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変わってしまった現代で錬金術師になった  作者: 月輪林檎
第一章 変化と解放

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41.対悪魔戦(3)

改稿しました(2021年11月13日)

 香織は、激しい戦闘音のする方へと駆けていく。すると、それまで見た事が無い大きさをした悪魔の姿が見えてきた。そして、悪魔と戦っている咲の姿も見えてきた。


「咲が戦ってる。戦況は拮抗か……焔は?」


 香織は、咲が戦っている周辺に目を配ると、倒れている焔の姿を見つけた。


「そんな……いや、まだ生きてるはず!」


 香織は走るスピードを上げた。そして、アイテムボックスから聖水を取り出し、悪魔目掛けて投げつける。


「おりゃあ!」


 咲との戦闘に集中していたのか、悪魔は、投げられた聖水に反応するのがわずかに遅れた。


 ガアァァァァァァァァアァァァアアアアアアア!!!!


 悪魔が悶え苦しむ。聖水が当たった部分がボロボロと崩れ始める。そうして崩れた結果、右腕が千切れ落ちていった。しかし、これまでと違って、全身が崩れる事はなく、悪魔は生きていた。


「やっぱ、雑魚の悪魔とは違うか……咲! 崩れているところ以外を攻撃して!」

「!? 分かったわ!」


 咲は、突然現れた香織に何か言いたげにしていたが、指示に従い身体が崩れていない方を中心に攻撃をしていく。


「崩れた部分は再生していない。聖水の効果で阻害しているんだとしたら、崩れた所を削ると再生してしまうかもしれない……考えすぎだったらいいんだけどね」


 咲の戦いを見つつ、倒れている焔の元に向かう。


「焔! 大丈夫!?」

「マスター……」


 焔は、弱々しく返事をする。その身体は、少し火傷を負っているようだった。怪我の様子を確認した香織は、アイテムボックスから回復薬を取り出す。


「赤龍の核を使ってるから、火耐性は強いはずなのに……何か、無理をしたでしょ?」


 焔の身体を見た香織は、治療をしつつ少し怒り気味に言った。


「少々頭に血が上ってしまって……」

「……核の影響が強いのかな? 今度、調べて見た方が良いかもね。よし、取りあえず、火傷の治療は終わったけど、無理はしないでね。今は体力の回復に集中して」

「分かりました」


 焔の治療を済ませた香織は、咲と悪魔の方を見る。身体の一部を失った悪魔に対して、戦いを有利に進めている咲だが、それでも悪魔の身体を削りきる事が出来ないようだった。


「咲! 倒せないの!?」

「何故か再生力が強くなってるのよ! 一瞬で身体を消滅させるような攻撃が必要だわ! さっきの聖水は使えないの!?」

「後一本しかないの!」

「気軽に使う事は出来ないわね……!」


 香織の持つ聖水は後一本、先程悪魔に聖水を掛けたが、腕一本と身体の半分を崩す事しか出来ていない。もう一本掛けたところで、完全に消滅させる事が出来るとは限らない。


「確実に倒す方法……」


 香織は、焔の周りに結晶を置きながら悪魔の様子を観察する。


「焔、悪魔の首を撥ね飛ばした事はある?」

「……いえ、なかったと思いますが」

「じゃあ、首が弱点の可能性が高いかもしれないね。今も、首に対する攻撃にだけ素早く反応しているようにも見えるし」


 香織が焔の周りに置いた結晶がそれぞれで繋がっていき、結界を創り出す。


「一応、結界を張っておいたけど、気休めにしかならないかもだから気を付けて」

「はい。ご迷惑をおかけしてすみません」

「いいよ。焔は頑張って戦ってくれたんだから」


 香織は、そう言いながらアイテムボックスから火臨を取り出す。そして、咲の攻撃に精一杯になっている悪魔の背後から不意打ちをする。


 ガァッ!!


 突然の攻撃で体勢を崩した悪魔を、咲が斬りつける。香織と咲の連携によって、怒濤の連撃が悪魔を襲う。再生も追いつかない連撃をされ、少しずつ悪魔が圧され始めた。悪魔を倒すのも時間の問題と思われた。しかし……


