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変わってしまった現代で錬金術師になった  作者: 月輪林檎
第一章 変化と解放

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34.別れた二人

改稿しました(2021年10月26日)

 香織達は、玲二達が設営した野営地に到着した。そこは、大きめの建物が近くにある交差点だった。


「見張りが大変じゃ無い?」

「いや、あっちの方は行き止まりだからな。それに、あっちは瓦礫が積み重なっている。実際の見張りは二方向を重視する感じだ」

「ふ~ん、寝場所は、この建物ってこと?」

「ああ、生産職達が床や壁、天井を強化したから大丈夫だと思うぞ」


 香織は、今にも崩れそうなビルに不安を感じたが、玲二は、一応補強はしてあるという風に説明する。


「それだけじゃなくて、ビル全体の強化をした方が良いと思うけど。ビルごと倒れたら意味ないし」

「それについては、魔力が足りないから無理だった」

「じゃあ、私がやるよ。後、これが回復薬ね。あまり効果がないかもしれないけど」

「助かる。万里と恵里が、お前達の場所を用意してくれているから、案内してもらってくれ」

「うん、分かった。咲、案内してもらって。私はこのビルの一時的な強化をしておくから」

「分かったわ」


 香織は、咲と焔と別れる。咲と焔は、万里と恵里とともに、ビルの中に入っていった。香織は、空を駆けながらビルの外壁に刻印魔法を施していく。


「う~ん、元々ボロいから強化しても無駄な感じもするなぁ」


 香織は少し考え込む。ビルの状態は、他のものよりもマシという感じだ。


「修理するのも厳しいだろうし……最大級の強化にしておこうかな。後は、地盤の方も強化しておこう」


 香織が魔力を高めてビル全体に魔法陣を刻んでいく。さらに、ビルと地面が繋がっている場所にも同様の魔法陣を刻んでいった。


「これで、ビルの強化は良いはず。一時的なものだから、長持ちはしないけどね」


 香織は、ビルの強化を終えて地面に降り立つ。


「よし、咲の所に向かおう」


 ビルの中は、かなり広い場所だった。香織は、キョロキョロと周りを見回す。すると、万里と恵里と焔がいる場所が見えた。


「万里ちゃん、恵里ちゃん」

「あ、香織さん。ここだよ」


 万里が香織に気付いて大きく手を振る。


「あれ、咲は?」

「今は、中のテントで身体を拭いています」


 その場に咲がいないことに気付いた香織が訊くと、焔がそう答えた。


「私もそうしようかな。万里ちゃん、恵里ちゃん、焔、見張りお願いね」

『はい!』


 香織は、万里と恵里の所にあるテントに入る。


「きゃっ! って、香織。入るなら一言言ってから入ってくれないかしら」

「へ? ああ、ごめん、ごめん。私も身体拭きたくて」

「全く……、ほら、服脱いで。背中とか拭いてあげるから」

「うん」


 香織は、咲に言われたとおり服を脱いでいく。


「ちょ、下着はそのままで良いわよ」

「え? でも脱げって言ったじゃん」

「下着まで脱ぐとは思わないでしょ。ほら、後ろ向いて」


 香織は、咲に背を向ける。咲は、その背中を濡れたタオルで拭いていく。


「こうして見ると、少し煤が付いたままね」

「そうかなぁ? あまり意識してないからなぁ。傷は再生で治るし」

「再生の悪いところね」


 そうして、香織の身体を咲が拭いていく。


「じゃあ、次は私の番!」


 香織が咲のタオルを奪い、咲を後ろに向かせる。


「ちょ、私は良いわよ!」

「だ~め。私はやってもらったんだから、お返し!」


 そう言って、香織は咲の身体を拭いていく。


「咲は、本当に大きくなったね。羨ましい……」

「二年分の差よ。さすがに、香織よりも大きくなるわよ」

「う~ん、作ってみようかな……」

「何を?」

「豊胸薬」


 咲の顔が呆れ顔になる。


「香織だって、そこまでないわけじゃないでしょ」

「咲よりもないでしょ!」


 そう言って、香織が咲の胸を揉む。


「きゃっ!? やめなさい、香織!」

「むぅ、前より育っている気が……」

「そんなわけないでしょ! この前から不老不死になってるんだから!」


 そんなこんなで、香織と咲がいるテントは凄く賑やかだった。


 香織達は、身体を拭き終わってテントから出ると、玲二達がいる場所まで向かった。


「坂本さん、五班の人達の様子はどう?」

「ああ、香織と咲か。なんか、咲が不機嫌そうだな?」

「何でもないです。それで、目を覚したんですか?」

「いや、まだだ。傷は癒えているんだがな。目は覚まさない。今は、待つしかないようだ」


 香織達が救出した五班の人達は、今も眠り続けている。だが、身体の何処にも異常はなかった。恐らくは、大蜘蛛の糸によって、生気を少し抜かれていると思われる。


「そうなんだ。早く目覚めると良いね」

「ああ、ありがとう。二人は休んでいてくれ。今回の救出作戦で負担を掛けたからな」

「分かりました。香織、行くわよ」

「うん」


 香織達は、早めに休むことにした。そして夕食も終わり、皆が寝静まる頃、それは起こった。


「敵襲!!」


 外から響いてくる声に、香織と咲は瞬時に跳ね起きる。


「焔! 準備して!」

「はい!」


