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変わってしまった現代で錬金術師になった  作者: 月輪林檎
第二章 繋がり

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74.試運転

 飛行機の試運転当日。香織、咲、焔、星空は、羽田空港まで来ていた。


「あんなに大きなものが空を飛ぶんですか?」

「そうだよ。それこそ、二年前は、あれがいくつも飛び交っていたんだ」

「危なそう」

「まぁ、事故は起きていたわね。それほどの頻度ではなかった気がするけど」


 香織達の視線の先には、玲二達が作った飛行機がある。


「それにしても、かなり綺麗になったわよね」

「そうだね。滑走路のひび割れがないし、管制塔も新品同然みたいもんね。発電機もうまく動作してるし、後は、空港本体を直せばいい感じかな?」

「あっちの修理は時間が掛かりそうだけどね」


 香織と咲は、ボロボロになっている空港を見る。香織があそこで戦ったのもあって、崩れ落ちている部分も多い。


「おっ、来てくれたみたいだな」

「香織さ~ん、咲さ~ん!」

「焔ちゃん、星空ちゃん!」


 香織達の後ろから、玲二と万里、恵里が歩いてきた。


「おはよう、坂本さん、万里ちゃん、恵里ちゃん」

「ああ、おはよう」

「おはよう!」

「おはようございます」


 それぞれがそれぞれに挨拶を交わす。


「もう少し準備に時間がいるから、待っていてくれ」

「分かった」


 玲二は、香織達と別れて、飛行機の方に向かっていった。


「そうだ。万里ちゃん、恵里ちゃん」

「?」

「何ですか?」


 香織に呼ばれた二人が振り返る。そんな二人に、香織は二枚の地図を手渡す。


「これは?」

「自分の周辺を知る事が出来る地図だよ。縮尺は自分で変えられるから、使いやすいように使ってね」

「すごい!」

「ありがとうございます」


 万里は早速使い、地図に周りの地形が写し出されたのを見て、興奮していた。


「これって、ダンジョン内でも使えるんですか?」

「使えるはずだよ。自分の周囲だから、地下空間でも使えるようになってるし」

「そう考えると、かなりのチートアイテムよね。普段、マッピングしながら、進んでいたダンジョンが、最初から道が分かるんだもの」


 咲の言うとおり、ダンジョン内で地図を使えば、ダンジョンの全貌が分かる。つまり、迷うことなく進むことが出来るのだ。


「宝箱は表示されるの?」


 万里が手を上げて質問する。ダンジョン内には、一定の確率で宝箱が生まれる事がある。中には、使えるアイテムもあるが、基本的にはガラクタが入っていることが多い。ガラクタは、生産職が再利用することが出来るため、よく買い取られる。そのため、生産職だけでなく、戦闘職も喜ぶ。


「それは、無理かな。優先したのは、道を知る事だから。宝箱の位置を知る機能を付けると、ごちゃごちゃになりそうだったし」

「そうなんだ。じゃあ、宝箱まで一直線って事は出来ないんだ」

「そうだね。積極的に行き止まりに行くとかしないとダメかもね」

「その手があった!」


 万里は、香織の案に眼を輝かせた。恵里は少し呆れ気味だが、心の中では小さくガッツポーズを取っていた。


「マスター、そろそろ飛ぶみたいですよ」

「わくわく」


 焔と星空が香織の服の裾を引っ張る。


「じゃあ、少し離れようか」


 香織は二人の手を取って、滑走路から下がっていく。まだ、どうなるかが分からないからだ。


「ここで良いかな」


 滑走路から少し離れた場所に移動した香織は、結晶を一つ割り、結界を作り出す。それと同時に、飛行機が動き始める。滑走路を車輪で移動していく。段々とスピードを上げていき、車輪が地面から離れていく。やがて、飛行機は空高くへと舞い上がっていった。


