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変わってしまった現代で錬金術師になった  作者: 月輪林檎
第二章 繋がり

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68.今後の予定

 関西の冒険者ギルドに玲二達が報告をしている間、香織達は、ギルドから離れた所にレジャーシートを敷いて、のんびりとしていた。


「坂本さん達、遅いねぇ~~」

「そうね。今回の解放作戦の報告だけじゃなくて、他にも少し話すことがあるって言っていたわよ」

「へぇ~~」


 香織の返事は、少し力が抜けている。それもそのはず。香織は、咲の膝を枕にしてゆったりとしているのだから。焔と星空は、少し離れた所で追いかけっこをしていた。星空が焔を煽り、焔が怒って追い掛けているのだが、当の本人達が楽しそうなので、香織も咲も見守るだけにしている。


「この後は、油田の方を見に行くのよね?」

「うん。どのくらい出ているのかとか、どのくらい残っているのかとか、精製がうまく出来るのかとか、色々調べることがあるからね」

「それが、終わったら、いよいよアメリカに行くの?」

「ううん。パイロットがいないし、飛行機もない。それに、どのくらい飛べるのかとかも確認しなくちゃだから、実際は、年単位掛かる可能性もあるよ」


 香織も最初は、パイロットと飛行機、燃料があれば、アメリカにも行けるだろうと考えていたのだが、よくよく考えて見ると、様々な問題があることに気が付いたのだった。


「じゃあ、おばさん達に再会するのは、少し先になるのね」

「そうだね。でも、目処が一切立たなかった前までよりも、今の方がマシだね」

「そうね」


 咲は、そう言いながら、香織の頭を撫でる。少しの間、静寂が流れていく。すると、焔と星空の声が、香織達の元まで聞こえてきた。


「捕まえた!」

「むぅ……焔はしつこい」

「星空が、私を怒らせるからでしょ!」

「それより、重い……」

「んなっ!?」


 星空を捕まえた焔が馬乗りになっていた。さらに、星空が、ぼやいたため、焔の顔が引きつる。


「反省し・な・さ・い!」


 焔は、星空の頬をつまんで引っ張る。星空が痛がらないところから、それほどの力は入ってない事が分かる。


「焔も星空も仲が良くて良かったわね」

「ね。焔もあそこまで表情豊かになるとは思わなかったし。二人を迎えて正解だったよ」

「自慢の娘ね」

「そりゃあね」


 香織達が笑い合っていると、少し遠くの方から玲二が歩いてきた。


「ここにいたか」

「坂本さん。話は終わったの?」

「ああ、もう先発隊は、ギルド本部に向けて進んでいる。俺達も行くから、呼びに来たんだ」

「分かった」


 香織は、そう返事をすると、咲の膝から起き上がった。


「焔! 星空! もう行くってさ!」

「分かりました!」

「は~い」


 香織が声を掛けると、焔と星空が駆け寄ってくる。


「俺達は、油田に寄るから、他よりも遅く帰ることになるが、大丈夫だよな?」

「うん。私がお願いしたんだから、なんの文句もないよ」

「よし! じゃあ行くか!」


 玲二、里中、万里、恵里を加えた香織達は、油田までの道のりを歩いていく。


「そういえば、坂本さん達は、向こうのギルドと何を話してたの?」


 その道乗りの最中、香織が玲二に問いかけた。


「ああ、香織達のおかげで、日本を解放することが出来ただろ? だから、今度は、日本を繋げることが重要になると考えたんだ。そのために、向こうのギルドと協力して、関東と関西を繋げる動線を作る事にしたんだ」

「動線?」

「ああ、言ってしまえば、道を作るって事なんだがな。うまくいけば、関東と関西で人が横行する事になる」

「元々の日本に戻すって感じだね」

「そうだな。ゆくゆくは、電車を通せれば良いと考えている。それだけでも輸送が進むようになるしな」


 玲二は、先の事を考えていた。香織達の奮闘によって、日本が解放されたので、今度は、日本を繋ぐ作業をしようと考えていた。つまり、関東と関西だけでなく、北海道や沖縄まで全てを繋げるつもりなのだ。


「モンスターがいること以外、全てが元通りになるかもしれないって事?」

「そういうことだ。空路はともかく、海路の方が少し問題なんだけどな」

「海のモンスターの事?」


 海にリヴァイアサンがいなくなったとはいえ、海に生息するモンスターは、多く存在する。水中から攻撃をしてくるので、こちらも水中で戦わざるおえなくなるのが厄介だった。魔法で、水上から攻撃する方法もなくはないが、基本的に、どの魔法も水中では威力が下がってしまう。

