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変わってしまった現代で錬金術師になった  作者: 月輪林檎
第二章 繋がり

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67.京都解放作戦終了

「……!!」


 香織の耳に誰かの声が聞こえてくる。


「……り!!」


 最初は何を言っているのか分からなかった。


「……おり!!」


 だが、段々と声が鮮明に聞こえてくる。


「香織!!」


 香織が、瞼を開けると、そこには自分の上半身を抱き起こす咲と顔を覗き込んでいる焔と星空の姿があった。


「咲……? 焔……星空……」


 今、香織の頭の中は情報の整理で精一杯の状態だった。


(あれ? 何で、咲に支えられてるんだろう? 焔も星空も、血だらけだ。そういえば、私は何で眠ってたんだろう? 確か、京都に来て、鬼退治を……)


 そこまで考えたところで、香織の記憶が繋がる。


「酒呑童子は!?」


 ガバッと身体を起こした香織が、咲の顔の鼻先寸前で止まる。


「大丈夫よ。酒呑童子は、倒したわ。さっき、東京と同じようにアナウンスが流れたから、確かな事よ」


 咲は、目の前まで香織が迫っているのにもかかわらず、いつも通りに答えた。むしろ、周りで見ていた冒険者達の方が緊張していた。


「そうなんだ……よかった……」


 香織は、自分の身体を支えてくれる咲の腕に寄りかかる。


「ちょっと、香織。起きたなら、ちゃんと自分の身体を支えて」

「え~、良いじゃん。咲の腕の中は安心するんだから」

「全く……」


 ニコニコとそう答えた香織に、咲は呆れながらも微笑んで答える。


「焔も星空もお疲れ様。その様子だと、結構な激戦だったみたいだね。こっちにおいで」


 咲の腕の中で、香織が腕を広げる。焔と星空は、その腕の中に吸い込まれていく。


「よく頑張りました。家に帰ったら、ご褒美に好きな料理作ってあげるね」


 香織はそう言って、二人を抱きしめる。


「はい。ありがとうございます、マスター」

「唐揚げが良い」


 焔は、香織にお礼を言い、星空は、早速リクエストをした。そんな香織達が織りなす幸せフィールドを冒険者達は眩しそうにしていた。誰もフィールドの近くに行くことは出来ない。しばらくの間、玲二達はフィールドが消えるのを待つのであった。


 ────────────────────────


 しばらくして香織が自分の足で立つと、玲二が近づいていく。


「香織、大丈夫か?」

「坂本さん。魔力回復薬も飲んだし、大丈夫だよ」

「そうか。今日は、ここで一泊することになった。ゆっくりと休んで、体力も回復させてくれ」

「分かった」


 玲二は、香織達から離れて他の冒険者達に指示をしに向かった。


「そういえば……」


 咲の少し低い声に、香織はハッとした。


「あの時の地形変化って香織の仕業よね?」

「そ、そうだよ」

「あんなに魔法陣を広げたら、魔力が足りなくなるのは当たり前でしょ!」


 香織は、心の中で「やっぱりか!」と叫んだ。咲の声の感じで説教が来ると感じたのだ。


「それは、咲を効率よく援護するためだよ」

「効率よく?」


 咲は、香織の言っている事が分からず、首を傾げる。


「うん。あの地形変化って錬金術の応用なんだけど、土地を変化させてるから、ぐいって伸ばすと近くの地面を使う事になるのね。でも、そうすると、咲の戦ってる戦場をでこぼこにしちゃうでしょ? だから、戦場と関係ない地域から、地面を拝借したんだ」

「…………」


 香織が広げた魔法陣は、範囲内の全てを錬成の範囲内にするものだった。そして、地面を錬成で形を変えて咲をサポートしていたのだが、地面を錬成させるということは、周囲の地形を変えることになる。それは、酒呑童子の足下を崩すことにも繋がるが、咲の足下も崩れてしまう。そのため、関係のない地域から地面を貰って、咲の足下を補強していたのだった。


「はぁ、まぁ、香織のおかげで助かったわ。ありがとう」

「ふふん」


 自分のために頑張ってくれたことは理解したので、咲は香織にお礼を言う。お礼を言われた香織は、嬉しそうに頬を緩ませる。


「「香織さん!」」


 香織達の元に、万里と恵里が走ってきた。万里は、少し怪我をしているが、恵里の方は、無傷だった。前衛と後衛の違いだ。


「二人とも無事だったんだね。大丈夫だった?」

「うん! 私、結構活躍したんだ!」

「私も、魔法を頑張りました!」


 万里と恵里は、鼻息荒くそう言った。今回の戦闘は、いい刺激になったみたいだ。


「二人とも一皮剥けた感じがするね。良い経験になったんなら、よかったよ」

「そうね。二人とも強くなっているわ」


 香織と咲から、手放しで褒められて、万里と恵里が照れる。その後、万里と恵里は、香織達と一緒にご飯を食べて、自分達のテントに帰って行った。そして、焔と星空も自分達のテントに向かった。