 焔は、香織の声を聞いて瞬時に起きて戦闘の準備をする。


「万里! 恵里! 起きなさい! 戦闘準備よ!」

「う、うん!」

「は、はい!」


 万里と恵里は、咲の声で寝ぼけながらも戦闘準備をする。


「香織!」

「分かってる。先に行くね! 焔!」

「かしこまりました!」


 香織は、咲に名前を呼ばれただけで意図を察して、焔を連れて先に外に出る。香織と焔が外に出ると、そこには子蜘蛛の大群が押し寄せてきていた。


「これは……」

「恐らく、倒し切れていなかったのだと思われます」

「あの状態で生きていたなんて……」

「今は、やるしかないかと」

「うん、いくよ!!」


 香織は、火臨ではなく、自分で作った鞭を取り出す。焔は、香織に作ってもらった刀を抜く。そして、二人で子蜘蛛の大群にむかって走り出す。


 香織は、鞭を振いつつ、魔法を放ち、子蜘蛛を蹴散らしていく。焔も刀で斬っていく。


「多すぎる……」


 周りにいる子蜘蛛は、数を減らさない。無限にいるかのように湧き出てくる一方だった。万里や恵里、玲二、重吉もビルの前に陣取って迫ってくる子蜘蛛を蹴散らしている。すでに、何人か怪我人も出ており、じり貧になることは明白だ。


「魔法隊! 火魔法用意! 放て!」


 玲二の合図で、ビルの周りから炎が飛んでいく。子蜘蛛達は、そのまま焼かれていく。しかし、それでも全てを焼き尽くすことは出来ない。


 香織と焔がいるのは子蜘蛛達が出てきている場所だった。香織の火魔法の範囲攻撃を放たれても、それでも全く途切れることはない。


「親を倒さないとダメかも」

「探しだしますか?」

「それが良いかもね」

「では、ここは私にお任せを」


 焔の身体から火の粉が舞い始める。そして、子蜘蛛の群れを焼きながら斬っていく。


「子蜘蛛程度なら、私でもたやすく葬れます」

「でも……」

「香織! 私もいるわ! 先に行って!」


 咲の声が後ろから聞こえた瞬間、香織は靴に魔力を溜めて空中を走り出す。子蜘蛛達の遙か上を走り続ける。すると、奥に行った先に大蜘蛛の姿があった。大蜘蛛には、香織との戦闘で付いた傷が残っていた。


「いた」


 香織は、鞭をしまい火臨を取り出す。


「今度こそ倒す!」


 大蜘蛛も香織を見つけた。向かってくる香織に対して、後ろを向いて糸を吐き出す。その糸は、四方八方にあるビルに張り付き、大きな蜘蛛の巣を形成する。


「ここなら遠慮はいらない!」


 香織は、大規模な炎の波を放つ。香織の下が火の海になっていく。その海は大蜘蛛まで到達する。しかし、大蜘蛛は、先程張った蜘蛛の巣に飛び移る。

 香織は、その巣すらも焼き尽くそうと、火魔法を行使する。炎の槍を形成して大蜘蛛に放つ。しかし、大蜘蛛は巣から飛びビルに張り付く。


「くらえ!」


 香織は、大蜘蛛の動きを予測しており、飛び移ったビルの上に先回りしていた。大蜘蛛の上から火臨を叩きつける。大蜘蛛の身体が燃え始める。大蜘蛛は、地面に降り立ち燃えている部分を地面に擦り付けることで鎮火する。


「火の海を持続出来たら、これで決まってたのに」


 大蜘蛛が落ちるときには、すでに火の海はなくなっていた。だが、これまでの戦いで、香織は気付いたことがある。


「怪我は癒えてない。羽田にいた時よりも弱っている!」


 香織は、ビルの壁に立った。そして、その壁に魔法陣を刻んで、そのまま発動する。すると、ビルが半ばからへし折れて大蜘蛛に落ちてくる。


「言ったでしょ? 錬金術師は物質を変化させることが本質だって。だから、ビルの強度を極端に下げてみたよ!」


 崩れ落ちるビルの範囲から避けていく。そして、その瓦礫がしたで火を消していた大蜘蛛に降り注ぐ。瓦礫の下敷きになった大蜘蛛は、それをどかそうと藻掻いている。その頭に、香織は火臨を叩き込む。


 大蜘蛛の身体を炎が走って行く。大蜘蛛は炎に飲まれて藻掻き苦しむが、香織は攻撃をやめない。さっき、瓦礫に埋めただけで安心しきった結果、この襲撃を起こされたのだ。ならば、やることは一つ。


「死ぬまで殴る……」


 香織の連撃が続く、大蜘蛛の頭がひしゃげていき原型を留めなくなっていく。頭のほとんどが無くなる頃、ようやく大蜘蛛の動きが止まり、一切動かなくなる。


「ふぅ、終わった……」


 香織が安心しきったその時、香織の足下に魔法陣が広がる。


「これって……、転移の魔法陣!?」


 ダンジョンから脱出するときにも見る魔法陣が香織の足元にある。香織は、その場から動く。しかし、魔法陣は、香織に付いてきていた。


「私自身に発動されて、自動追尾まで!?」


 このままでは、香織は一人でどこか別の場所に転移されてしまう。香織が焦りを覚えているときに、


「香織!!」


 咲が香織の方に駆けてきて手を伸ばす。子蜘蛛の進軍は香織の落とした瓦礫によって妨げられている。だから、香織の方に加勢に来たのだろう。そして、香織の足元に転移の魔法陣が広がっているのを見つけ、何とか助け出そうと手を伸ばしたのだ。


「咲!」


 香織も咲の方に手を伸ばす。二人が触れあう……その直前、香織の姿が消える。


「香織!!!」


 咲の香織を呼ぶ声が響き渡った。しかし、その声は、もう香織には聞こえる事は無い。ただただ、暗い夜空に吸い込まれていくだけだった……

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