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変わってしまった現代で錬金術師になった  作者: 月輪林檎
第二章 繋がり

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79.札幌突入

 話し合いをした後は、一日休んでから、現地の戦力と合流した。その中には、大紀の姿もある。そして、一昨日、襲い掛かってきた男の姿もあった。向こうは、香織達に気が付いたようだが、香織と咲は、完全に無視をしている。


「お、おい!」


 男が香織達に近づいていく。かなり大きな声だったので、香織達だけでなく他の冒険者もそちらを向いた。しかし、当の本人は注目されていることに気付いていなかった。何やら顔を赤くしている。


「一昨日は、すまなかった!!」


 香織達に対して頭を勢いよく降ろす。


「別に良いですよ。大して気にしてませんし」


 香織は、ニコッと笑ってそう言った。香織としては、そもそも忘れていたので、本当にあまり気にしてなかった。


「それで、その……」


 話は終わったはずなのに、男は、口ごもりながらもじもじとして、咲の方を見ている。香織と咲は、よく分からず怪訝そうな顔になる。


「この前の蹴りで惚れました! 俺と付き合ってください!」

「嫌です」


 男が頭を下げてそう言ったと同時に、咲が速攻で振る。その顔は何の感情も現れていない無表情だった。男は絶望した表情になる。それを無視して、咲は香織を連れて離れていく。


「蹴りで惚れただって、ドMなのかな?」

「放っておけば良いわよ。とにかく、攻略に集中しましょう」


 男は、周りの仲間に慰められている。冒険者達からは、白い目で見られていた。関東の冒険者の中では、一つの不文律がある。それは、香織、咲に好意を向けないことだ。冒険者達は、確実に二人の間には、愛があることを見抜いている。だからこそ、二人とコンタクトを取るのは、基本的に友人のポジションを獲得している玲二、もしくは同性の綾子になっているのだ。


 そんな不文律を知らないとはいえ、聖域を侵そうとした奴に、慰めの言葉などない。むしろ、他の奴等がそんな事を考えないように圧を掛けているのだった。このことには、玲二も気付いていて、少し呆れたような苦笑いをしている。


 ────────────────────────


「これで全員集まったな。では、今から、札幌解放作戦を開始する。敵の詳細については、大紀から話がある」


 玲二がそう言うと、今度は大紀が口を開く。


「札幌を支配しているモンスターは、基本的には動物型のモンスターだ。草食獣型、肉食獣型、鳥型の三種がいる。逆に言えば、虫や異形型のモンスターはいない。ただ、数が尋常じゃなく多い。俺達はそれで攻略を諦めざるを得なかった。だが、今回は、協力してくれる仲間が増えた。これで、前よりもマシになってくるはずだ! 札幌を取り返せば、次のスタンピードに怯える必要も無くなる! 今回で確実に攻略するぞ!!」

『『おう!!』』


 冒険者と大紀達が一緒に札幌に向かって足を進める。その最後尾を香織達が歩いていた。


「東京と京都とは違うみたいだね」

「そうね。東京は、虫型も異形型もいたものね」

「京都では、妖怪だった。妖怪は、異形型になるのかな?」

「そうじゃないかしら。そして、今回は、動物型ばかり」


 香織と咲は、普通に話ながら歩いている。


「やっぱり、ダンジョンは色々なものがあるよね。そう考えると、青木ヶ原樹海は、どう分類されるんだろう?」

「青木ヶ原樹海?」


 一緒に歩いていた星空が首を傾げた。


「富士山の近くにある森だよ。星空と焔は見た事がないはずだから、今度見に行こうか」

「中には入っちゃダメよ。あそこは、迷いの森みたいな感じになっているから、入ったら出てこられなくなるかもしれないわ」

「マスターと咲様入った事があるのですか?」

「一回だけ入ったわよね?」

「うん。コンパスがあったからギリギリ出られたけど、なかったら危なかったね。森を燃やし尽くすことになるところだったよ」


 香織は、さりげなく環境破壊をしようとしていたことを言った。


「それって、マスター達も危なかったのでは?」

「確かに、火に包まれる可能性はあったね。それでも環境適応でどうにかなるのかな?」

「その可能性はあるけど、試したくないわね」


 普通に話をしていると、ようやく札幌に到着した。香織達がぺちゃくちゃと話していたため、現地民からは、緊張感が足りないんじゃないかと思われていた。しかし、手伝ってもらっている身で、そんな事を言うことは出来ずにいた。