「すごい!」

「飛んだ!」


 焔と星空が興奮したようにそう叫んだ。


「やった!」

「成功だね!」


 万里と恵里がハイタッチして喜んだ。


「……取りあえずは、成功かしら?」

「だね。後は、燃料の消費量とかを計算したりしないとかな。この周りを飛ぶだけでどのくらいの燃費になるかだね」

「場合によっては、燃料タンクを大きくする必要があるってわけね」

「後は、飛んだことによって掛かる負荷に機体がどのくらい耐えられるかも重要だね」


 香織と咲は、喜びも興奮もせずに、分析をしていた。それから、十分間飛び続けた飛行機が滑走路に着地した。ブレーキもちゃんと機能しており、問題なく着地が出来た。


「大丈夫そうだね。飛行機に近づいてみようか」


 香織達は飛行機に近づいていく。管制塔から降りてきた玲二も合流した。


「無線も機能した。一応、ほとんどの項目で基準点は突破したな」

「内部機関の負荷は大丈夫そう?」

「それは、今から調べる。内部機関も強度強化をしているが、飛行と着地でどの程度消耗しているかどうかだな」

「後は、燃費だよ。アメリカに行くのに、海の上で墜落なんて嫌だからね」

「ああ~、それもあったか」


 玲二は、ペンで頭を掻きながら答える。そこは失念していたみたいだ。色々なものが重なっているため、仕方ないといえるだろう。


「私も飛行機の状態を見るから、咲は焔達をよろしくね」

「管制塔なら上っても大丈夫だぞ」

「分かったわ。焔、星空、万里、恵里、行くわよ」

「「「「は~い」」」」


 咲は、四人を連れて管制塔に上っていった。香織と玲二は、飛行機の方に歩いて行く。そこには、里中を含む生産職が集まっていた。


「どうだ? 何か異常はあるか?」

「玲二と香織か。今のところ大丈夫だ。エンジンにも燃料タンクにも異常はない。周りの装甲も歪みはない」

「後は、燃費と……乗り心地か。一応、パイロット以外にも乗せていたが、もう降りてきたか?」

「いや、今から降りてくる」


 そう言って、里中が飛行機の入り口を見ると、丁度扉が開くところだった。中から三人の冒険者とパイロットの一人が降りてきた。


「乗り心地はどうだ?」

「昔の飛行機と変わらないっす。ただ、これで長い間飛ぶなら、暇つぶしがないのはキツいかなって思いますけど」

「意外と音も静かでした。椅子の座り心地とかも快適でしたよ」

「裏にある厨房も一応使えました」


 冒険者達は、玲二に飛行機の感想を伝えていく。


「なるほどな。基本的には問題なしということだな。暇つぶしは諦めろ。今の世界に娯楽なんてほとんど無いからな。燃費の方はどうだ?」

「魔力を併用しているからか、そこまでの消費はしていません。これなら、燃料タンク一杯で、余裕をもってアメリカまで行けると思います」

「なら、基本的な項目は全て大丈夫そうだな」


 玲二達が確認項目に目を通している間に、香織は飛行機の装甲を触り、何かを確かめていた。


(刻印魔法にずれはないし、魔力による消耗もない。外部、内部共に、歪みはないね。燃料も大丈夫そう。車輪の消耗も大丈夫そう)


 冒険者達の報告を聞きながらも、自分で本当に大丈夫かどうか確かめていたのだ。


「まずは、日本国内で何度か飛んでみる事になっている。最初は、北海道に向かうぞ。出発は、一週間後だ。食糧や修理用の機材を詰め込むぞ」

「了解です!」


 玲二の指示で冒険者達が、すぐに行動を始める。


「あっ、坂本さん。それ、私達も一緒に行って平気?」

「ん? ああ、良いぞ。定員に空きはあるからな。焔と星空も一緒だろ?」

「うん。そのつもり」

「じゃあ、一週間後に、ここに来てくれ」

「おっけー」


 香織は、そう言うと、咲達がいる管制塔の方に向かった。


 香織達の冒険の舞台は北海道へと移る。

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