41.対悪魔戦(2)
改稿しました(2021年11月10日)
悪魔と対峙している咲は、自分の血と返り血によって真っ赤に染まっていた。しかし、咲と悪魔は互いに傷がなかった。
「はぁ、はぁ、互いに再生持ちだと持久戦になってしまうわね。どうにか、再生が間に合わない傷を負わせないと……」
悪魔は、一向に倒れない咲を面白そうに見ている。その悪魔に対して、咲は油断せずに睨み付けている。そして、二人の間に瓦礫が降りそそぎ、地面に激突し、砂埃が立つ。周りからは何も見えないそんな状態で、甲高い音が鳴り響いていた。砂埃が立ったと同時に動き出した咲と悪魔がぶつかり合っている音だ。
悪魔の手による攻撃を弾き、生まれた隙を見逃さずに無防備になっている身体を斬りつける。しかし、その攻撃も悪魔の尻尾によって防がれてしまう。そして、もう片方の手を咲に向かって振り下ろす。咲は、すかさずにもう一本の刀で防ぐ。そして、一旦距離を取った。
「攻撃が通らないのはお互い様かしらね」
先程から、互いの攻撃が通らなくなっていた。それは、お互いの攻撃が大体分かるようになってきていたからだ。足止めを目的としている咲からすれば、これでもいいのだが、戦闘に発展がなければ膠着状態でいるしかない。このままでは、咲も逃げることが出来ない。
「全く、手こずらせてくれるわね……」
咲が一人で毒づいていると、後ろの方から何かが迫ってきた。
「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ものすごい勢いで飛んできたのは、身体の一部を燃やしている焔だった。焔の一撃は、悪魔に初めて大きな傷を負わせる事に成功した。
ガァァァァ!
初めて大きな傷を負わされた悪魔は怒り狂い始めた。悪魔の眼が赤黒く光り出す。その一方、身体の一部が炎に覆われた焔は、咲の横に着地した。だが、焔の眼に咲の姿は映らない。
「ぶっ殺す!」
焔は怒りの形相でそう言い、悪魔に突っ込んでいく。
「焔……?」
咲はいつもと違う焔に戸惑いを隠せなかった。いつもは冷静沈着なのだが、今の焔はその欠片すらもない。
「止めるべきなのかしら……」
咲の目線の先では、焔と悪魔が激しい戦いを繰り広げている。焔の一撃は今までと違い、悪魔の肉体を斬り裂くことが出来た。
ガアアアアアアア!!
悪魔も焔に対して何度も攻撃をしている。しかし、焔の纏っている炎が悪魔の攻撃を自動で防いでいた。
「炎に意志があるのかしら? あの状態だと私が割り込むことは難しいわね」
焔が刀を振う度、炎が周りに撒き散らされていくので、咲が割り込む隙が全く無い。悪魔は一方的に攻撃を受けていた。悪魔の攻撃は焔の炎に阻まれ、焔の攻撃は問答無用で悪魔を斬り裂いている。
「やあぁぁぁぁぁぁ!!」
焔の一撃が悪魔の尻尾を斬り落とした。
ガァァァァァ!!
悪魔が悲鳴を上げる。身体をよじり、焔から離れるように後退していく。しかし、離れようとする傍から焔に接近され、距離が開くことがない。さっきまで、悪魔に対して有効な手立てがなかったが、焔の覚醒によって悪魔を追い詰めることに成功している。このままなら勝てる。誰が見てもそう思える光景がそこにはあった。だが……咲は楽観視することが出来なかった。
「…………」
咲は、少しだけ嫌な予感がしていた。そして、その予感はすぐに当たってしまった。
「ごほっ!」
焔の口から血の塊が出てきた。焔は地面に倒れ伏せる。
「やっぱり!!」
咲は、すぐに動き出す。悪魔も焔が血を吐いたの確認すると、今までの恨みを込め、腕を叩きつけようとしてくる。ギリギリのところで咲が割り込むことに成功する。
「焔! 大丈夫!?」
「う……はい…………ごほっ!」
口では大丈夫といっていても、実際にはそうでは無いようだ。焔は、また血を吐いてしまっている。
ゴガ……ガア……グギガギ……
悪魔は、何かしら喋っているようだが、咲達には何を言っているのか理解出来なかった。何かしら言った悪魔は、咲に対して連続で腕を叩きつけてくる。その全てを咲は捌いていく。決して焔に当たらないように。
「焔! この場から離れなさい!」
「…………わかりました」
焔は、ゆっくりとだが這いながら、その場を離れていく。
「さあ、今度は私が相手よ」
咲は、焔を庇いながら悪魔と戦い続ける。尻尾による攻撃がない今、咲と悪魔の手数は同じ状態だ。互いの攻撃が互いの攻撃にかみ合って、お互いに一歩も引かない状態となった。互いに威力が高い一撃を放つと、少し距離を取る。この間に、焔は咲達から少し離れた場所に避難していた。
「再生の暇は与えない!」
一時的に開いた距離を瞬時に詰めていく咲。悪魔は煩わしそうにしながら対応する。咲は、ヒットアンドアウェイを繰り返しながら、悪魔に回復の隙を与えない。
そうして、戦闘が続いていった。