 唯一、雷の魔法だけは、威力が上がるのだが、中にいる人も巻き込まれてしまう可能性が高い。そのため、現在冒険者達の間で、対水中戦の研究が進んでいる。


「あいつらとの戦いもそうなんだが、あいつらの攻撃に耐えられる船の製造がな。通常の船だと必ず壊されるからな。生産職が躍起になって作っている最中だ」

「やっぱ、海は大変だよね。空路をメインにしたら?」

「目処が立ったらそうしたいんだがな。まず、飛行機を直すところからだしな。香織達も、そのつもりなんだろ?」

「そりゃあね。羽田空港はどうにかしてモンスターを入れないようにしたいんだけどね。そうすれば、着陸とかもしやすいだろうし」


 現在の羽田空港の惨状から考えると、まずは修復しないと厳しいが、香織には大した手間ではない。それよりも難しいのが、今言った、モンスターの侵入を防ぐことだった。


「それだけじゃないぞ」

「どういうことですか?」


 咲が玲二に問う。


「夜間飛行の可能性もあるからな。進入灯を点けとく必要もある。つまり、電気が必要になるんだ」

「そうか。夜間飛行は考えてなかったかも」

「だから、発電所を取り返す必要がある。あそこは、モンスターの巣窟だからな。どうにかしてモンスターを殲滅。その後にモンスターを立ち入れなくしないといけない」

「う~ん、どうすればいいんだろう? いっそのこと、大型の魔導発電機を開発して、空港に設置する?」

「そんなこと出来るのか?」

「う~ん、材料があればどうにか出来ると思う」


 香織は頭の中で設計図を引きながらそう答えた。


「どのくらいの電力を賄えるんだ?」

「空港の進入灯と管制塔の電力は賄えると思う。正直、それがどのくらい消費するか分からないから、予想にすぎないけどね」

「そうか。大体どのくらいの大きさになるんだ?」

「大体、一軒家クラスかな。色々な部品を大型化しないといけないから」

「まぁ、そこら辺も含めて、空路の整備をしないとな」

「協力してくれるの?」

「俺達にも関係することだからな。なるべく協力させて貰うさ」


 香織達は、油田までの道のりを確実に消化していった。そして、とうとう油田まで辿り着いたのだった。


「ここが、油田だ」

「……整備されている場所かと思ったんだけど、意外とボロボロだね」

「まぁ、二年間の放置とモンスターの襲来も重なってるんだろう」


 香織達が辿りついた油田は、建物がボロボロになっており、地面に黒い液体が滲んでいた。


「これが石油なんだ」

「意外と少ないわね」


 香織と咲は、石油に近づきながらそう言った。石油の量は、玲二が言っていた通り少ない。


「臭い……」

「私達は少し離れていよう」


 星空と焔は、遠くから香織達を見る。


「どうだ、香織。使えそうか?」

「多分ね。ちょっと待って」


 香織は、いくつかのバケツを取り出した。


「確か、沸点が違うから蒸溜で分離出来るんだったはず。それを錬金術でやるだけ……」


 香織は自分の目の前に魔法陣を描く。そして、それを石油に当てる。香織の精密な魔力操作によって、石油がガソリン、灯油、軽油、重油に分けられていく。


「うん。鑑定してみても、きちんと分けられている。よし! この方法なら、工場に頼らなくても精製は可能だよ!」


 香織はキラキラと輝く笑顔で咲を見る。咲は優しい眼差しで受け止める。


「里中さん!」


 その後に香織は里中を呼び出す。


「どうした?」

「精製方法を教えるから、生産職の人達で共有してくれる?」

「いいのか?」

「うん。私が一々やる方が面倒くさいから。これから、そっちでも使う事になるかもしれないでしょ?」

「助かる」


 香織は、里中にガソリンの精製方法を伝授する。


「後は、これがどのくらい残っているかか……」


 玲二は、顎に手を当てて考えこむ。その間に、香織が地面に手を当てて眼を瞑る。周りの冒険者達は、香織が何をしているのか理解出来ずに首を傾げている。


「まだまだあるみたいだよ。昔がどんな感じだったかは分からないけど、そう簡単に無くなりはしないと思うよ」

「よく分かるな」

「ソナーみたいな感じかな。魔力を流して地面の中を探ってみたんだ。そうしたら、地面の感じが違う箇所が大きいから、多分そこが石油なんだと思う」

「なるほどな。膨大な魔力を持つ香織ならではの探査方法か」


 香織の即興技には、玲二達も度肝を抜かされる。


「じゃあ、少し採取してから帰ろうか」


 香織は、バケツ別に燃料を分けていって、アイテムボックスに入れた。そして、油田での用事を終えた香織達は、ギルド本部を目指す。


 ────────────────────────


 その帰り道の途中で、香織達は再び箱根の温泉に立ち寄った。


「ふひ~~」

「香織、おじさん臭いわよ」

「そんな事ないも~ん」


 温泉に浸かった香織は、脱力しきっていた。


「焔、星空、泳いじゃダメよ」

「はい。分かってます」

「は~い」


 焔と星空は、少し深めのところに向かっていた。香織達の届く場所ならいいと許可を出したのだった。


「燃料は解決したわよ。後は、パイロットと飛行機ね」

「そうだね。目標には近づいてる。まだ、アメリカまで行けるとは限らないけどね」

「でも、確かに一歩近づいているわ。地道にでも、一歩一歩進んでいきましょう」

「うん」


 香織達は、空を見上げる。そこには、満天の星空がどこまでも広がっていた。

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