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変わってしまった現代で錬金術師になった  作者: 月輪林檎
第二章 繋がり

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82.それぞれの行く先

 香織達の視線の先にいる氷雪龍は、香織達を見ると、口を大きく開けた。


「やばっ!」


 いち早く気が付いた香織が、腰のポーチから結晶を取り出して前方に投げる。結晶が落ちた場所から結界が張られていく。それと同時に、氷雪龍から大量の雪が吐き出されてきた。


「さすがに……これは予想外……」


 ブレスの攻撃だという香織の予測自体は正しかった。しかし、吐き出されるものが、赤龍、黒龍のような炎ではなく雪そのものだとは考えていなかったのだ。雪崩のように吐き出されてくる雪は、異常なまでの量だった。


「焔! 星空! 万里ちゃんと恵里ちゃんを捕まえてて!」

「分かりました!」

「うん!」


 焔と星空は、万里と恵里の腕を掴み、自分達の腕も掴んでおく。焔達が四人で固まったのを確認してから、別の指示も飛ばす。


「坂本さん! なるべくばらけないようにして!」

「!! 分かった! 近くの奴と固まれ! 雪崩が来るぞ!!」


 玲二の指示で、冒険者達がどんどんと固まっていく。


「香織、熱で溶かすことは!?」

「雪が水になるだけ!」


 つまり、大量の水がぶつかってくる事を表している。


「結界は、絶対に保たない! だから、雪崩に巻き込まれたら、すぐに火属性の魔法を自分の周囲に使って! そっちの方が……」


 香織がそう言っている間に、結界に雪がぶつかり、雪を押しとどめる。それでも雪の勢いは止まらず、結界を乗り越えて香織達に襲い掛かってきた。


 香織達は雪に飲み込まれ、散り散りになってしまった。


 ────────────────────────


 雪の中から一つの火柱が上がる。


「咲、大丈夫?」

「ええ、大丈夫よ。それより、他の人達は?」

「わからないよ。一面銀世界に変わってる。それに、いつの間にか天候も雪になってるし」


 火柱を上げたのは、香織だった。その穴から香織と咲の二人が出てくる。


「皆も火属性の魔法で這い出てこれると良いんだけど」

「そうね。見回した限り、周りに誰かがいるわけではなさそうね。どこら辺まで流されたのかしら?」

「ちょっと待ってね」


 香織は、地図を見て現在位置を確認した。


「下の方だけじゃなくて横に流されていたみたい。さっきと全然位置が違う」

「どうする? 私達だけでも登って、あの龍と戦う?」

「その方が良いかな。どのみち倒さなきゃ終わらないし。その前に、私達の周りに本当に誰もいないか確認しようか」

「そうね。でも、どうやって?」

「え? 燃やせば良くない?」


 香織はそう言って、火魔法を放った。


「馬鹿……!」


 咲は、香織の首根っこを掴んで空を駆ける。その少し後、香織が雪を溶かした事によって、再び雪崩が起こった。


「いきなり大量の雪が水になったら、上の雪が落ちてくるでしょ!?」

「あははは……失念してた……」


 香織は、靴に魔力を通して自分の脚で空中に立つ。


「まぁ、消したときに誰もいなかったし、大丈夫だって事だね!」

「全く……気を付けなさい」


 咲は、呆れつつも香織を叱りつける。


「あっ!」


 突然、香織が声を挙げた。


「どうしたの?」

「いや、私、海蛇持ってるから、水にしても問題なかったなぁって……」

「…………」


 咲は、片手で顔を覆い、ため息をつく。香織もやらかしたと思い、申し訳なさそうにしている。


 その時、


 ガアアアアアアアアアアアアア!!!!