────────────────────────
千代田区に戻ってきた香織は、すぐさま小型の悪魔達に囲まれてしまっていた。
「邪魔だよ!」
香織は小型の悪魔を蹴散らしながら進むが、減らした傍から増えてしまいキリが無かった。
「死体が消える……回収は無理か……それに、どこから沸いてきているの? 無限に増えてる。空からも来るから飛ぶこともままならないし。それに、さっきよりも数が多い……」
香織が空を駆けようとすると、すぐに空から悪魔の軍勢が押し寄せてきた。さらに、冒険者の皆を連れて切り抜けたときよりも遙かに数が多くなっていた。
「『近寄らない君』も効かないし……」
右側から押し寄せる悪魔達を炎で焼き尽くしながら、香織は考え続ける。
「悪魔って何が効くんだろう?」
左側から集団で突撃してくる悪魔達を氷結させる。
「凍っても死ぬのかな? 見た感じ殺せてそうだけど……」
凍り付いた悪魔が動かないのを確認しつつ、香織は先を進んで行く。
魔法、物理、道具を駆使して進んでいる香織だが、その進みは遅かった。どんなに悪魔を倒していっても、その度に新しい個体が生まれて穴を埋めてくるからだ。
「う~ん、今の所は光魔法が一番効くけど、範囲攻撃の密度が低いのが難点なんだよね。立ち止まればそれなりのものが使えるんだけど……」
ぼやきながらも少しずつ先に進んでいる香織は、ふと思いついたことがあった。
「悪魔って死霊系モンスターなのかな?」
そう言った後、アイテムボックスから一つの瓶を取り出す。
「それ!」
その瓶を、悪魔の一体に投げつける。悪魔の身体に当たると同時に瓶が割れ、中身が周りの悪魔達にも降り注ぐ。
ギィィィィィィィィ!!
「うるさ!」
耳障りな悲鳴が響く。瓶の中身を浴びた悪魔達が、身体の形を崩して消えていった。
「……聖水は効くんだ。効果がえげつないけど……」
香織は、自分が引き起こした事象に若干引いている。
「悪魔の補充は……?」
香織は、周りを観察した。悪魔を倒した際に湧き出るところは、何度も見ているのであらかた見当が付いている。香織が予測していたポイントを確認すると、悪魔の出現はなかった。
「ポイント違い……そうじゃなかったら、完全に消し去ることに成功したって事かな」
香織は、油断せずに先を急ぐ。襲い掛かってくる悪魔には、聖水を振りかけていく。その結果、聖水を掛けられた悪魔は、耳障りな悲鳴を上げて消滅し、穴埋めとなる悪魔が生まれないことが分かった。
「聖水を多用したいところだけど、在庫が少ないんだよね。魔力水はあるから作れなくはないけど、錬金釜が必要だし……」
香織は、ほんの少し薄くなった悪魔の包囲を抜けようとしてるが、それでも悪魔の数が多く、うまく切り抜けることが出来ない。
「何か良い方法は……?」
悪魔の攻撃を躱しながら、香織は考え続ける。そして、悪い笑みを浮かべながら、
「……そうだ」
と呟いた。
香織は、アイテムボックスから壺を取り出すと自分の足下に置いた。そして、その壺に過剰な魔力を注いでいく。足下に置いた壺が、鈍い光を帯びていく。その間は、簡易結界を張って悪魔の攻撃を防いでいる。
「よし、下準備はオッケー。結界が保たないし、急がなきゃ」
足下の壺を進行方向に倒し地面の形状を変化させて、その方向に固定させる。そして、結界の周りに水属性の広範囲殲滅魔法を使用する。無数の水の針が悪魔達に降り注いでくる。数の減った悪魔達の間を香織は駆け抜けていく。
「そろそろかな」
香織がそう言った直後、背後の壺が破裂したかと思うと、壺があった場所から大量の水が湧き出し通りを勢いよく流れていく。香織は、道端の瓦礫をサーフボードのように錬成する。そして、香織に向かってくる波に乗った。
「少し水量が多かったかな? でも、多い分には問題は無いし……あっ!」
香織は、自分の後方を振り返る。
「あっちにも水が流れるよね。一応、方向はこっちに向けておいたんだけど……」
後方に流れているということは、冒険者達が避難した港区まで流れていく可能性があるということだった。
「まぁ、大丈夫だと思おう。うん」
香織は、正面を向いて流れに身を任せる。正面には悪魔の大群が存在しているのだが、その悪魔達は、香織が生み出した波に呑まれて消えていく。
「サーフィンはやった事ないけど、こんな感じなのかな?」
そんな呑気な事を言っている内に、大分道のりを消化する出来た。水の勢いが消えてきたところで、錬成したサーフボードから飛び降りる。着地すると、目の前から悪魔の軍勢がいなくなっていた。
「よし、今のうちに駆けて行こう」
悪魔達の包囲網から抜け出した香織は、全力で駆け出した。戦闘音が響き渡る場所を目指して……
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