70.設計図と部品作り
咲と分かられた香織は、空を駆けていって、羽田まで向かった。
「何か、もっと速い移動方法無いかなぁ。空を駆けていくのも地味に面倒くさいんだよね。まぁ、車とかよりもこれの方が速いんだけど……」
そんな独り言を言いつつ、香織は羽田空港に着いた。
「よっと、さてさて、飛行機はどこかな?」
香織は、羽田空港の滑走路を歩く。
「あそこら辺で朽ちてるのは違うよね。あるとしたら、格納庫の方かな」
滑走路の傍にある飛行機は全て、朽ち果てていた。タイヤは潰れ、機体の表面の装甲は剥がれ落ちている。それだけでなく、機体のあちらこちらが錆び付いている。無事に残っている部品の方が少ないくらいだ。見る影もない。
「てか、二年で飛行機があそこまで跡形も無くなるものなのかな? モンスターの仕業? まぁ、使える飛行機を探すことが出来ればいいか。格納庫は、あそこかな」
香織は、格納庫の方まで軽く走っていく。すると、格納庫の前に何人もの人が集まっていた。
「あれは……冒険者かな?」
綾子から聞いていたため、香織は、得に警戒することは無かった。むしろ、そちらの方に近づいていった。段々、冒険者達の顔がよく見えるようになってくると、その中に玲二と里中の姿があることに気が付いた。
「あれ? 坂本さんと里中さん?」
「ん? 香織か。俺達は、空路に必要な飛行機の状態を見に来たんだ。俺達で直せるようなら、直しておこうと思ってな」
「だが、見たとおり、完全に壊れていてな。そもそもどこが壊れていて、どこが壊れていないのか分からないんだ」
香織は、玲二達が見ていた飛行機をのぞき見る。外に放置されているもの程じゃないが、二人の言うとおり、ボロボロの状態だった。
「外よりはマシだね。ちょっといい?」
「ああ、構わないぞ」
玲二からの許可を得て、香織が飛行機に近づいていく。
「腐食が激しいなぁ。直すこと自体難しそう」
香織は、そう言いながら、飛行機に手を伸ばす。そして、手のひらに魔法陣を出して飛行機に触れた。
(錬成の要領でやれば、錬成出来る場所と出来ない場所で、壊れている部分が分かるはず……)
香織の魔力が飛行機に流れていく。そして、香織の頭の中に、飛行機の全貌が映し出される。その中に不自然に部品が足りない箇所が多々あった。
「結構足りない部品が多いね。表面の装甲もそうだけど、中の部品が無い部分が多いよ。一から作った方が良いかもしれないよ」
「そうなのか? でも、設計図がないから、結構難しいよな。うちのギルドには、電車の整備士はいても、飛行機の整備士はいないからな」
「これ分解して良いなら、私が書けるけど?」
「……頼む。製造はこっちに任せてくれ」
「分かった。じゃあ、分解しちゃうね」
香織は、飛行機を錬成で部品単位に分解していく。一度飛行機の中を錬成で見ているので、ある程度の形は分かっているが、分解することによって、より詳しく知る事が出来る。
「足りない部分は、適当な素材で補ってみるかな」
香織は、足下に魔法陣を出し、地面から部品を作り出していく。
「香織、それが出来るなら、一から作る必要は無いんじゃないか?」
思わず、玲二がそう言う。
「今、作った部品は、かなり適当で耐久度が低いからモンスターに襲われたら、ひとたまりもないよ。部品単位の強化も含めて行うべきだと思う。ちゃんと直ったわけでもないし」
香織がそう言うと、里中達生産職が香織が分解した部品を見ていく。
「確かに、このままだと耐久度が全く無いな。こっちの素材を直すことは出来ないのか?」
「う~ん、無理に直すと逆に全体の耐久度が低くなるんですよね。その素材に合ったもので補強するのが一番です」
「ということは、この飛行機の素材と同じものが必要になるということか」
「そういうことです。それと、一から作るので、素材は魔鉱石が良いと思いますよ。モンスターの攻撃に耐えられるものが作れると思います」
香織がそう言うと、玲二だけでなく、他の冒険者も眉を寄せた。
「魔鉱石か……そもそも取れる量が少ないから厳しくないか?」
「まぁね。今も咲が取りにいてくれてるよ。魔導発電機にも必要だからね」
「資源が枯渇しないといいんだけどな」
「ダンジョンの資源が枯渇するのかしないのかの調査になるね」
「気楽に言ってくれるな……まぁ、どのみち必要になるからな。冒険者総動員でやるか」
玲二は、頭を掻きながらそう言う。
「それじゃ、設計図を引いたらギルドに届けるね」
「ああ、頼んだ。こっちも材料を揃えておく」
香織は、分解した飛行機を回収して空を駆けて家に帰っていく。
「俺達も移動手段が欲しくなるな」
「それには、燃料の採取を増やす必要があるな。香織のおかげで、あの小さな油田にも燃料が残っていることが分かった事だしな」
「それで、車か何かを作るって事か。それには道路を舗装する必要があるな」
「つまり、まだまだ先だということだな」
玲二の嘆息は、香織には聞こえなかった。
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家まで戻ってきた香織は、店番をしている二人に会いに行った。
「ただいま!」
「お帰りなさいませ、マスター」
「お帰り、マスター」
焔は礼儀正しく一礼し、星空は片手を振って答える。
「お客さんはどう?」
「ぼちぼちですね。知り合いになった冒険者の方々が来るので、前よりも多くはなっています」
「回復薬と魔力回復薬が少なくなってる。後、テントを買いたいって人が来てた」
「メモ取ってくれた?」
「うん」
星空が香織にメモを手渡す。
「四人用を二つかぁ。明後日だから、早めに作っておこ。ありがとうね」
香織は、二人の頭を撫でてから、工房に向かった。そして、手早くテントを作り上げて、焔達に渡しておく。テントは焔達が店の中で、取り置きしておくのだ。
「さてっと、設計図を引いていこ。普段、頭の中で考えるからあんまり使ってない製図台だけど、壊れてないかな?」
香織は、部屋の一角に備え付けてある製図台に座る。
「久しぶりだから、少しテンションが上がるなぁ」
香織はウキウキしながら、製図台を使って設計図を引いていく。
約二日掛かって設計図を引き終わることが出来た。
「終わったぁ!!」
「お疲れ様、休憩にする?」
「ううん、そのまま部品作りしておく。咲が一杯集めてくれたし。まぁ、それでも足りないんだけどね」
連日、咲がダンジョンに赴いて、魔鉱石を採掘していた。しかし、それでも、必要量に達していなかった。
「確か、鉄もなくなりかけてるのよね?」
「うん。その他鉱石系も少ないから、何でも掘ってきてくれると嬉しいかな。いっそ、焔達も一緒に行って貰うのもありかな?」
「そうね。明日から、二人も一緒に行こうかしら」
「うん。お店は閉めても構わないからね。じゃあ、部品作りに戻るね」
「ほどほどにするのよ。設計図は、ギルドに届けておくから」
「ありがとう、咲」
香織は、咲に設計図を渡す。設計図を受け取った咲は、工房を出てギルドの方に向かった。
「さてと、私も部品作りをがんばろ!」
香織は身体を伸ばしてから、錬金釜まで歩いていく。
次の日から、焔と星空も咲を手伝って、魔鉱石を集めに行った。それほどまでに、魔鉱石の数が足りなくなっていた。
部品全てを作り終えるには、咲、焔、星空が東奔西走して、一週間の時が必要になった。ちなみに、香織は何日も徹夜をしていたため、咲から猛烈に叱られた。
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