「きゃあ!」

「香織!」


 突然吹き荒れた黒い嵐によって香織が弾き飛ばされた。その香織の背後に瞬時に回り込んだ咲が受け止める。


「香織! 大丈夫!?」

「うん……咲、あれ何?」


 抱き止められた香織は、悪魔を中心として吹き荒れる黒い嵐を指さして咲に訊く。


「あの攻撃は見た事が無いわ。というか、あれって攻撃なのかしら?」

「多分ね。微かに見える限りでは、悪魔自身も傷つけて……る……か……ら……」


 香織の声が尻すぼみになっていく。


「やばい! あいつ、聖水で崩れた部分を削ぎ落とすつもりだ!」

「!! でも、この竜巻じゃ近づけないわよ!?」


 咲の言葉に香織は苦い顔をする。現状、どう考えても為す術が無いのだ。


「取りあえず、攻撃を加えてみる」


 香織は、風の刃を飛ばすが、黒い嵐に阻まれる。


「同属性はだめ……じゃあ、こっち!」


 今度は、炎の弾を複数放っていく。黒い嵐に吸い込まれるが、燃え上がる事は無く消化された。その後も、雷、氷、土、光、闇、様々な魔法を放っていくが、その全てが弾かれてしまう。


「どの攻撃も効かない……」

「これは、待つしかなさそうね。奴を倒す良い作戦はあるかしら?」

「……聖水を頭に掛けるくらいかな。多分難しいと思うけど……」


 黒い嵐が止むのを待っている間に、互いの状態を確認する。


「身体の調子は?」

「鬼神化は出来るけど、多分そう長くは続かないわ。そっちは?」

「魔力は半分くらい余ってる。少し寝る事が出来たから、動きにも問題は無いはずだよ」

「まだ、戦えそうね。でも、無理はしちゃだめよ」

「分かってる」


 そう言っているとようやく悪魔を包んでいた黒い嵐が消え去った。そこにいたのは、ぼろぼろになっている悪魔だった。


「再生していない?」

「ううん、今からだよ」


 香織がそう言った直後、悪魔の身体が再生していく。


「でも、消耗しているのは確かみたいだね。少し再生が遅い気がする」

「そうね。戦い始めたときよりも、かなり遅くなっているわ」


 互いに体力と気力を消耗した状態。しかし、互いに闘志は失っていなかった。


「こいつを倒さなきゃ、なにも始まらないもんね」

「全力全開、短期決戦でいくわ」


 咲は赤黒いオーラを纏い、額から角を生やしていく。そして、両手に炎月と香織の刀を持つ。香織は、アイテムボックスに聖水を仕舞い、火臨と一つの瓶を手に取る。


 ガ……ギ……ガザグゲギ……ガギガゴグガ……


 悪魔が何か言っているようだったが、香織達には何を言っているのか理解する事が出来なかった。もしかしたら、掛かってこいとでも言っているのかもしれない。


「行くよ! 咲!」

「ええ! 香織!」


 完全に身体を再生させた悪魔と香織、咲の戦いが始まった。


 ────────────────────────


 最初に攻撃を仕掛けたのは、鬼神化した咲だ。一瞬で悪魔の目の前に迫ると、かすむような速度で斬りつけた。浅いものの悪魔に傷を負わせる事に成功する。


「さっきよりも攻撃が通る。やっぱり、消耗しているのね。なら!」


 目の前に現れ、攻撃を加えられた悪魔は、再生した尻尾で咲を突こうとする。しかし、その攻撃は咲に当たる事無く空振る事になった。悪魔が攻撃をする前に、悪魔の背後に移動していたのだ。咲の移動を知覚した悪魔は、背後の咲に裏拳を当てようとする。しかし、その攻撃も咲に当たる事はなかった。そもそも、裏拳自体が不発に終わったのだ。


 ガ……!?


 悪魔は、自分に何が起こっているのか理解出来ていなかった。


「ふふん、全く身動きが取れないでしょ?」


 悪魔は声がした方を向く。そこには、悪魔の尻尾を踏みつけている香織の姿があった。


 ガァ! グァ!


 香織ごときの体重で悪魔の尻尾を踏み留める事など不可能なはずだ。悪魔もそう考え、自分の尻尾を引っ張るが、全く動かす事が出来ない。


 香織が悪魔の尻尾をその場に踏み留める事が出来た理由。それは、先程手に持った瓶の中身だ。


「『超強力接着剤』……付けたものを半永久的に結合させる接着剤だよ。強力すぎて、使い道が全く無かったけど、意外なところで役に立ったね!」


 悪魔は、尚も尻尾を引き剥がそうとしている。しかし、悪魔にそんな暇があるはずがなかった。


「はぁぁぁ!」


 背後から咲の連撃が悪魔を襲う。悪魔の意識が咲に向いた瞬間、今度は悪魔の足下で瓶が割れる音がした。悪魔が、自分の足下を見る。そこには、地面に接着させられた自分の脚があった。