「香織、ダンジョンの核がどこにあるか分かるか?」

「えっと……あっちかな。ん? ちょっと待って……」

「どうした?」

「ん~~、核が移動してる」

「京都と同じだな」

「ああ~~、京都って、酒呑童子を倒した後に、アナウンスが流れたんだっけ? 私は、丁度気絶していたから、知らないんだよね」


 京都では、香織が気絶しているうちに、空から声が響き渡った。そのため、香織は、その声を聞いていないのだ。


「つまり、今回もボスが核の役割を担っている可能性があるということね」

「相手は物量で来るんだよね?」

「そうらしいな」

「私が一人で相手しようか?」


 香織は、自分からそう提案する。香織の強さを知らない現地民達は、鼻で笑っていたが、玲二は、思案顔になった。


「いや、全員で掛かろう。ボスの強さが分からない以上、香織の道具を無駄に消費するのは、得策じゃない。なるべく温存だ」

「そう? 分かった」


 玲二が思い出したのは、京都での香織の戦い方だ。後日、聞いた話で、水瓶を複数使って、大量の水を作り出し、敵を飲み込んだと言っていたのだ。道具を壊すことになるので、奥の手として使用したいと玲二は考えていた。


「よし! まずは、敵のボスを目指すぞ! 進めぇ!!」


 玲二の号令で全員が走っていく。先頭の一人が境界を超えると、視線の向こうから大量のモンスターが向かってきていた。


「敵が来たぞ!! 戦闘準備!!」


 全員が各々の得物を抜く。


「掛かれ!!」


 先頭集団と魔物の軍勢がぶつかり合った。最初のぶつかり合いは、冒険者達が優勢だった。敵集団を次々に吹き飛ばしていく。


「やっぱり、強くなってるよね?」

「そうね。進化と戦闘経験が上昇したおかげかしらね」


 香織達は、最後尾近くで戦闘を見守っている。これは、戦力温存のために必要なことだった。


「でも、敵の量が本当にえげつない。どう考えても、京都の妖怪達よりもいるよ」

「恐らくだけど、向こうよりも一匹一匹が強くないんじゃないかしら?」

「その代わり、物量で攻められるみたいな感じか。これは……武器の方が保たないかな」


 冒険者達の武器は、それなりに耐久度がある。しかし、それは、手入れをすることが前提のものだ。立て続けに攻撃していれば、必然的に耐久度がゴリゴリと減っていく。既に、先頭集団の武器は、ボロボロになり始めていた。


「想像以上の物量ね。香織の海蛇を使った攻撃で、対抗出来た?」

「無理だね。水の量が足りないと思う」

「それだと、香織の魔法の連打を使うしかないかしら」

「ううん。別の方法もあるよ」


 香織は、足下に魔法陣を展開して、交戦地帯まで広げていく。


「よし、大して強いものは出来ないけど……」


 香織は、錬金術を使用して、地面から何本もの剣を作り出した。いきなり地面から剣が生えてきたので、その上にいたモンスター達は宙を舞うことになる。


「抜けば使えるよ!!」


 香織は、手でメガホンを作り、風魔法を併用して、先頭集団達に知らせる。その声が届いたかは、分からないが、集団の何人かがボロボロの剣を捨てて、香織の作った剣を手に取り、モンスターを斬りつけた。今までの剣と斬れ味が変わらないことに気が付き、使用者が眼を剥く。


「あれ、何かを刻印しているわね」

「うん。鋭利化と耐久力上昇ね。遠くから出来るか分からなかったけど、できたみたいで良かった。雑な仕事になったけど」

「でも、あれのおかげで、持ち直したみたいね」


 香織が大量の剣を作った結果、先頭集団のモンスターを倒す勢いが増していく。それは、武器が壊れることを気にしなくて良くなったからだ。


 順調に敵を倒していき、段々と先に進めるようになっていく。さすがに、香織達も戦闘に混ざった。香織、咲、焔、星空の勢いは凄まじく、モンスターの数が段々と減っていった。そうして、一時間程戦い続けると、ダンジョン内の雑魚モンスターを全て倒しきることが出来た。

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