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16.赤龍戦(1)

改稿しました(2021年8月4日)

 襲い掛かってくる男達に対して香織は、鞭を振う。そして、男の一人が構えていた剣を打ち砕く。自分の剣が、半ばから折れたのを見た男が、冷や汗を流す。

 香織は、尚も鞭を振う。持っていた武器を破壊した後は、腕や足をへし折っていく。


「ぎゃっ!」

「うぎっ!」

「あがっ!」


 男達が、立てずに転がったままになっている光景はまさに阿鼻叫喚だった。さらに、香織は。男達に向かって鞭を振う。


「や、やめてくれ……」

「たす……け……て……」

「死んじまう……」


 男達は、地獄の亡者もびっくりなぐらいボロボロになっていた。


「香織!」


 咲が、香織を羽交い締めにして止める。


「やりすぎよ! 落ち着いて」


 咲が、一生懸命呼びかけると、少ししてようやく落ち着きを取り戻した。


「咲……」

「ええ、そうよ」


 香織は、自分のやった惨状を認識する。


「また、私、我を忘れて……」

「香織、今は忘れなさい。そもそもこいつらの方が悪いのだから」


 咲が、香織を慰める。実際問題、男達から攻撃を仕掛けているため、香織よりも男達が悪い。


「香織、今は赤龍の討伐よ」

「うん、せめてこれだけ」


 香織は、回復薬を男達に振りかけておいた。この回復薬なら、三十分くらいで骨折も治るだろう。香織達は、男達を放置して、先を急ぐ。


 ────────────────────────


 香織達が到着したとき、ギルド本部は壊滅状態だった。建物は崩れ、周りは焼け野原。それでもなお、赤龍は、暴れ続けている。


「なんで、赤龍は暴れているの?」

「わからない。でも、やることは一つ」


 香織は、赤龍から少し離れたところで錬成を始める。


「香織、頼んだわよ!」


 香織が作っているのは、スタンピードの時に使ったレールガンである。今回は大砲を使用せず、本格的なレールガンを作り出そうとしているのである。釜を使わない錬金術は、かなりの集中力を要する。さらに、大きいものを作ろうとすればするほど、錬成時間が増えていく。


 咲は、その間、香織に手出しをされないように赤龍の足止めをするのだ。咲は、赤龍に向けて走り出す。赤龍の足下では、玲二が冒険者を引き連れて戦っていた。


「坂本さん! 香織がトドメを刺します!」


 咲は、それだけ言うと全力で駆け抜けていった。玲二は、咲の言葉に疑問も持たず自分達が出来る行動を起こす。


「お前達! 龍の足止めと付近にいる人達の救助をするぞ! 最優先は救助だ!!」

「「おう!!」」


 玲二達は、周りの人の避難を優先して行動する。自分達が、中途半端に加勢しても足手まといでしかないのだ。

 咲は、赤龍の四つある内の一つの足下まで来ると、そのまま駆け上がる。足の付け根まで上がり、抜刀術に水魔法を乗せて斬りつける。足の付け根が真一文字に切り裂かれる。


 ギィヤァァァァァァァ!


 叫び声が響き渡る。この世界に生まれ落ちて初めての大きな傷だ。感じたことのない痛みが赤龍を襲っている。

 そのまま、次は風魔法をのせて斬り付ける。風の中に鎌鼬がいるが如く、赤龍の足に無数の傷がついていく。

 怒り狂った赤龍は、自分の足に向かって炎を吐く。人が巻き込まれれば、全身大火傷となる。咲はその炎の海に突っ込んでいく。その場にいた誰もが、咲が黒焦げになるのを幻視した。

 しかし、出てきたのは多少焦げてはいるが五体満足の咲だった。咲は、炎に突っ込む寸前に、自分の周りに水魔法と風魔法で壁を作り炎を減衰させたのだ。


「はぁっ!」


 最初に斬りつけた足を再び斬りつける。そこから、執拗に同じ足を狙い続ける。赤龍の身体は巨大なので、たった一度の大きな傷では、動きを止めるに至らない。赤龍は、ありとあらゆる手段を用いて咲を殺そうとする。足での踏み潰し、炎のブレス、尻尾による薙ぎ払い。その全てを咲は避け、防ぎ、反撃する。


 周りでは、玲二達が救助を続けている。大体の人を避難させたが、まだ、瓦礫に埋まっている人達がいるようだ。咲は、それを確認しつつ、戦場を少しずつ動かす。

 攻撃を続けていき、遂には赤龍の足の一つを切り落とすことに成功した。


 ガァァァァァァアァァァァァァ!!!!


 赤龍が叫ぶ。咲は、次の足を斬り落とそうとするが、赤龍の様子が変わり始めたので止まる。


「何……?」


 赤龍の身体が、赤く光り輝いていく。斬り落としたはずの足が生えはじめ、身体が巨大化していく。


「あれよりも大きくなるの……?」


 さすがの咲も驚愕を禁じ得ない。先程まででも大型旅客機ぐらいの大きさだったというのに、今ではその倍の大きさになっている。


「あんなに大きくなれば、動きも鈍重になるはず」


 咲は、さっきと同じように、斬りやすい足を斬ろうとする。しかし、咲の考えは甘かった。ここが、地球であり地球でないことを失念していた。大きくなったからと言って動きが遅いとは限らないのだ。

 赤龍は先程の倍以上の速さの尻尾で咲を薙ぎ払った。咲は、ギリギリで刀を盾にすることで身体の寸断を避けた。しかし、勢いだけは殺せず近くの建物に叩きつけられる。


「ぐっ! げほっ!」


 叩きつけられた咲は、血の塊を吐き出す。傷自体は再生で治っていくが、ダメージは身体に残ってしまっている。咲の動きが鈍ったのを見抜き,赤龍が炎を吐く。

 ギリギリのところで避けた咲だったが、見計らったように赤龍が足を叩きつける。咲は、避けることが出来ずに地面にめり込む。


「ぐぅ……」


 その様子を、香織は見ていることしか出来なかった。


「咲っ!」


 咲がボロボロになって、ようやくレールガンが完成する。大きさは最初の赤龍の半分ほどだ。弾を詰め込んで、電磁誘導を起動させる。赤龍に狙いをつけて発射する。


「くらえっ!」


 発射された弾は、狙いを違わずに赤龍に直撃する。しかし、赤龍の身体を貫いたが、絶命に追い込むことは叶わなかった。


「だめだ……あの巨体じゃ、これで倒すことは出来ない」


 香織は、レールガンでの攻撃を諦めて、自分も直接戦うことにした。

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