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72.発電機完成

少し短めにしてみました

 魔導発電機の組み立てが終わった。最後に香織は、蓋と壁を取り付ける。


「さてと、後は、これを空港に繋げるだけだ」

「一応、電源ラインは調べておいたわよ。ここから、近くにあるわ。でも……」

「中のケーブルがどうなってるかでしょ? 銅があったら、補修は出来るはずだし、大丈夫だと思うけど」


 香織は、一度地面に手を置いて魔法陣を広げていった。京都で行ったものよりかは、小さいがそれでも巨大な魔法陣だ。


「見えた。う~ん、断線とかはあまりしてないけど……いや、寸前の場所がいくつかあるかな。ここからでもうまく出来るかな?」


 香織は、銅を取り出すと地面に落とす。すると、地面に触れた銅が地面の中に溶けていった。咲からすれば、慣れた光景──香織のする事が奇想天外なことが多いので──なのであまり驚いていない。


「よし! うまくいった! 補修が出来たよ」

「そう、良かったわね」

「じゃあ、早速繋いでみよう!」


 香織は、テンション高めにそう言った。自分の作ったものがちゃんと動くかどうか。効力はどの程度になるのか。それらの自分の成果を見ることが出来るのは、どうしようもなくわくわくするようだ。香織は、ケーブルを持って電源ラインに繋げる。


「ケーブルとケーブルを繋げるだけで、通るものなの?」

「出来るんじゃない? やってみればわかる!」


 ケーブルを繋げたことで、魔導発電機が動き始める。吸収した大気魔力を刻印に流して、複数のモーターを回転。その力で発電する。一応、魔導発電機内にもバッテリーを付けてあるので、使い切れない電気は、そこに溜めることが出来る。


「問題なく動いてるね。後は、管制塔とか細かいところを直せば、空港のシステムも動くはず」

「そっちは、生産職の方々が直しているはずよ」

「じゃあ、電気を送るのはもう少し後の方が良かったかな」


 香織は、魔導発電機を一時的に停止させる。


「後の問題ってあったけ?」

「後は……、飛行機がちゃんと飛ぶかかしら?」

「ああ……、試運転はいつ頃?」

「管制塔の機能が取り戻せたらって話よ。生産職の中に、管制官をしていた人がいたみたいでね。あった方が良いだろうということで、そっちを優先するらしいわ」


 世界が変わってしまった現在、空を飛ぶ飛行機は一機もいない。なので、管制しなくても大丈夫といえば、大丈夫なのだが、念のためということらしい。


「じゃあ、しばらくは、待ちになるのかな」

「そうね。連日組み立てで頑張ってたんだから、少し休んでも良いと思うわよ」

「う~ん、確かに、あまり休んだ記憶はないけど、別にそこまで疲れてないよ?」

「東京攻略の時から、まともに休んだことがないでしょ? たまにはゆっくり休みなさい。何かしたいこととか無いの?」


 咲にそう問われ、香織は少し悩む。そして……


「何も思いつかないや」


 と返した。


「何でも良いのよ?」

「う~ん……何か作りたいかな?」

「もう、すっかり錬金術師ね。じゃあ、旅行に便利なものを作ってくれるかしら?」

「旅行に便利なもの?」


 咲の注文に、香織は首を傾げる。旅行といえば、ものを詰め込む鞄だが、香織と咲にはアイテムボックスがあるので、そもそも必要がない。


「う~ん、地図とか作ろうかな」

「地図? 探せばありそうだけど?」

「世界が変わったせいで地形とかも変わったでしょ? だから、従来の地図がそのまま使えるってわけでもないじゃん?」


 香織の言うとおり、世界の変異で、地形が滅茶苦茶になっている箇所が多々ある。それに、ランドマークとなる建物なのが崩壊している可能性が高い。なので、今までの地図は使い物にならない可能性がある。


「大まかな地図ならまだしも、細かい地図は使えなくなるでしょ? だから、自分の周囲を自動で描く地図とかがあったらいいかなって思うんだよね」

「なるほどね。でも、導きのコンパスもあるでしょ?」

「あれの精度を知ってるでしょ? いや、あれも改良すればどうにかなるのかな?」

「それは、私には分からないけど、あれば迷うことはなくなりそうね」

「よし! まずは、地図と導きのコンパスの改良をする! じゃあ、帰ろう」


 香織が笑いながら言うと、咲も顔を綻ばせて頷く。


 ────────────────────────


 家に戻った香織達は、店側から家に入る。


「「ただいま」」


 二人揃ってそう言うと、


「おかえりなさいませ」

「おかえり」


 これまた二人が返してくれた。返してくれたのはもちろん、焔と星空だ。


「今日はどうだった?」


 香織が訊いたのは、商品の売れ行きだった。


「回復薬が売れて、少し在庫が心配になってきました」

「後、ギルドから燃料が送られてきた」

「回復薬は補充した方が良さそうだね。それに、わざわざ燃料を持ってきてくれるって、すごい律儀だね」


 ギルドから燃料が送られてくる理由は、香織のおかげで石油がまだまだある事が分かったからだった。香織のおかげで、まだ使えると分かったので、採取した一部をお裾分けすることに決まったのだ。このことを香織達は、決まった後に聞いたため、断るに断れなかった。


「正直、燃料の使い道がまだないから、ストックされていくだけなんだよね」

「燃料よりも魔力で動くものが多いものね。飛行機の方は燃料と魔力のハイブリットにしたって言ってたけど」

「私の設計図を改良したらしいね。さすが、生産職だよ」


 里中が率いる生産職の面々が、香織の設計図から、より実用的になるように改良を加えたのだ。


「燃料を使った兵器などはないのですか?」


 ふと疑問に思ったのだろう。焔が香織に問いかけた。


「あるにはあるけど、魔法の方が強いし、作る理由がないんだよ」

「そうなんですか。でも、東京の時みたいに魔法が使えない場所では使う事があるのでは?」

「あっ……」


 香織は、焔の指摘にそういえばという顔になった。


「う~ん、でも、火臨と海蛇があるし、すぐに必要ってわけじゃないかな」

「その空間に行ったら、私の弓も使えなくなるのかな?」

「そうだね。星空の弓というより、矢が使えなくなるね。一応、普通の矢も作っておく?」

「お願い」

「じゃあ、それ専用にマジックバッグを作るね」


 香織の作るものが増えた。しかし、香織は嘆息するどころか、とても嬉しそうだった。


「じゃあ、早速作りに……」


 香織が工房に向かおうとした瞬間、香織の肩を咲が掴んだ。


「香織、休むように言ったわよね?」

「でも、作るのが休みになるって……」

「今日は、何もしちゃダメよ。約束、いいわね?」


 咲は笑顔でそう言う。一見優しそうな顔だが、その裏側には、有無を言わせぬ威圧感を放っている。


「…………嫌だ!」


 創作意欲が高まった香織は、咲との約束を拒否して、振りほどこうとする。しかし、咲の膂力を香織が上回れるはずもなく、捕まったままになっている。


「い・い・わ・ね?」


 咲は、笑顔のまま威圧感を高めた。ここに子供がいたら、泣き叫んでいるだろう。


「うぅ……分かった」

「いい子ね」


 渋々頷いた香織の頭を咲が撫でる。


「じゃあ、膝枕して」

「分かったわ。二人とも何かあったら、呼ぶのよ?」

「はい。分かりました」

「うん」


 香織と咲は、家の中に入っていき、焔と星空は引き続き店番をする。香織は、きちんと手を洗ってから、ソファの上で咲に膝枕をしてもらい、ゆっくりと英気を養っていった。

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