と大紀は、固く握手を結ぶ。
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北海道での活動が終わり、香織達が関東に帰る時がやって来た。
「もうやること終わったの?」
「そうだな。後の事は、大紀に任せよう。この後、沖縄にも行かないといけないからな」
「その前に、神奈川に帰るんでしょ? そのまま行かないの?」
「燃料の問題と軽い整備をしておきたいからな。問題があれば、二号機の時に活かしたいからな」
「なるほどね」
香織は、そう言って玲二から離れて、少し離れた場所にいた咲に後ろから飛びついた。
「どうしたの?」
いきなり飛びつかれる事に慣れたのか、咲は一切動じずにそう言った。
「別に。咲がいたから」
「全く……」
香織と咲がイチャイチャとしているところに、咲に告白してきた男がやって来た。
「あ、あの! やっぱり、諦めきれません! どうか、俺と付き合って下さい!!」
懲りもせずに、また咲に告白してきた。咲は、呆れながら拒否の返事をしようとすると、香織が咲の前に回ってきた。何をしているのだろうと咲が思っていると、香織が飛びついてキスをした。軽く触れるものでは無く、長いキスだった。
咲に告白してきた男は、愕然としていた。長いキスを終えた後、香織は咲と手を繋いでから、
「じゃ、そういうことだから」
と言い残して、その場を去って行った。男は、その場に倒れ伏した。
「いきなり、何しているの?」
「だって、一回振られてるのに、しつこいんだもん。きちんと分からせてあげた方がいいでしょ? 咲は私のもので、私は咲のものなんだから」
「はぁ……独占欲が強いわね」
「咲は、私が誰かのものになってもいいの?」
香織がそう言うと、咲は、香織にキスをして、
「そんなわけないでしょ?」
と言って、先に歩いて行ってしまった。香織は、少し呆然としてから、嬉しさからニコッと笑って咲を追い掛けた。
その姿を見た現地民、冒険者は、あの二人には敵わないなっと感じたようだった。
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