 氷雪龍の咆哮が響き渡っていく。大気が揺れ、香織達の身体にも同じように響く。


「はぁ、全く、これで雪崩になったらどうしてくれるつもりだったのかしら?」

「本当だよ。全く、考えて行動して欲しいよね」

「香織が言わないの。でも、まぁ、()()()()()()()()


 香織と咲の前に身体をうねらせた氷雪龍ニィクス・グラキエースが降りてきた。咲が香織の前に出て、黒百合を構える。その後ろで、香織も海蛇を取り出した。


「さてと、悪いけど、倒させてもらうよ!」


 ────────────────────────


 香織達と別の場所で雪が溶けて中から、焔、星空、万里、恵里が出てきた。焔の身体に火の粉が舞っている。その熱で周囲の雪を溶かしたのだろう。


「うぅ……寒……」

「皆、私の近くに来て。そうしたら、暖まるはずだから」


 焔にそう言われて、万里と恵里が近寄っていく。星空だけは、辺りを見回している。そして、マジックバッグから地図を取り出した。


「えっと……かなり下の方に流されたみたい」

「周囲に、他の人達はいる?」

「見た限りいない」

「ど、どうしよう……」


 恵里は、不慮の事態に少しパニックになっていた。


「えっちゃん。落ち着いて。香織さん達が言ってたでしょ? 常に落ち着いて判断しなさいって」

「う、うん……」


 万里のおかげで、恵里が正気を保つ。


「どうする、焔?」

「うん。まずは、マスターと咲様との合流を優先しよう。途中で他の人達を見つけたら、救助しよう」

「分かった。万里と恵里は、大丈夫?」

「うん。もう暖まったから大丈夫だよ」

「わ、私も!」


 焔達は、香織達と合流するために動き出そうとしたその時、氷雪龍の咆哮が響き渡った。その方向は、頂上ではなく中腹の方からだ。


「龍が移動した……ということは、そこにマスター達がいるはず」

「そっちに向かうってことだね!」


 万里は、咆哮がした方に歩き出そうとする。その腕を掴んで焔が止めた。


「予定変更。私達は、頂上を目指す」

「何で!?」


 焔の意図が分からず、万里は驚く。


「マスター達が、龍と戦っているうちに、私達は核を狙う」

「気付かれたとしても、マスター達が足止めをしてくれるはずだから、安心して破壊出来るって事?」

「そういうこと。二人もいい?」


 焔は、万里と恵里に確認を取る。二人は、顔を見合わせてから、覚悟を決めて頷いた。


「じゃあ、私が先頭でいく。星空が最後尾で警戒して」

「了解」


 焔達は、頂上を目指し歩き始めた。


 ────────────────────────


「ごほっ! げほっ!」


 咳き込みながら玲二が這い上がってくる。同時に、大紀も這い出てきた。


「大丈夫か?」


 先に出てきた玲二が大紀の手を取り、引っ張り上げる。


「すまない……」

「構わない。それよりも、他の奴等を探さないとな」

「ああ、そうだな」


 玲二と大紀が周りを見回すと、所々の雪が溶け何人かの冒険者と現地民が出てきた。玲二と大紀は、それぞれ助け出しに向かった。埋まっていた冒険者達も助け出す。


「全員いるか!?」


 玲二が確認を取ると、香織、咲、焔、星空、万里、恵里以外の全員がいることが分かった。


「運が良かったな。これで、他にもバラバラになっていたら、危ない所だった。怪我人は?」

「何人かが軽傷だ。回復薬で治るだろう」

「よし」


 全員の状態を確認していると、中腹の方から咆哮がする。


「さっきと同じくらいの声量……ということは、降りてきているのか……なら、戦っているのは、香織と咲だな。俺達は、頂上を目指すぞ!」

「なっ!? いいのか!? 二人を放っておいて!?」

「むしろ、香織達が戦っているこの状況下なら、頂上まで行ける可能性がある。俺達の目的は、ボスの討伐ではなく、核の破壊だからな。先に破壊出来る可能性がある以上、やった方が良いだろう」

「……そういうことか。分かった。急ごう」


 玲二達も焔達同様に頂上を目指す。


 焔達と玲二達、ほぼ同時に頂上を目指し始めた。その瞬間、辺りに降り続ける雪の量がどんどん増えていった。そして、次第に吹雪へと変わっていく。

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