「接着剤が一つだけなんて言ってないよ」


 悪魔は、苛立ちながら脚と尻尾を引き剥がそうとしていた。


「今だ!」


 香織は、悪魔に走って近づいていく。その最中に、アイテムボックスから聖水を取り出す。


 悪魔は、香織が何かの瓶を取り出すのを見て、香織の方に手のひらを向ける。そして、その手のひらから先程と似たような、小型の黒い嵐を放った。


「やばっ!」


 現状、香織にこれを防ぐ術はない。どうにかして避ける道を探すが、今からではどう避けても範囲外に出る事は出来ない。


「もう!」


 範囲外に出る事が出来ないのなら耐えるしかない。香織は、そう覚悟を決めて駆けていく。その目の前に、咲が現れる。


「やあぁぁぁぁぁ!!」


 赤黒いオーラを纏った香織の作った刀を黒い嵐にぶつける。刀と嵐のぶつかり合いであるのに、大量の火花が散っていく。


「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 刀が砕け散る音とともに、黒い嵐が斬り裂かれる。


「香織!」

「分かってる!」


 香織は、どんどん加速していく。黒い嵐を破られた悪魔は、そのことに驚き固まっていた。そして、香織が近づいてくる事に気付き、その場から逃げだそうとしていた。しかし、肝心の脚と尻尾は地面に留められたたままのため、逃げ出す事が出来ない。


「おりゃああああ!!」


 香織は、地面から空へ駆けだし、悪魔の頭を目指す。悪魔は、身動きの取れない中で、どうにか香織を近づけさせまいと腕を振り回す。香織は、空中を蹴って自由自在に動き回り、悪魔の腕を掻い潜る。


「これで……終わり!」


 香織は手に持った聖水の入った瓶を、悪魔の頭に叩きつける。パリーンという音とともに割れた瓶から聖水がぶちまけられる。その聖水を悪魔は頭から浴びた。


 ガアァァァァァァァァァァァ!!


 悪魔の叫び声が反響していく。聖水の掛かった悪魔の頭は、少しずつ崩れていった。香織は、悪魔の背後に着地して悪魔を見上げる。


「!! 咲!」


 香織の声が響く。香織が叫んだ理由……それは、悪魔が自分の頭を破壊しようとしているのを予見したからだ。だが、それは咲も同じ事だった。香織が声を発する前に、悪魔に向かって駆けだしていた。


「はあっ!」


 短い気合いと共に振われた炎月は、悪魔の両腕を斬り飛ばす事に成功した。だが、それで終わってはいけない。悪魔が死滅するまで、再生は続いてしまうのだから。


「死ぬまで耐えるよ!」

「分かったわ!」


 香織と咲による連撃が悪魔を襲う。先程までなら悪魔も対応する事が出来ていたのだが、頭に負っている聖水によるダメージが冷静な判断と攻撃の正確性を奪っていく。悪魔の腕が再生すれば、咲が斬り飛ばし、悪魔が逃げだそうと藻掻けば、香織の容赦ない連撃によって膝をつく。


 そして、香織と咲の体力が底を突きそうになって、ようやく悪魔の頭が完全に崩れ去った。それだけに留まらず、身体までもが崩れていった。


「終わった……?」

「そう思いたいけど、まだ油断はせずにいよう」


 香織と咲は、悪魔がいつ復活しても良いように、戦闘態勢だけは崩さずに見守った。結局、二人の心配は杞憂に終わった。悪魔の身体は、完全に灰となって崩れ落ちたのだ。


「今度こそ終わったわね……」

「そうだね。ステータス的に言えば、赤龍よりも上だし、苦戦するのは当たり前だったのかな?」

「でも、このくらいを簡単に倒せるようにならないと、これから先の戦いが厳しいわよね」

「そうなんだよね。黒龍やリヴァイアサンも残ってるし、もっと鍛えていかないと」

「そうね。そういえば、焔の容態は?」

「大丈夫だよ。怪我は治したから、後は体力の回復と検診くらいだね」


 二人はそう話しながら、焔の元まで向かう。


「焔、大丈夫?」

「…………」


 香織が話しかけるが、焔に返事はなかった。


「焔?」


 咲も焔の傍によって、声を掛けるが返事はなかった。香織と咲は、少し焦りを覚える。


「……ぐぅぅZZZZ」


 二人が慌てていると、焔から寝息が聞こえてきた。


「……寝てるだけ?」

「そのようね……」

「「ぷっ、はははははは」」


 二人は、顔を見合わせて吹き出す。しばらくの間、二人は笑い続けた。


「はぁ……本当に、焦ったよ。それこそ、黒い嵐に飲まれそうになるよりも」

「そうね。私も、さっきまでの戦いよりも焦ったわ」


 そう言って互いに笑い合う。ひとしきり笑うと、今度はお互いに向き合った。


「何はともあれ、おかえり、香織」

「うん、ただいま、咲」


 どちらからともなく抱き合う二人。その二人の目元には涙がにじんでいた。さっきまでの笑いすぎからくるものではない。別の理由の涙が……

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