「ふぅ……今回の戦いは、今まで一番ヤバかったよね」

「そうね。黒龍は、大きい分皆で対処が出来たものね。私達と同じくらいで、強いモンスターが、あそこまで厄介だとは思わなかったわ」


 香織と咲は、同じ布団の中に入りながら話をしていた。


「連携して攻撃することが難しいもんね。得に、素早い敵だと尚更だもん」

「香織は、あまり素早さが高くないものね。こればかりは、職業的に仕方がない部分があるけど」

「私、役に立てなかったもんね」

「そんな事ないわよ。香織が、サポートしてくれたから拮抗していた状況が覆ったんだから」


 咲は、香織を易しく抱きしめる。


「さっきは、怒っちゃったけど、本当に感謝しているのよ。でも、それで香織が危険な状態になるのは、嫌なの。香織は、私の全てだから……」


 香織を抱きしめる手に力が入る。香織は、咲の胸に顔を埋める。


「私も、咲が危険な状態になるのは、嫌だよ。ずっと一緒にいたい」

「私が香織から離れるなんて事ないわよ。仕事とかで離れることはあるかもだけどね」

「むぅ……」


 香織の顔が少し膨れる。


「仕方ないでしょ。素材を取りに行ったりするのは、私の役目なんだから。役割分担をするって、二年前に決めたでしょ? 最近は、赤龍だったり、悪魔だったり、黒龍だったりで、忙しかったから一緒にいたけど、ちょっと前までは私がいない期間もあったでしょ」

「それは、そうだけど……」

「それに、絶対に香織の元に帰ってきたじゃない。これからも同じ事よ。時々、離れることはあるかもだけど、本当の意味で香織から離れるようなことはないわよ」


 咲は香織の頭を撫でながら、そう言った。その姿は、子供をあやす親みたいだった。香織が咲の胸から顔を離して、咲の顔を見る。それに気が付いた咲も香織の顔を見る。


「私は、香織の事を愛しているわ」


 そう言って、咲は香織の唇に自分の唇を合わせる。咲が顔を離すと、香織の頬が少し赤くなっていた。


「私も、咲を愛してるよ」


 香織からも咲にキスをする。二人は何度も唇を合わせた。その晩、二人の嬌声がテントの中にだけ響いた。香織のテントには、防音結界が張られているので、中の音が外に漏れるのを防ぐ事が出来る。


 ────────────────────────


 次の日、香織達は、玲二達と話していた。


「本当に、酒呑童子がそう言っていたのか?」


 玲二が咲に問いかける。


「はい。生き残るの楽しみにしていると言っていました。それが、何を意味するのか分かりませんが、無視することも出来ないかと」

「茨木童子は何か言っていたか?」


 玲二は、焔と星空に問いかける。


「首を切断したので、言葉にはなっていませんでしたが、口を動かしてはいました」

「だから、酒呑童子と同じ事を言っていたかは、分からない」


 焔と星空の報告に、玲二は少し考え混んだ。そもそも、モンスターが喋るという時点で、頭がパンクしかけている。


「喋るモンスター。そいつの口から、発せられた言葉。はぁ、無視は出来ないよな。そもそも、何から生き残るんだ?」

「分かりません。それを聞き出す前に事切れてしまったので」

「……順当に考えれば、この世界でって事になるよな。でも、わざわざ口に出す程の事でもないはずだ。だとしたら、これ以上にヤバいことが起こるって事か……」


 玲二の他の冒険者達も頭を悩ませている。


「まぁ、考えても仕方ないんじゃない? 思いつかないって事は、今の私達には分からないって事だし」


 香織が何とも無しにそう言った。冒険者達は一瞬ぽかんとしていたが、すぐに顔を綻ばせた。


「そうだな。考えても仕方ないことを、考え込んでも意味ないな。よし! じゃあ、関西の冒険者ギルドに戻るぞ!」

『『おう!!』』


 冒険者達は、テントなどを片付けて戻る準備をする。香織達も同じように、戻る準備を始めた。片付けが終わると、香織達は関西の冒険者ギルドに向けて足を踏み出した。


 その道中で、京都の街がでこぼこになっているのを見た玲二達は、若干苦笑いをしていた。香織から、事前にそうなっているだろうと聞かされていたが、自分達の予想以上にでこぼこだったからだ。


 これに対して、香織は「てへぺろっ!」と言って誤魔化していた。周囲から呆れの眼差しが注がれたのは言うまでもない。

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